あいつの死
短いです。どうぞ。
いつも笑顔だった。あいつの怒った顔なんてこれっぽっちも見なかった。だから今こうして黒い縁取りの写真を見ながら、俺は随分と悔しい思いをしつつも、湿っぽいことが嫌いなあいつだったから、涙は見せずにいようと思う。
突然の知らせは高校のクラスメイトだった沢崎からのラインだった。
沢崎とは高校時代からあまり付き合いがなかった。年賀状もやり取りしてないし、その上電話番号すら知らない。かろうじて同窓会で隣だったときにラインを交換したぐらいだ。そしてそのほとんどやり取りのないラインの一つがあいつの死を告げるメッセージだった。
あいつとはハタチの成人式のときにクラスメイトの女子の人気ナンバー2の中沢さんと一緒に古い居酒屋で飲んで以来、何度かともに盃を酌み交わす仲だった。そんな仲だったのに、どうしてあいつの最期に立ち会えなかったというと、俺は高校時代のクラスメイトであいつ以外連絡を密にとっていなかったのだ。いつだって会えると思ってたから。でも考えたらそうだよな。俺があいつと一対一でやり取りしてたから、あいつから突然連絡が来なくなっても気づかない。ラインも既読がつかなかったから、忙しくしてるんだろうな、ぐらいにしか思わなかった。
あいつは仕事となると熱心すぎるほど情熱を注ぐタイプだった。人材派遣の仕事に転職してからは相当忙しかったらしく、そのせいで過労とまではいかないが倒れてそのまま逝ってしまったらしい。(了)
ありがとうございました。ぜひ10枚の作品、『潤んだ瞳の輝き』もお読みください。




