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112.不思議の国と孤独で残酷な王様の話

 山を越えて。

 海を越えて。

 砂漠を越えて。

 《NEVER END ONLINE NEW GENERATION ADVANCE》開催のニュースは巷間を騒がせるに留まらず、瞬く間に全世界を駆け巡った。

 各国のNEOプレイヤーは、レイという一種の偶像の言葉に燃え、奮え、我こそはと吼えた。

 即座にあらゆるSNSはレイとNEOの話題一色に染まり、その日の夕方には各局で報道されるまでに至った。

 その折、NEOの開発者であるProject Storm、その代表山風志郎も記者からのインタビューに応えている。

 レイと関係。

 大会開催の経緯。

 プレイヤーたちへの対応。

 志郎はこうなることを予想し、狼狽した様子など一切見せず、そのどれもに澱みない答えを返した。

 核心に至るものは無く、そこから推測されるものは何も無かったが。

 世界は確信する。

 世界は大きく革新されるのだと。


 

 



 レイの招待状はアリスたちを含めた国内外の実力者たちへ届き、その中にはアリスたちが知る名前が多数あった。

 まず【ROSELIA】。

 そのトップメンバー、ホロウ、メルティア、ウタ、シャオの四名。

 【セイレーンの瞳】からはリーダーのエレン。

 強豪ギルド【十天】のリーダー、レオン。

 そして、

「【LIBERTAS ZERO】にも招待状が届いてるって」

 リーダーのノア。クイーン、ルーファ、シャルロット、アスカ。

 招待枠の過半数が顔見知りという異例さもまた、彼女たちを賑わせる要因であった。






 《NEVER END ONLINE NEW GENERATION ADVANCE》の大まかなルールは以下のとおりだ。

 ・百人同時参加のバトルロイヤル。

 ・開始直後プレイヤーはフィールドの各所にランダムに転移され、最後まで生き残った者が優勝となる。

 ・装備、魔法、スキルの使用に制限は無し。ただしHP、MP回復系スキル、魔法は制限され、パッシブ、アクティブ問わず発動しない。

 ・モンスター及びレイが用意した特殊NPCが出現する。

 ・回復アイテムの持ち込みは不可、フィールドにドロップするもののみ使用可能。

 ・通信機能の制限。

 ・フィールドはProject Stormが用意したものを使用。

 ・ゲーム中のログアウトはその時点で敗北とする。






 フィールドの全容が不明な以上、綿密な立ち回りは計画出来ず、すでに参加を決めている者たちは力を磨くことに尽力した。

「大会当日までは、なるべくソロでやるね。手の内晒すのもイミフだし。んで全員ウチがぶっ潰す」

 というココアの発言により、しばらくの間、【不思議の国のアリス】が共に行動することはなくなった。

 尤も各々そう考えていたようで、特に反論という反論も無かったが。

 仲間だからこそ負けられない。

 それはある種、最大限の礼儀でもあった。

 また、レイの眼鏡に適うことのなかった者たちはというと。

「マスターの名に恥じないよう、私も全力を尽くします」

 サクラもまた自身で強くなる方法を模索した。

 来たる前哨戦に向けて奮闘しているようだ。

 そして星天の大地を吹く風を浴びる少女アリスも、例に漏れず新たな力を求めていた。

 否、新たな力という曖昧な表現は似つかわしくない。

 アリスが求めるものは天上に輝く神々の星。

 《レオ》というこの世界の象徴だけなのだから。






 しかしアリスとて、広大な世界を虱潰しに回る程考え無しではない。

 本戦開催まで残り二週間弱。

 地道に焦らず《レオ》へ辿り着く方法を模索していた中、ある事に至った。

「この路地がこうで…あっちがああだから……この角を曲がれば…!〜~~~っ、あったーーーー!!」

 アリスは、とあるシャッターの前で大手を挙げて歓喜した。

 星天の大地が《LASTRAL》を踏襲している以上、必ずそれは存在すると当たりを付けていたものがある。

 それが《LASTRAL》におけるマイルーム――――ガレージの存在だ。

「やっと…やっと見つけたぁ…」

 感慨深い…のは勿論。しかしアリスが手と膝をついて項垂れている一番の原因は、この拠点を記憶頼りに、持ち前の方向音痴を存分に発揮し、本来ならばすぐに見つかるはずであったものを約数時間かけたという疲弊である。

「ん、しょ…」

 拠点購入に必要なゴールドを支払い、シャッターを持ち上げ中に入ると、途端に懐かしい光景が広がった。

 体感型でなかった当時とは比べ物にならないリアリティ。

 鉄と油の匂いに新鮮さを覚え、錆びた工具箱からは歴史を思わせられる。

 かつてアリスの拠点であったこの場所は、文字通り《レオ》を造った場所。

 ならば何らかの手掛かりがあるのではと思い至ったのだ。






 特筆すべき点は特に見当たらなかったが、画面越しに見ていた世界に立っている実感が、アリスを静かに沸き立たせ、更に部屋の隅の埃を被ったボックスの中には、かつてアリスが《LASTRAL》で入手した大量のパーツが眠っていた。

 ふと、視線がデスクの上にある古いタイプのパソコンに映った。

 試しにとデスクトップのスイッチを押してみる。

「あ、ついた」

 起動するまでに長いそれの画面が明るくなり、マウスを操作し中身を確認する。

 そもそもがネットワークの中だ。ネットが使用出来ないのはさしたる問題ではない。

 単純なトランプやボードゲームのアプリは起動が確認出来たが、他幾つかのフォルダは破損していて開けないようになっている。

 が、その中でたった一つだけ開けるものがあった。

 『Welcomeback』

 いったい誰からの、誰に宛てた"おかえり"だったのか。

 そっと開かれたフォルダの中身に目を通す。

「これは…《レオ》のマニュアル…?」

 四肢と背部に搭載された六機の全方位対応駆動ブースターに由来する超スピード型機獣。

 スピードを出すために装甲、装備を最少化。

 およそ考えうる限りの軽量化に成功した反面、防御力をかなぐり捨てた超近接戦闘が《レオ》の、ひいては《レオ》を開発したアリスのスタイルであった。

 と、そこまでが《LASTRAL》の世界観であり、アリスが手掛けた最高傑作の話。

 《NEVER END ONLINE》により、《霊子核(エーテルコア)》というテイストを与えられた《レオ》は、牙と爪、そして尾の先に高周波振動によって切れ味を増した《霊子裂斬刃(エーテルセイバー)》を装備している。

 黄金の装甲は《流星光鋼スターライトマテリアル》の中でも特に純度の高い《流星郡輝鋼スターブライトフルメタル》を使用し、動力には《カシオペア》と同じく《霊子機関(エーテルリアクター)》の上位互換、《超霊子炉心(ネオエーテリアス)》を採用。

 より高性能、高機動の機体を実現しており、ある意味ではアリスとProject Stormとの合作とも言えた。

 最小限の強化で本来のスペックが化けている。それは最早進化と呼んで差し支えない領域の話だ。

 開発者であるアリスにしてみれば複雑な部分も有るには有ったが。

 そしてマニュアルの中で一際アリスの目を惹いた項目が、自分の知るレオリスには無かった兵器の部分。

 《霊子核(エーテルコア)》は、原則的に《霊子機関(エーテルリアクター)》を介してしか扱えない。

 《霊子核(エーテルコア)》とは元来不均一かつ不等、不可視な極小の素粒子であり、それを実用化に至らしめるために開発されたのが、循環制御装置《霊子機関(エーテルリアクター)》だ。

 端的に、《霊子機関(エーテルリアクター)》を通すことで、ただの素粒子である《霊子核(エーテルコア)》を吸収しエネルギーへと変換し放出する仕組み。

 だが、《レオ》の()()は違う。

 複数の《超霊子炉心(ネオエーテリアス)》を直結することで、通常放出されるはずの《霊子核(エーテルコア)》を循環、加速させる。

 その結果起こるのが、行き場を失った《霊子核(エーテルコア)》の超収縮における臨界点突破。

 循環から放出へと回路を切り替えた際、天文学的な質量、熱量となった《霊子核(エーテルコア)》は、結果として自身を中心に放射的に拡散し大規模な破壊を齎す。

 広域殲滅型惑星破壊兵器に、星天の使徒(アストラルシリーズ)の開発者、賢父コルフトは星の終焉を冠せし名前を与えた。

「【スーパーノヴァ】…」

 その威力はアリスたちが身を以て体験している。

 回避、防御不可の大爆発が齎した初のギルド全滅という無惨な結末は記憶に新しい。






「マニュアル読んでもよくわかんないけど、やっぱりあれってすごい攻撃だったんだ…。ほんとに何が何だかだったもんなぁ…。あのときはレオリスのこと考えてボーっとしちゃったんだけど」

 データを移行するデバイスが見当たらず、画質の悪いそれをスクリーンショットで保存しパソコンの電源を落とす。

「さすがに《レオ》の居場所までは書いてないか。黄導十二宮神(ゾディアーク)も純度が高い《霊子核(エーテルコア)》が好みなら、【原初の叡智(メーティス)】が創った()()()()で誘き寄せることは出来るかもしれないけど、ノアちゃんが契約した《サーペント》みたいに特殊なクエストだったら発生さける条件もわからないし…。って、あれ?なんであのとき、《レオ》は私たちの前に現れたんだろう…?」

 うーん、と腕を組んでみる。

「クエストとか関係無くて、星の残照(オービタルデブリ)みたいに普通に通常湧きの個体が徘徊してる…?あり得ないことじゃないんだろうけど、なんか引っ掛かる…」

 それから【Gluttony】を開き、ドロップした《霊子機関(エーテルリアクター)》を取り出す。

「あのときは確か、六体の星の残照(オービタルデブリ)が一度に襲ってきて…もしかしてあの場所が《レオ》の縄張りだったとか?」

 しばらく唸ってみたものの、それで何かがわかるわけでなく。

 アリスは先日、《レオ》と遭遇した地点へと赴くことにした。







 激しい戦闘の跡。

 というには、そこには何も()()()()()

 唯一地面が残った中心から周囲数キロに及んで、建物は跡形も無く、地表も蒸発している。

 身震いする程の寂寥が【スーパーノヴァ】の威力の絶大さを物語っていた。

「これは…手掛かりってレベルじゃないかな…。せめて足跡でもあれば…」

 アリスの頭にあるスキルが過ぎる。

「【霊視】…見えないものを見るスキルなら、《レオ》の《霊子核(エーテルコア)》の痕跡を終えるかも…いやいや、そもそも《レオ》の《霊子核(エーテルコア)》がどんなのかを見てないんだから追いようが無いよね…盲点…」

 とは言うもの、仮に《レオ》の残滓を追えたとして、アリスは【霊視】を習得するのを躊躇っただろう。

 視覚情報以上に、第六感を重要視する天才故に。

「みんなは今頃何してるのかな」

 打つ手無しと肩を落としたアリスに、

「アリス」

 その人物は手をヒラヒラさせながら近付いた。

 バッと勢いよく振り向いて目を丸くする。

「レイさん?!」

 件の騒ぎの中心が、あまりに平然とそこに居たからだ。

「なんか久しぶりだね。星天の大地開放前だから…あれ、それでも現実だと一、二週間くらいしか経ってないのか」

 なんでここに、そんな単純な質問さえ何故か憚れた。

「あのその、えっと…あれ…」

 話したいことに訊きたいことがたくさんで、どれを最初に言葉にするかで悩み、アリスは小刻みに狼狽えた。

 小動物さながらの少女に、レイはクスッと笑みを溢すと鞘から刀身の無い剣を抜き、見えない斬撃を一つ放った。

「?!」

 咄嗟に跳ぶ。

 アリスが立っていた地面に亀裂が入った。

 避けられるはずも、感知されるはずもない攻撃だ。

 初撃を完璧に見極められるのはアリス以外に存在しない。

 今の攻撃が本気でない、ただの戯れであったとしても。

「まあ、強くなってるよね。安心した」

「いきなり…いや、それより」

「アリスに話したいことがあってさ」

「話したいこと…?」

 レイはついておいでと言わんばかりに何処ぞへと足を向け、アリスは静かにその後を追った。




『バトルしようよ。あたしとアリス、どっちが強いのか』




 かつて一度味わったことのある、妙な寒気を携えて。







 何時間歩いたか。

 青かった空は夕焼けでオレンジに染まり、静かな街並に一層の寂しさを落としている。

 それまで無言を貫いていたレイが、街の中央の巨大なモニュメントの元にたどり着いたとき、ようやく足を止めて口を開いた。

「どう思った?」

「ほえ?」

「NGA…あたしが主催した《NEVER END ONLINE NEW GENERATION ADVANCE》のこと」

「どうって…びっくりしました。大会のこともそうだけど…レイさんがその…」

「引退を賭けるって話?」

「はい…」

 本気なんですか、とは訊けなかった。

 本気でないにしては、彼女はとても堂々としていたから。

「なんで急に…」

「急ってわけじゃないよ。前からずっと考えてた。もしもこのまま、誰もあたしに勝てないなら…あたしはゲームをやめようって」

 ゲーマーとして生きてきたレイの経歴を知るからこそ、アリスは何度聴いてもその言葉を、現実を呑み込めない。

「私、何にも知りませんけど…たぶんレイさんは、ううん… 確実に誰よりもずっとずっとゲームに生きてきたと思います。誰よりもゲームが好きだったと思います。悔しいけど、【不思議の国のアリス(私たち)】より…。それなのに、なんで…」

「アリスならわかる…いや、わかるときが来る。なんて、あたしの勝手な妄想だけど。アリスはさ、自分が周りと違うなって思ったことない?」

「違う…?」

「意志とか心構えとかじゃなくて、もっと根本。勝ちたいって根性論を頭がガン無視して、絶対勝てるってそういう風に確信する瞬間無い?あれ、確信もちょっと違うかな…。アリスはあたしと同じだからわかる。この勝負は最初から勝てるって理解してるときがあるはずだよ」

「それは…調子が良いときは少し…。でも、そんなの誰だって」

「あるだろうね。でも、あたしたちとその他大勢じゃ質が違う。生まれ持っての強さの質が」

「強さの質…?」

 それは、ゲームの神様から寵愛を受けているような全能感、或いは無敵感だとレイは言う。

「一言で言えば、あたしたちは生まれながらにゲームの天才だってこと。強さを宿命づけられたね」

「言ってること…難しくてよくわかりません。私は少なくとも、自分を天才だと思ったことはないです…。ただゲームが楽しいから、好きだから…」

「あたしも最初はそうだった。コントローラーを握るだけでワクワクして、画面の向こうの世界はいつだって色鮮やかで。志郎が創った()()()()も、あたしの居場所の一つだった。色んなゲームをして、たくさん遊んで、天才だって言われ続けて、気が付けば最強なんて呼ばれて。そして、その先には何も無かった」

 風が一陣。

 虚空へ消える。

「その席はとても魅力的だけど、たった一人しか座れない。高すぎて、遠すぎて、誰も手が届かない。その席に座ることが…強すぎることが孤独で寂しいなんて、子どもの頃からわかってたはずなのに。あたしは寂しさに耐えられなかった。ん?むしろ耐えた方かな?じゃあ飽きたが正しいや」

「飽きたって…そんな理由でゲームをやめちゃうんですか?」

「人それぞれだよ。物事の終わりに理由を求めるなんて、まだまだ若いね」

「十歳も離れてないじゃないですか…」

「アハハ、ほっぺ膨らませるアリス可愛い。……あたしね、この大会に賭けてるんだ。本気で戦いたい。あたしの本気を受け止めてくれる人が居るかどうか、それを確かめるための戦いなんだ」

「なんで私にそれを話すんですか?言われなくても…私は本気でレイさんを倒しに行きますよ」

「発破かな。アリスはあたしが気に掛けてる数少ないプレイヤーだもん。NGAに参加する、あたしが直々に選んだ各国の選りすぐりに埋もれないようにってね。要らない心配かもしれないけど。なんといっても、アリスはあたしの大のお気に入りだからね。…………だから、これは脅し」

 その目は、かつてないほど冷たく恐ろしかった。




「あたしを失望させたら殺す」




 不甲斐ない真似をするな。

 退屈させるな。

 飽きさせるな。

 怯むな。

 臆すな。

 躊躇うな。

 その王は誰よりも王らしく、傲岸で、傲慢に、少女に対してこれ以上ない呪詛を放った。

 時間が止まったような静寂が流れる中、レイはクスッと口角を上げておどけた。

「なんてね。冗談。長話しちゃったね」

 と、レイは宵闇が落ちようとしている空に向けて手を挙げ指を鳴らした。

 するとどうだろう。

 空が瞬時に青さを取り戻した。

「?!」

 太陽がわかりやすく上昇し二人の頂上に掲げられたのを見て、アリスはその事象に仰天した。

「空を操るスキル…じゃない…。もっと違う感じがした…」

 ハッとステータスを開いてみる。

 そこに表示された圧倒的な違和感。

 レイと出会ってからたった数分しか経っていない事実に、アリスは言葉を失った。

「すぐに気付くのは、やっぱりアリスが天才だからだよ。ま、実感してもらったとおり。これはあたしが新たに手に入れたアドミニストレートスキル。ゲーム内時間を現実世界の何倍にも加速させる、時の流れを操る神の権能。【放浪者】」

「【放浪者】…?時間を操るって…」

 あり得ないとは言わない。

 アドミニストレートスキルに常識が通用しないのは今更だ。

 だが、今までのものとは規模も桁も違う。

「このスキルはあたしが設定した対象、範囲に時間加速を与える。今だと現実の一分が、あたしたちが体感した数時間になるように。NGA当日は、一時間が一日になるよう引き延ばす。思う存分やれるように。大会に向けて、必死になって手に入れたよ。わざわざ【知恵者】なんて公式のネタバレを使わせてもらってね」

「【知恵者】…ノアちゃんのところの…。もしかして、今までストリーマー活動をしてなかったのは」

「このため。あと、【放浪者】の力を最大限使って必要なものを手に入れるためにね」

「必要な、もの…?」

「……【星天降臨(アストラルコール)】――――――――」

 レイがスキルを呟いた瞬間、空から降ってきた黄金が大地を震わせた。

 右手に十四枚刃の剣――――《分子裁断(フェアウェル)》。

 左手に盾が一体化した銃――――《幻撃(リユニオン)》。

 二つの兵器で武装したそれは、紛れもなく"神"であった。

「これが最強の黄導十二宮神(ゾディアーク)双魔極神(そうまきょくしん)――――《ジェミニ》」

「双魔極神…《ジェミニ》…。双子座の星天の使徒(アストラルシリーズ)をレイさんが…」

 一瞬、アリスの脳裏に何かがフラッシュバックした。 

 しかしそれが何なのかはわからない。

 わかるのは、目の前の神から放たれる強烈なプレッシャーと、王の覚悟。

「この《ジェミニ》と一緒に、あたしは全力であたしに向かってくる敵を叩き潰す。それで…この無為な無限を終わらせる」

 もしも叶うなら、止められるって言うならと、レイはアリスに()()()を投げ渡し、まるで託すような目で告げた。

「あたしを殺してみてよ」

 

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