第88話 雌伏
先日のエンシェントドラゴンとの大一番以来、私は大人しくしている。
とはいえ、もちろん新しく加わったエンシェントドラゴンの世界を見学したり、その他元代表達との交流を深めたりは継続している。
つまり、いつもと変わらない日々を送っていると言う訳だ。
新たな大地が加わり、新しい文化や考え方に触れることで私の戦い方も大いに幅が広がっている。
もちろん、そこに住む人達の間でも、様々な交流が近いところから始まっている。
船による交易が盛んになった国々もあれば、侵略戦争が始まっている国々もある。
今諸国は大航海時代を迎えて造船や探検が盛んだ。
そんな中に空を飛べるエンシェントドラゴンの一族の住む大陸が生じて彼らがどう動くのかは個人的にも気にはなったけど、彼らは矮小な人間の営みには興味を示さず、今まで通りの生活を今まで通りの土地で行うようだ。
もちろん、客人を拒むわけじゃないし侵略など試そうものなら間違いなく一撃で撃沈されるとは思うけど。
変わったことと言えば、オムに頼まれて彼の肉体に若返りの措置を施したことかな。
生命の玉の効用で老化すら治せることは既に自分の体で実証済みなので、本人が希望して、私にとっても一緒にいて欲しい大切な人であるオムにその措置をすることは極めて自然だった。
オムは私の良き理解者であり、アドバイザーである以上、私にとっても大切な人だし、本人も留まることを知らない知識欲と世界が広がったことも相まってその知識欲を満たすために一層の時間を必要としたのでお互いにメリットがあるからね。
実は狂喜乱舞したオムに求婚されているのだけど、返事は保留にさせてもらっている。
正直悪い気はしないし、いつかは子供も産みたいという思いはあるけど、この世界を賭けた試合に臨み続ける以上は、妊娠出産で自分の戦闘力が弱ることは避けたい。
事情を話せないまま保留にさせてもらっているのは心苦しいけど、オムはオムで世界を旅して周ったり、それを本にしたりするのに忙しいから特に気にしている様子はないのが救いだ。
奴隷の身分から抜け出して、自由になったのも束の間、実は創造主の奴隷に等しい状態だったことが分かり、絶望感の中でも守るものがあるという一心だけで戦い続けてきた。
でも、その戦いもそろそろ終わりにしたい。
そう、次の試合で・・・
その想いを深く封じ込めて、牙を磨きつつその時を待つのだった。




