第83話 守った世界での夜
オムとノレリ村長の話はお互いに大きな驚きをもたらしながら進んだ。
ノレリ村長の村は特に名前すらない村で、年に1回外から農作物の買い付けの旅商人がやってくるくらいで、それ以外は完全な自給自足で閉じた村だった。
それでも、それなりに長くここに村を構えていること(村長は17代目だそう)や、私達が住む大陸の存在なんて誰も聞いたことないということ等情報交換は進んだ。
近くの都市部というと、平原を突っ切って荷馬車で一週間ほどの距離に町があるということくらいしか聞けなかった。
そんなに離れたところから買い付けに来るというのも別におかしな話ではなく、村人は自分たちで食べて非常時の備えをたっぷりしても有り余る量の食糧を生産しているそうだ。
それを年に一度買い取ってもらって現金や物々交換で多少の品を入れて細々と暮らしているところに外国人が来たので、かなり驚き戸惑ったらしい。(髭であんまり表情が分からなかったけど)
せっかくなので食糧として主だった産物を売ってもらおうと物々交換を申し入れた。
何が欲しいか尋ねると、金属製の農工具なんかがあるとありがたいと言うので、エラン製の鋸や鍬なんかが少しあったので出してあげたら大層喜ばれた。
私としては近隣の山に魔物とかいるのかなと気になって聞いてみたけど、特にそんな危険な生物はいないようだった。
割と平和なのかと思ったけど、最近までは全土で統一戦争が繰り広げられていたらしく、今年になってようやく統一がなされたらしい。
旅商人からそれだけは聞いていたようだ。
どこかで聞いたような話だと思ったけど、私達のところも統一に際して突出した武力を行使できる私が出たことで代表戦が行われた訳だから、コロナの方も同じようなことだったんだろうと思えば納得だ。
こちら側の話もかなり村長さんには刺激的だったらしく、刺激の少ない村民も農作業を終えてちらほら集まってきたこともあり、せっかくなので一緒にお食事をする運びになった。
急遽ということもあってご用意頂いたのは鍋。
外の集会場には沢山の竈があって、そこで自慢の作物を使った鍋料理をごちそうしてくれた。
驚いたのは大豆という豆を発行させた調味料がとても美味しかったことだ。
お礼に私が持っていた荷物の中からお酒を沢山出してあげたら、収穫祭の時でもないと沢山飲めないから有難い、と大変喜ばれた。
すっかり酒盛りになった夜の宴は大いに盛り上がり、焚火が消えて月明かりだけになっても暫く続いた。
私は見た目は普通に年相応に小さい女の子なので子供達が集まってきて、一緒に遊んだりお話をしたり聞いたりでとても楽しかった。
これがコロナが命を賭けて守ろうとした世界で、それをちゃんと残してあげられたという充足感が私を満たしてくれた。
もちろん、美味しかったこのミソという調味料を少しお土産にもらえたことも大変にありがたかった。
その晩は凄く良い気持ちで寝ることが出来た。




