第81話 新世界
オムに急かされて仕方なく彼を担いで空を飛び、北の港町に辿り着いた。
ここは王都からもかなり距離があるので、クーデターに直接関わった訳ではないけど、新体制に移行したばかりで混乱していたところに加えて港の目と鼻の先に突然巨大な大陸が現れたので混乱の極致といったところだ。
オムは領事館に行って少し交通整理をしてから現地確認に行くというので私はめんどくさいから町をブラブラすることにする。
この町の名前はノースポート、船は無事だったもの、どこまでも広がる海が広がっていたところが海峡に変わり、その先には見渡す限りの大地があるのだから漁にも恐ろしくて出られない。
でも、気になるので野次馬的に港に人は集まっていた。
釣りをする人、神の奇跡だと怪しげに演説をする人、暴動にならないように気を張る兵士等色々だ。
全く、ルーナさんも酷いことをするもんだ。
もう少し離してくっつければ良かったのに・・・
お陰で早々にオムに見つかっちゃったし、向こうに行くことになっちゃった。
コロナが命懸けで守ろうとした世界に凄く興味はあるけど、コロナの家族とかにどんな顔をして会えばいいのか分からない。
コロナから得た知識は玉に封じているけど、必要だったら一度取り込んだ方がいいのかな。
せっかく新しい町に来たけど、特産品も漁に出られないから食べられない。
彼らがギリギリ食いつないでいくための魚は釣れるらしいけど、穀物なんかの他所から買わなきゃいけないものを交換できるほどのものがないから旅商人たちも困ってしまっているらしい。
何とか領主の方で現金で支払うことで今は持たせているらしいけど、このままだと間違いなく詰んでしまう。
そうならないようにオムが交通整理に赴いたとはいえ、時間はかかるだろうな。
向こう側の世界と交易でもできるようになればまた栄えるんだろうけどね。
そのためにも一旦オムと現地に行くのは必要なことなのかもしれない。
うん、そう思ったら少し気持ちが上向いてきた。
オムが領主館での諸々を終えて来たところで合流して飛翔で新たな地に足を着ける。
チルチルには空に残ってもらって周りから何か近づいて来たら教えてもらう段取りだ。
何しろ、肝心のオムがいきなり這いつくばって植物の観察なんか初めて大興奮し始めているからね。
どうやらオムの知らなかった種類の草花なんかも多いようで、目がキラキラしている。
そりゃあ別の創造主の下で生まれた以上はかなり違ってくるのは普通だよね。
「オムオム、そういうのはまた今度にして、今回は人里を探してみない?」
「お、そうか。悪い悪い、つい新しい発見に興奮が抑えられなくてね。これだけでも研究すれば新たな薬なんかに使える可能性があるから、新しい資源と言っても過言じゃないね。」
個人的に全く興味はないけど、これらが有用だとなれば漁ができなくなった彼らも採集で身を立てることが出来るかも知れないと思えば悪くない話だ。
「それで、人を探す話だけど、私のスキルによるとあっちに行けば人里がありそうだよ。」
「分かった。じゃあ、取り敢えずそっちに進もう。」
道なき道を歩き、途中で見かける未知の動物や植物にオムが脇道に逸れようとするのを止めるのが大変だったけど、野宿を挟んで3日も歩き続けたところで、どうにかチルチルから町が見えたという報せが舞い込んできた。




