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第77話 気持ちの整理

 「ミコト!大丈夫?」


 オムの声が聞こえるけど、反応する余力がない。


 オムが急いで医者を呼んでくれたりしたけど、特に異常があるわけではないのでベッドに寝かされて終わりだ。


 何とか深呼吸を繰り返して落ち着いてくるまでじっとしていたら、ようやく余裕が出てきたので付き添ってくれていたオムに声を掛ける。


 「オム、心配かけてごめんね。私、どれくらい消えてた?」


 「消えて?何を言ってるんだ。鍵を扉に差し込んだと思ったら突然崩れ落ちるから本当に驚いたよ。」


 「え?そうだったの?」


 「ああ、そうだよ。一体何があったんだい?」


 「な、何でもないわ。多分ちょっと疲れていたのよ。ここのところずっと忙しかったから。」


 ごまかしてみるものの、オムは絶対何かを隠していると思っているだろうな。


 オムの全知のスキルでは頭の中までは分からないはずだから、いきなり世界が潰されることはないと信じたいけど、見透かすような目が怖い。


 「まあいいや、無事で良かったよ。」


 意外にもオムは驚くほどあっさり引いてくれた。


 静かに立ち去ったオムの背を見守りながら、私の内心は物凄いことになっていた。


 だって、いきなり創造主とか出て来るし、明るいおばさんかと思ったらおっかないし、いきなり世界を賭けて戦えとか無茶苦茶すぎるし・・・・しかも、話からするに奴隷制度を創ったのも彼女なんだと思う。


 抑えに抑えつけて反発してくる私みたいなのを創るために・・・


 なんだか自分という存在がとても小さくて覚束なくてあやふやなものに感じられる。


 これまでスキルを発動してから一気に王国を倒すに至るまでに築いてきた自信が吹っ飛んでしまった。


 何故だか止めどもなく涙が出てきて、その晩はただ泣きながら眠った。


 そして次の日の早朝、こっそりと王宮を抜け出して延々と真っ直ぐに飛び続けた。


 赤竜島を超えて何もない海をただひたすらに飛び続けてどれくらいが経っただろうか。


 ゴン!


 私は目に見えない壁に頭をぶつけて悶絶した。


 でも、痛む頭よりも胸が痛い。


 本当にこの世界は創られた箱庭だったんだ。


 私達も創造主の気持ち一つでいつでも消される存在。


 知りたくなかった。


 奴隷制度を布く王国を倒して有頂天だった私を奈落の底に一気に落としたこの事実を。


 気力が尽きた私は飛翔を続けられなくなり、ドボンと海に落ちてしまった。


 何をするでもなく、ただ水面に浮かびながら漂う。


 『ミコト様!一体どうしたんですか?あの鍵を使ってからずっとおかしいですよ?』


 『チルチル・・・ごめんね。心配かけて。でもね、言えないの。』


 『ミコト様・・・』


 だめだ、このままじゃ皆に心配かけるだけだし、勝てっこない。


 負けたら終わり、私達の存在そのものが終わってしまう。


 それだけは避けないといけない。


 どこの誰だか分からない相手のことも、まだ理解と整理が追い付いていない創造主のことも一旦脇に置いておいて、自分の大切なものを守ることに集中しよう。


 いつ本番の呼び出しがあるかも知れない中で時間を無駄にはできないからね。


 スキルは元より、自分の基礎能力の向上もしなきゃ。


 そう決めたら何だかスッキリした。


 誰にも相談はできないけど、自分を高めることならできる。


 王宮に帰って、オムにスキルを持つ魔獣の生息地をリストアップしてもらって修行の旅に出よう。


 時が来るまでは実戦の中で勘と地力を上げることに集中するんだ。


 やることが決まった私は、全速力で王宮に舞い戻った。

皆様コロナ騒動の影響は大丈夫でしょうか?

私はまだ何とか本業は影響が出ずに続けていられますが、果たしてどうなるか・・・

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