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第75話 扉の先

 意外な幕切れで終わったトップ同士の会談だったけど、私はその鍵を使うのは少し先のことになった。


 まずは王都に入城してパレード。


 ここでは元奴隷達に物凄い歓迎を受けた。


 そして、王族の処刑。


 これも速やかに行われた。


 沢山の元奴隷達が前列で歓声を上げながら物を投げつける興奮状態の中での公開処刑は何か胸が痞えるものがあったけど、長年抑圧されていた元奴隷達にとっては留飲を下げる大きなイベントになったようだ。


 一方の元町の人達は元奴隷達の報復を恐れてか殆ど来ていなかった。


 実際、興奮した元奴隷達による復讐の私刑は王都全体であちこちで発生しているみたいだ。


 まあ、元々しんどい仕事を人に押し付けて楽していた連中だから、法や軍の後ろ盾がなくなった今はただの弱い人達なので、辛い労働で体を鍛えてきた奴隷達に抗う術は無いから当然の結果かな。


 そういった初期の混乱を収めるためにオムを中心に色々とゴンゾが奔走して一旦形が落ち着くまで、私は聖女の印象を強くするために元奴隷の集落や療養所を回って癒しを施すことに専念した。


 もちろん、これもオムのアドバイスに基いてだけどね。


 そして、代官を置いてゴンゾ達が一度ポートガスに凱旋する目途が立ったところで、いよいよ例の鍵を使うことになった。


 玉座の間は人払いされていて、私とオムの2人しかいない。


 「ねえオム、本当にこの部屋の中に何があるか分からないの?」


 「ああ、不気味なことに全く分からない。私のスキルをもっても知ることができないことが何なのか非常に気になるね。好奇心がうずくよ。」


 「それにしては開くのが遅かったわね。正直、オムならもっと早く扉を開けると思ったわ。」


 「もちろん、そうしたかったんだけどね。個人的好奇心と新たな国家に対する責任で責任を取った私を褒めて欲しいな。」


 「ふふふ、まあいいわ。私も久しぶりにのんびりできたからね。」


 「さあ、早く鍵を開けてみてよ。」


 もはや待ち切れないといった表情のオムが急かすので、苦笑しながら私は玉座の後ろのカーテンを開いた。


 そこには煌びやかな王宮には似つかわしくない木製の古ぼけた扉があった。


 鍵は金色で宝石もついた立派なものなのに、その不釣り合いさに本当に開くのか不安になったけど、考えても仕方ないので鍵穴に鍵を差し込んでみた。


 そして鍵を捻ると、カチャリと音がしたと思った瞬間、強烈な白い光に包まれた。


 眩しさでくらんだ眼が治っていく感覚はあるけど、まだ真っ白で何も見えない。


 そう思ったら自分の手足はハッキリと見えたので要するに自分の周りが全て真っ白で何もないところなんだろう。


 でも、足元に床がある感覚もなく、体は動かせるけど床を蹴って歩くことができない。


 側にいたはずのオムも、私の肩が定位置のチルチルもいない。


 念話を飛ばそうとするけど、それも届かない。


 ホワイトクローを飛ばしてみると、確かに斬撃が飛ぶのでスキルが使えない訳ではないらしい。


 だけど、飛行しようにも瞬間移動しようにも自分の居場所も何も不確かなのでうまく発動させられない。


 正直、かなり気持ちが悪い。


 そこで、足元に結界を作って、そこに立ってみると少し落ち着いた。


 やっぱり足元が地について(厳密には地面じゃないけど)いるって大事よね。


 落ち着いたら気持ちに余裕が出てきたので、今度は色々な疑問が湧き出てきた。


 それにしても、ここはどこなんだろう?


 前王は何のために私をここに来させたかったんだろう?


 『キャ~!ようこそようこそ!ミコトちゃん!待ってたわよ!』


 え?突然頭の中にテンションも声も高い女の人の声が?


 辺りを見渡しても誰もいない・・・


 『ああ、ごめんごめん。これじゃあ話し辛いよね。ちょっと待って。』


 ボンッ!


 突然辺りが真っ白なところから、海辺の砂浜に変わり、目の前にはまるで絵から出てきたような美しい女性が立っていた。


 紫のストレートロングの髪を胸元まで伸ばし、その胸は大きく、谷間を強調する黒のドレスで包まれていた。


 黒いドレスはピッタリと体に張り付いてスリットからは長く白く細い足が覗いている。


 私は驚きのあまり声が出なかった。


 「ふっふ~ん。これなら落ち着いて話せるんじゃない?ささ、座って話しましょう。」


 そう言って優雅に手を伸ばした先にはテーブルと椅子があり、真っ白なテーブルクロスの上にはお茶とお菓子が湯気を立てていた。


 フラフラと言われるままに席に着くと、女性も満足そうに腰かけてお茶に口をつけ、私にもどうぞと手で示した。


 恐る恐る口をつけると、爽やかな薫りと僅かに感じられる甘みが口中に広がった。


 今まで口にしたどんな飲み物よりも美味しいそのお茶を飲んで驚いていると、微笑みながら彼女が私に声を掛けてきた。


 「気に入ってもらえたようで良かったわ。まだ混乱しているだろうからゆっくり落ち着いてくれると助かるの。私はルーナ、あなた達の住む世界、“キータ”の創造主といったところね。」


 「キータ?創造主?」


 聞いたことがない言葉がいきなり続いて、私は落ち着くどころか益々混乱してしまう。


 「ちょっと補足すると、要するにあなた達が住んでいた大陸も海も島も全ての命も大本は私が創ったということなの。大昔にね。」


 「世界を・・・創った?あなたが?」


 「そうよ。それからずっと見守っていたの。」


 「一体何年生きて・・・ドラゴンだってそんなには生きられないんじゃ?」


 「そうねぇ、ざっと8万年ってところかしら。」


 「何のために?だって私達そんなこと何も知らなかった。オムだって知らなかったはずよ。」


 「それはそうでしょうね。私の存在は徹底的に隠したの。()()のような創造主の存在を人が知ると、頼るようになっちゃうからね。唯一存在を知っていたのはあなた方がつい最近処刑した元王だけよ。」


 「なんで1人だけに知らせたりしたの?」


 「ルールが変わってね、目的達成のためにそれが許されるようになったのよ。」


 もう何が何だかさっぱり分からない。


 『ルール』?『目的』?・・・・いや、それよりも気になる。


 「えっと、ますます混乱してきたんだけどルーナさんのような存在が他にもいるってこと?私達のような世界が他にも?」


 「あら、混乱しているようでしっかりと分かってるわね。その通り、私が知る限り私達創造主は800人以上はいるわね。多少増減しているから正確ではないけど。」


 「そ、そんなに?その数だけ私達の世界みたいなのがあるっていうの?」


 「その通りよ。それぞれの創造主の個性を反映した世界がね。」


 それは衝撃的過ぎる事実だった。


 私達の住む世界が創られたものだったこともそうだけど、それが800以上もあるということも。


 まだ見ぬ世界に好奇心が刺激される。


 でも、まずは一番大事なことを聞かなくちゃいけない。


 私は深呼吸をして少しだけ落ち着いた。


 よく考えていたら明らかに年上の人に敬語すら使う余裕がなかった。


 「もう分からないことも聞きたいことも一杯あり過ぎて困る位ですが、まずはなぜ私を呼んだのか、これからどうなるのかを教えて下さい。」


 「そうね、順を追って説明するわ。少し長くなるかもしれないけど、分からないことがあったら聞いてね。」

皆様コロナの影響は大丈夫でしょうか?

本当に更新が遅くなって済みません。

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