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第74話 決着・・・?

 ポートガス軍が王都の門を遠巻きに包囲するとほぼ同時位に王都の門が開いた。


 中からは大きな白旗を掲げた騎馬兵が1人と何かを乗せた馬が一頭、そしてその馬を曳く男が1人出てきた。


 突然の展開に味方に緊張が走る。


 2頭の馬と1人の男はゆっくりだが着実にゴンゾのいる本陣に近付いてくる。


 弓兵が弓を構え、盾兵が彼らを守る。


 しかし、相手は何も気にした様子もなく進んでくる。


 「そこで止まれ、何者だ!?」


 ゴンゾの護衛兵が大声で叫んだ。


 すると、馬上の騎馬兵ではなく、馬を曳く男がそれに答えた。


 「我は王国王太子である。この者は私の側近だ。我々は降伏の意思を伝えに来た。」


 「何だと?戦わずして降伏するというのか?」


 「ああ、そうだ。既に二度の遠征で多くの犠牲を出し、貴様らは疲弊するどころか益々力を増している。これ以上は犠牲を増やすだけだからな。」


 「なるほど、賢明なことだ。しかし、降伏するにあたっても王が出てこないのでは話にならんぞ。」


 「その点は心配いらない。ここに連れてきている。」


 そう言って王太子は馬上を指さした。


 何と王は馬上に荷物のように袋詰めにされて乗せられているというのだ。


 「なんと・・・相分かった。それでは会談の場所を作る故しばしそこで待たれよ。」


 「心得た。」


 慌ててゴンゾの野営用の大き目のテントが張られテーブルと椅子を運び込んで屋外に仮の会議室が作られた。


 出席するのは王国側は王と王太子、そしてポートガス軍はゴンゾ、オム、私、記録係だけだ。


 テントの周りは何重にも護衛が張り巡らされ、万が一にも暗殺者の侵入や王や王太子の逃亡が出来ないように厳戒態勢になっている。


 王太子は背筋を伸ばして落ち着いた顔で席についているが、王は焦点が定まらない目で座ってこそいるものの何となくフラフラしている。


 前に覗き見たときに偉そうに王太子と喧嘩をしていた頃とは似ても似つかない。


 「では、皆さま揃ったところで始めましょう。司会は僭越ながら私、オムめが勤めさせて頂きます。」


 そう言ってオムは私達を見回して、異議が出ないことを確認して話を続けた。


 「まずはお互いの紹介からですね。こちらがゴンゾさん奴隷解放軍の総司令兼ポートガス独立国家の初代王になります。一方、こちらが現大陸統一王国の王、そして王太子、2人とも称号が身を表すため名はありません。そしてこちらが今回の独立解放戦争のきっかけを作り、今ではポートガスで『聖女』との呼び声が高いミコト様です。そして、私はオム、元王国の研究者にして冤罪で投獄されていたところをミコト様に救われた縁で参謀のようなことをしています。」


 そこまで言ったところで王太子が反応した。


 「そうか、思い出したぞ。確か昔『全知』スキルを使って王国の貴族を大混乱に陥れた者がいたな。それがお前か。」


 「はい。特に混乱させるつもりは無かったのですが、皆様知られては困ることが多い人ばかりだったようでしてね、あのままだったら間違いなく獄中死していたところでした。」


 「ふ、皮肉なものよな。我らを滅ぼすのが奴隷や囚人とはな。」


 「さあさあ、紹介を続けましょう。こちらがこの国の国王陛下と王太子殿下です。お二人は位が名前と同等なのでお名前はないんでしたかな。」


 王太子が頷く。


 相変わらず王は反応しない。


 「さて、紹介も終わったところですから今後のことを話しましょう。ポートガス軍からの要求についてはゴンゾさんお願いします。」


 緊張気味のゴンゾが立ち上がった。


 「要求は簡単だ。これまで王国が行ってきた奴隷制度は過去の罪を償うもの等ではなく、王国が利益を得るために行ってきた非人道的政策だったことを宣言してもらう。

  そして、その罪は王族が背負ってもらうので全員を死罪とし、財産は没収。

  貴族についても財産は没収する。もちろん、抵抗したり財産の秘匿が判明した場合は死罪とする。」


 王太子は表情一つ変えないで応えた。


 「それだけで良いのか?まあ、当然の要求だろうな。我々からの要求も聞いてもらえるか?」


 「結構ですよ。聞いた上で叶えられるかどうかは分かりませんが言うだけは言ってみて下さい。」


 「感謝する。死罪の対象を少し減じて欲しい。具体的には15歳に満たない子供達は見逃してもらえないだろうか?ここにリストを作ってきてある。」


 そう言って王太子は一枚の紙を取り出した。


 ゴンゾはその紙を受け取ってじっと眺めた。


 「なるほど、全部で12名か。1歳から14歳まで年齢も性別もバラバラってところか。オム殿、どう思う?」


 「助命はお勧めしません。血統で繋がってきた王族なので、貴族の身分を失った者たちがその子たちを担いで正統性を主張して反乱を起こさないとも限りませんからね。」


 「むう、なるほどな。ただでさえこれから全土に新しい統治を広めなければならないのに余計な混乱の種となるか。」


 「はい。最終的な判断はお任せしますが、お勧めはできません。」


 「むう、そうだな。我らとて産まれてこの方ずっと奴隷として扱われてきたのだからな。流石に赤子は哀れとは思うが、我らの先祖が奴隷として産まれたことが運が悪かったように、諦めてもうらとしよう。」


 「そうか、残念だが仕方あるまい。」


 「そちらの要求はそれだけか?」


 「ああ。」


 ゴンゾと王太子の間で短い話し合いが終わりそうになったその時、突然これまで沈黙していた王が口を開いた。


 「フフフ、あるぞ。一つだけある。ミコトと言ったな。聖女とも戦乙女とも聞こえる強力なスキルの使い手だな。そなたには王都の王宮の玉座の奥の間に1人で入ってもらう必要がある。」


 突然の王の不気味な要求に一同が沈黙する。


 「陛下、一体どうされた?」


 王太子が驚愕の表情で横に座って不気味な笑みを称える元国王を見つめる。


 「フフフ、もう終わったことだ。本来ならいずれお前にも引き継ぐべきことであったが、儂の代で終わるのも一興というものだろう。良いな、必ず行くのだぞ。我が国の奴隷という逆境を跳ね除けたそなたこそここに入るのに相応しい。」


 そう言って元国王は懐から美しい鍵を私に向かって差し出した。


 私は恐る恐る鍵を受け取ると、オムの方を見た。


 オムは私の視線に気付いてこちらを見たが、その眼には困惑の色が浮かんでいた。


 どうやら『全知』のスキルをもってしてもその部屋のことは分からないということだろうか?


 私が鍵を受け取ったのを見て、用は済んだとばかりに元国王は立ち上がってテントを出て行こうとした。


 「ちょっと、どこへ行こうというのです?」


 元王太子が慌てて元国王へと駆け寄る。


 「もう話は終わっただろう?後は処刑までゆっくりとするさ。お前も来い。今更逃げも隠れもせんよ。」


 ゴンゾが頷き、監視の兵と一緒に2人は王都の中へ帰って行った。


 テントの中は勝利の余韻ではなく、得体の知れないものに対する気味の悪さが満ち溢れていた。

大変お待たせして申し訳ございません。

皆様コロナは大丈夫でしょうか?

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