第69話 息抜きと偵察
私は5万の大軍を退けた上に物資を大量に奪った功績をアピールして休みをもらった。
今は山奥の温泉で体を休めている。
もちろん、それだけが目的じゃない。
ラグナルから奪った『神矢』を試してみるためでもある。
何度か使ってみたけど、これは実に強力なスキルだということが分かった。
何もないところから弓を作り出し、弦を引けば矢が勝手に出て来る。
その威力もコントロール可能で、私の岩の壁をぶち抜いた破壊力抜群のものや、細く貫通するような矢も打てる。
何よりカッコいいしね。
のんびり温泉に浸かり、狩りをして食事をしてテントで休むという久々に静かで落ち着いた日々を過ごしていくうちに、ようやく頭の整理もついてきた。
最初は前回の食糧を奪ったり、暗殺したりという戦い方があまり性に合わずにオムに文句を言ってしまったけど、よくよく考えたら確かに戦果としては上場なのかもしれない。
敵側の犠牲は大規模な戦闘をしたわけじゃないので最低限と言えば最低限だし、こちら側には一切の犠牲がないどころか、大量の食糧と武器防具を奪ったことで物資も潤沢だ。
このまま帰ってもいいかなと思ったけど、せっかくだから足を延ばして敗戦後の王都の様子でも見てから帰ろうと思って一気に王都まで空の旅だ。
姿を消して城壁を飛び越えて人気のない路地に着陸。
情報を仕入れるために紹介所を見に行った。
途中の町の雰囲気としては少々元気がないかなぁ、程度の印象だった。
相も変わらず人通りは多いし、物も沢山店に並んでる。
負けて帰った兵士達はそもそも無事に帰れたんだろうか?
そんなことを思いながら紹介所の中に入ると、大きな特設掲示版のような板が立っていて、そこにでかでかと『傭兵募集!』と書いてあった。
沢山のごっつい人達がその看板に群がっていて、詳しいところが読めない。
「ねえねえ、おじさん。あれはどんな仕事なの?」
「ああ、お嬢ちゃんには関係ないけどな、ポートガスの町で奴隷の反乱があったらしくて、その鎮圧のための人手を募集してるんだよ。」
「ええ!そんあことがあったんですか?兵隊さんたちが行くんじゃないんですか?」
「ん~俺も詳しいことは良く分からんが、結構な人数らしく、人手はいくらあっても足りないらしい。血の気の多い野郎どもには丁度いいだろうな。」
「皆さん、そんなに奴隷の反乱に怒ってるってことですか?」
「いや~本気で怒ってるのなんて金持ち連中と貧乏人だけだろ?俺なんかからしたら、自由がないなんて哀れだと思うよ。俺だって決して楽な暮らしじゃないけど、自由な分だけ辛くもないしな。」
「そういう方もいらっしゃるんですねぇ。みんな奴隷の反乱なんて生意気って思ってるのかと思いました。」
「まあ、そういう奴が大半ではあるよな。だから結構集まってるみたいだよ。金もいいしね。」
「そうなんですか・・・」
「どうした?お嬢ちゃん元気ないな。」
「戦いになったら沢山人が死んじゃいますからね。そりゃあ元気も出ませんよ。」
「まあなあ、何でも先立って正規軍で討伐しようとしたら相当卑怯な手でボロボロにされたって噂だからな。帰ってきた兵士は少ないし、帰ってこれた奴らも使い物にならんらしい。」
「そんなに相手が強いなら、ほっといたらいいじゃないですか?」
「そうもいかないだろう。放っておいたら次々に他の町でもってことになりかねない。それに経済的にも大変だ。既に海の幸が手に入らなくなって市場は大混乱だよ。」
「大変なんですね。色々教えて頂いてありがとうございました。」
なんか思ったよりダメージ深刻な感じするけど、諦める気ないのかしら?
その後市場なんかをぶらぶらして夜まで時間潰してたけど、あちこちで値段が高過ぎるということで言い合いなんかがあった。
どうやら先日の進軍で食糧を大量に失ったので全体に値段が高騰しているようだ。
夜になったので王宮にこっそりと侵入。
丁度王が家族で食事をしているところに潜り込めた。
どうやら和やかな食事という感じでもなさそうだ。
「陛下、どうか此度の傭兵募集と再進軍をお考え直し下さい。」
王太子が陛下に詰め寄っている。
「くどいな。儂の決定に変更はない。」
「しかし、前回の敗戦の報告を聞けば聞くほど相手の不気味さと力が伝わって参ります。正規軍5万をもってして何ともならなかったものを寄せ集めのならず者でどうにかできるとは思えませぬ。」
「別に勝てるとは思っておらん。食い詰め者どもと反逆者をぶつければ丁度良い口減らしにもなろうて。」
「何ということを!人民は国家の礎ですぞ!」
「それは否定せんが、礎も重過ぎれば地面が沈む。王都では食糧不足で値上がりが続いているからな、共倒れしてくれるのが一番だ。」
「信じられませぬ。一体王に何があったと言うのです?このままではこちらの戦力は弱体化し、それを見計らってポートガスの反乱軍はこちらを攻め滅ぼそうとしてくるでしょう。」
「王都は落ちんよ。強大な城壁に屈強な軍、王宮と軍を維持する食料も十分にあるはずだ。」
「ですが、王都に住む民を長期間支えるだけの蓄えはありません!長期間の籠城は自殺行為です。」
「なあに、最悪儂らだけでも生き残って別の町に都を移せばよいさ。王の居るところが王都だ。」
「それでは、民が付いて来ますまい。奴隷という不満のはけ口があるからこそ民は王家に従う上での不満を溜め込まずに済んでいますが、そのようにあからさまに見捨てては敵を自ら増やしているのと変わらないではないですか?」
「くどい!儂が王だ!全てのものは儂を生かすためにあるのだ!分かったか!」
「はは、出過ぎたことを申しました。ご容赦を。」
王太子は俯いて唇を噛んで呟いた。
私には聞こえた。
「く、あの名君だった父はどこへ行ってしまったというのだ・・・」
う~ん、何かもうぐちゃぐちゃな感じだね。
オムの作戦、当たってるんだろうけど、えげつないわ~。
王からリーダーシップスキルを奪っただけでこんなに滅茶苦茶になるなんてね。
王太子がちょっと可哀想だなぁと思ったけど、私達奴隷から散々搾取して良い思いをしてきた報いだと思うと、そんな気持ちも失せていった。
久しぶりにポイントが増えてて嬉しいです。
まだまだ頑張ります。




