第70話 オムとの会話
少し1人になってゆっくりできたし、相手の状況もこの目で見ることが出来たのでポートガスの町に帰って久しぶりにオムと2人で話をすることにした。
「ちょっと王と王太子の晩御飯の席に潜り込んで様子を見てきたけど、結構対立激しかったよ。」
「相変わらず規格外な動きをするなぁ。私も知識としては分かってはいたけど、やっぱり直にこの目で見ると違うだろうから羨ましいよ。」
「オムは知ることが何より好きだもんね。そのうち手に入ったら『迷彩』のスキルあげよっか?」
私がそう言うと、オムは物凄い笑顔になった。
「それは何より嬉しいご褒美だね。私の『全知』スキルと合わせたら私の知見が益々深まりそうだ。」
「まあ、変なことに使わないで欲しいけど・・・」
「え?変なことって?」
「いや、何でもないよ。それより、これからどうするの?」
「う~ん、また性懲りもなく相手は軍勢を送ってこようとしているからね。まずはその守りを固めるのが先決かな。幸い物資は潤沢なんだけど、人数はいきなりは増えないからね。」
「また前回みたいなこと私がするの?」
「いや、それはやめとこう。あんまりミコトにどっぷりと頼りきりになるとまずいからね。今回はひたすら籠城して敵を削る。ミコトには多少攻撃に協力してもらったり、こちらの負傷者の救助をお願いできれば十分だよ。」
「うん、分かった。しばらく防戦一方だけど、こっちから王都に攻め入ったりはしないの?」
「う~ん、それはまだ先かなぁ。攻め入るにはこちらの勢力を広げる必要があるんだけど、この攻勢が止まないことにはね。でも、ゴンゾさんの内政は順調だよ。リーダーシップスキルをフルに発揮して元奴隷だけじゃなくて元町の人も一緒にまとめ上げて町の雰囲気は頗る良いし、評判だね。」
「それは良かったわ。この町の奴隷だけでも幸せを掴んだなら多少の意味はあったわね。」
「ああ、なのでこちらはとても士気が高い。町の人との一体化が進めば兵力だって増える。そしたら独立宣言をして新たな国として大陸中にアピールするさ。この町が豊かで強くて平等だってなったら他の町だって揺らぐだろうからね。」
「その足固めって訳ね。まあ、その辺はオムに任せてるし、信用してるけど時間はかかるのね。」
「早くブルブルの仇を討ちたいミコトの気持ちは分かるけどね。ただ倒すだけじゃ大混乱で第二第三のブルブルが出て来るだけだからさ。」
「うん、分かってる。だから私はこの町の発展のために頑張るわ。」
「いやいや、ミコトは十分頑張ってるって。食料や物資の調達に人の治療、果ては土木工事に至るまで1人で1万人分位は働いてるさ。それは皆が分かってる。」
オムはそう言ってくれるけど、何だか心が晴れない。
本当にこれが正しい道だったんだろうか?
既に沢山の人を手にかけてしまった。
普通の兵士達だ。
もともと、故郷のサラヘでの経験もあって兵士には良い感情はもっていないけど、エランの町で過ごして結局町の人も普通の人だって分かってしまった。
そんな人たちをこれからも殺し続けないといけないのかと思うと憂鬱になる。
単に王様の首を取って後は知らないって出来たらどんなに楽だっただろう。
唯一の救いは、ポートガスの町の皆が幸せそうにしているところだろうか。
町の人と元奴隷が融合して活力が凄い。
物資も沢山あるし、広大な街の外を開墾しているので仕事も沢山で人手不足だ。
既に元々の町の壁の外側に畑や砦兼住居を作った上に更に堅牢な壁も作った。
ポートガスの町の広さは元々の3倍以上に広がり、今は内部の改良と開墾・一部は既に収穫に追われている。
「人手不足か・・・他の町から奴隷を連れてくるのはどう?もちろん、奴隷としてじゃなくて移民としてッて意味だけど。」
「それは魅力的だけど難しいだろうね。ミコトが行って連れ帰るにしても時間はかかるし、その町の領主とも大いに対立することになる。王都軍が攻め入ってくるタイミングに間に合わないと困るな。」
「そっかぁ。じゃあ、無理しないで大人しくしとくよ。城壁をうんと高くするのも良いけど、そうすると日当たり悪くなるから畑が困るしね。適当に狩りとか漁とかしとく。」
「ああ、たまに皆に声かけてあげてよ。ミコトが見てるってだけで皆喜ぶからさ。」
「うん、分かった。オムは忙しそうだけど頑張ってね。」
「ありがとう。でも、今まで研究したことが一からの国造りという実践で活用できるなんて貴重な体験だからね。楽しくやらせてもらってるよ。」
「こないだの作戦も?」
私は少し引っかかりを覚えて少し尖った声で問い質した。
「ああ、あんなに作戦通り嵌るなんて軍師冥利につきるさ。」
オムはそんな私の気持ちに気付かずに屈託のない笑顔でそう答えた。
あの飢えと混乱の現場を実際に見ていないからそんなことが言えるのかな。
いけないいけない、少しネガティブになってしまっていたみたいだ。
話を終えて私は軍勢が攻めてくるまでの間、海に山にと飛び回って獲物を追い求める生活を続けた。




