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第66話 ポートガス討伐戦

 ポートガスの町は私が自分の能力を惜しみなく見せつけるように使っていったので、どんどんと拡張されていった。


 そうすることで情報が伝わって暗殺のターゲットが私になればいいなぁ、という程度のものではあるけど誰かの役に立っているのは嬉しい。


 早く仇と決めた王都の貴族たちと対決したいという焦りとは裏腹に周辺に居住地兼砦がいくつもでき、更にその周辺には大規模な畑が出来ていく。


 まるでポートガスの町の外側にサラヘが沢山できているかのようだ。


 元々町の独立性を低めるために禁じられていた農業を開始することで急速に食料自給率が上がるだろう。


 今はまだ収穫ができないので私の収納を食い潰すだけだけどね。


 今日は気分転換も兼ねて空から獲物を探しつつ狩りをしようと空を飛んでいた。


 気分も良いし、フラフラと飛んでいると、遠くに鳥の群れが飛び立つのが見えた。


 気になって見に行くと、軍隊が隊列を組んで行進しているのが見えた。


 間違いなく目的地はポートガスの町だ。


 何もないと思っていたけど、これだけの人を集めるのは時間がかかったのだろう。


 空から遠巻きに見てもこの迫力だ。


 砦や町の壁に守られていると言っても、この迫力の前には恐怖で動けなくなってしまってもおかしくない。


 急いで皆に知らせないと大変だ。


 私は神速と飛行を同時発動して音の壁を破りながらあっという間にポートガスの町に戻った。


 今や新たな統治の中心でありゴンゾやオム、私達が住む元領主の館に着くと会議室に突進していった。


 「大変よ!王都から凄い軍勢がここへ向かっているわ!急いで逃げるか迎え撃たないと!」


 きょとんとしている一同の中で2人だけが咄嗟に反応した。


 「何だと!?人数は?人数はどれくらいだった?」


 とゴンゾ。


 「何てこった。このところ動きがないんで油断した・・・」


 とオム。


 「数えてないから分からないけど、物凄い数だったよ。領主軍の何倍かも分からないくらい。」


 「く、、、想定より早いな。急いで防衛の作戦を立てよう。心配いらない。こっちにはミコトが居る。相手が5万でも10万でも大丈夫だ。ミコト、敵は何日でここまで来ると思う?」


 「そうね。ゆっくりと歩いていたから、最低でも3日はまだかかると思うわ。そういうのはオムが分かるんじゃないの?」


 「ところが、何故かぼやけて良く分からないんだ。もしかしたら俺の全知スキルを打ち消すスキルがあるのかも知れない。だから今はミコトからの情報が頼りだ。いや、やっぱり自分の目で見たい。ミコト、俺を抱えて飛んで連れて行ってくれ。」


 「良いわよ。じゃあ、早速行きましょう。」


 オムを抱えて飛んでいくと、遠くに土煙を上げながら進軍してくる軍勢の姿が目に入った。


 「ほら、オム、見えてきたよ。」


 「ああ、これは確かに多いな。もう少し近付いたら止まってくれ。」


 「分かったわ。」


 上空で静止すると、オムは懐から紙とペンを取り出して何やらブツブツ言いながら書き出した。


 「よし、次は町の方に戻ってくれ。さっきより少しゆっくり飛んで、そうそう。あ、この辺で止まって。」


 そこからまたオムは自分の世界に入って思考に没頭している。


 緊急を要する事態だし邪魔をするのもなんなので私はじっと待っているしかできない。


 「よし、じゃあ今度は館に戻ってくれ。全速力で頼む。」


 「オッケー。」


 言われた通り全速力で戻ると、直ぐさま人を集めて会議が始まった。


 「兵力はおよそ5万、進行速度から考えて到着見込みは5日程だろう。陣を敷くのはこの辺りで、恐らく時間的にも奇襲はなく正攻法で来る。こうなるとこちらとしては分が悪い。ただ、あれだけの人数だから兵站を維持するのが困難だと思われる。したがって短期決戦を望むだろう。むしろ、戦わずして降伏させるための人数かも知れない。こちらが十分な物資を持っているとも思っていないだろうしね。・・・・・・」


 私も同席はしていたけど、オムが必死にまくしたてるけど、理解している人は多分私を含めて誰もいなかった。


 「ねえねえ、オム。言ってることが難し過ぎて私達元奴隷には分からないよ。オムのことは信じているから、取り急ぎ誰が何をすればいいのかだけ言ってくれると助かるんだけど。」


 「は、そうか!済まない。焦っていたようだね。今回は圧倒的に多勢に無勢なので一切戦わない方向で進めたいと思う。」


 「え、それじゃあ逃げるってこと?」


 「いや、そうじゃない。ミコト1人で撃退してもらうってことだ。」


 「え、私1人で、いいの?」


 「今回は仕方がない。まともに受けたら沢山の犠牲が出る。今は1兵でも惜しい。勝ち戦の犠牲はある程度覚悟すべきだけど、負け戦で犠牲を出すのは無駄だからね。だから、ミコトには踏ん張ってもらうよ。」


 「いいわよ。ここのところ工事と農作業ばっかりだったからね。丁度いいから生命の玉も沢山補充させてもらうわ。」


 「ああ、それがいいよ。じゃあ、ミコトにやってもらうことを説明するよ・・・・」


 そこで説明を受けたオムの作戦は思った以上にえげつなく、オムの性格を疑いそうになったけど、”相手がこっちを殺そうとしているんだから、そんな相手に遠慮したって仕方ないでしょ”とあっさり躱された。


 過去の戦争の記録とかも研究していたオムとしては、こんな作戦は普通らしい。 


 と言う訳で早速実行に移すことにした。


 まずはオムに指示された場所の道を塞いでしまうことだ。


 丁度街道が山間を通るところで迂回も難しく、狭くなっているところを塞ぐ。


 どうやってやるかと言うと、瞬間移動の応用で何もない空間と地面を地中深くまで入れ替えてしまえばあっという間に壁の完成だ。


 念のためかなりの高さと厚さで作ったので、大群がこれを超えるのは相当時間がかかるし、超えたところで相当疲れが出るだろう。


 その上、壁を越えたところで出て来るのは巨大な縦穴だ。


 心が折れること必定だろうな。


 これを軍とポートガスの町の間と、何と軍の後方にもこっそり作って欲しいというので言われた通りに作った。


 そして、次の日からは夜の行動になる。


 昼間にしっかり休んでおいた私は、『迷彩』『夜目』のスキルをフル活用して野営中の陣に忍び込んだ。


 上空から見ていたお陰でどこがどのような布陣になっているかは一目瞭然だ。


 指示されたことは2つ。


 物資の確保と指揮官クラスの暗殺だ。


 流石に5万人の陣ともなると広大なので町に近い方から順に襲っていく。


 優先的に行うのは食料の奪取だ。


 荷車毎大量の食糧を次々と盗んでいく。


 異常に気が付くころには私は現場を離脱してなるべく豪華なテントにいる人や豪華な鎧を付けている人を次々に生殺与奪で各種の玉に変えていく。


 夜通し行った結果、陣は大混乱だ。


 指揮官が倒れて食糧が激減しているとなれば、士気はだだ下がりになること間違いなしだ。


 当然、繰上りで誰かがまた指揮を執るようになるのだろうけど、夜もおちおち眠れない状態でまともに考えられるかどうか。


 どうやら追加の食糧を求める連絡部隊が王都に向かったようだ。


 なるほど、ここで後ろに壁を作った意味が出て来るのか。


 オムは凄いなぁ。


 一体何手先まで読んでるんだろう。


 連絡部隊の後を追うと、突如として出来上がっていた壁に驚愕し、半分はそのことを報告するのに引き返し、残りの半分は頑張って迂回して王都を目指すようだ。


 道は圧倒的に険しくなるから大変だろうな。


 私も一緒に戻ると、後方の壁の存在を聞いてまた混乱が起きたようだ。


 ようやく落ち着いて今度は大部隊が引き返していった。


 恐らくは輸送上絶対に街道を開通しないとまずいと判断しての工作部隊の派遣だろう。


 なので、悪戯心で壁と穴を超えた先に同じものをこっそりとまた作っておいた。


 是非攻略に頑張って欲しい。


 その間にも見つけた食糧と偉そうな人を狩る作戦は続行中だ。


 最初のころは気丈にも昼間の進軍を続けていた隊も進軍速度は目に見えて落ちてきたし、空腹と睡眠不足のせいか、喧嘩も目に見えて増えてきた。


 可哀想に物資の保管係と見張り係は責任を取って処刑されてしまった。


 ひょっとしたら口減らしのためというのもあるのかも知れないけどね。


 それでも一向に夜の人的被害と物資の被害が収まらないので、彼らの不安と不満は最高潮だろう。


 食糧を粗方奪い終わった私は、武器を根こそぎ持って行っているからね。


 お陰で矢なんてもう数えきれないくらいあるし、剣も槍も鎧も金貨も潤沢だ。


 それでも使命感からなのか前へ前へと進んでいった彼らだが、眼前に聳え立つ壁を見て、手に持っていた槍を取り落として呆然としている。


 これでもう引き返してくれるかなと思ったけど、1人の男が手に輝く弓を持って壁の前に立つと空気が変わった。

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