第65話 ポートガスの町平定
最近更新ペースが落ちていて済みません。
初陣は勝利に終わったが、その後が大変だった。
犠牲者は双方合わせて1,000名を超えていた。
オムによると死骸は放っておくと病気が発生したり、危険な肉食の魔物を引き寄せたりすることもあるらしので処理が必要だ。
見張り以外は総出で死体の回収と装備の剝ぎ取りに追われた。
私は味方の犠牲者の内復活させられる者を何とか生命の玉の力で復活させたり、怪我人の治療に当たったりと大忙しだ。
お陰で私は完全に英雄扱いだ。
一通りの処理が終わると3人で今後の話をすることになった。
「ゴンゾさん、ミコト、お陰様でこの度の戦闘では大勝利と言っていい戦果を上げました。向こうも迂闊に攻めては来れないでしょう。」
「いやいや、2人のお陰だ。オム様の作戦といい、ミコト様の不思議な力といい、我々だけでは決してこのような見事な勝利とはならなかったでしょう。」
「まあ、我々がけしかけた戦争ですからね。協力するのは当たり前です。それより、今後の動きを確認しましょう。」
私達が頷くと、それを見たオムは既に頭の中にあったのだろう今後の話を始めた。
「まずは戦利品の分配です。武器防具は手入れして均等に戦うものに支給し、残りは予備として保管します。続いてミコトの手に入れた赤い技能の玉は主力の戦力を中心に仕訳して分配して下さい。大きくは読み書き・計算・剣術・弓術・槍術の5種なので、ゴンゾさんの裁量で分けて下さい。」
「ああ、これを飲み込めば俺達にも力が手に入るんだろう?願ってもない。」
「まあ、今回倒した兵士のレベルまでには引き上げられますので、ないよりは良いかなくらいですけどね。」
私は大量の赤い玉を種類ごとに分けて袋に入れておく。
「では、次にゴンゾさんにリーダーシップのスキルを習得してもらいます。」
「"リーダーシップのスキル”?」
「はい。既にゴンゾさんはリーダーシップを発揮していますし、仲間からの信頼も厚いとは思いますが、この先は仲間も自信をつけることで言うことを主張が激しくなったり、厳しい判断を下す必要が出てくることも想定されます。それに先立ってゴンゾさんがこのスキルを習得すれば反乱軍が瓦解することは防げるでしょう。」
「はい。オム。」
私が青いスキルの玉を差し出すとオムの手からゴンゾに渡され、ゴンゾが息をのみながら受け取った。
「さあ、飲み込んで下さい。」
ゴンゾは無言で頷くと、意を決したように一気に飲み込んだ。
「こ、これで何か変わったのか?」
「そのはずです。肉体的に変わるようなスキルではないので実感はし辛いでしょうが、確実に効果は出ると思いますよ。」
「分かった。感謝する。」
「それでは、今後の活動方針です。」
その後オムから語られた作戦内容と懸念点は次のような感じだった。
まずはポートガスの町を完全に掌握するために早急に攻め込む。
領主の首を上げて軍を解体、理想的には吸収して無防備な集落から町の中に全員が引っ越す。
王都から来ると想定される討伐軍を迎え撃つ。
ここでオムの懸念としては、恐らくは今回の戦いの異常性を伝えられた場合、スキル持ちが同行してくる可能性がある。
なので、私はここに残って防衛に専念。
他のメンバーは訓練・食料調達・防壁補強・哨戒等に班分けして防衛線の準備を行うことになった。
こうしてオムのアドバイスに基づくゴンゾの指示の下で戦力強化とポートガス攻略戦の準備が始まった。
こちらは私のスキルで負傷者は完全に回復している一方で領主軍は敗戦のショックと負傷者の傷はまだ癒えていないはずだ。
そこへ畳み掛ける作戦だ。
数日で準備が整ったので早朝からポートガスの町へと進軍する。
今回は最低限の守備兵だけを残した全軍だ。
裏をかかれないように全ての門に一定の兵力を割き、チルチルと私が上空から監視する。
もちろん集落は結界で保護済みだ。
かなりスキルを多用するから私はお腹が空いて仕方がないので生命の玉でエネルギーを補充する必要があるのが難点だけど仕方がない。
ポートガスの町は門をしっかりと閉ざして静まり返っている。
ゴンゾが降伏を勧めると、それに答えるように門が開いた。
白旗を持った兵士が1人でやってくる。
ゴンゾを先頭に万が一のために私とオムが脇に待機して兵士と対面する。
兵士から発せられたのは衝撃の一言だった。
「我々は降伏する。領主一族はいち早く船で町を出た。不在の主のために命を散らすこともないだろう。」
そこからは簡単だった。
領主の館はゴンゾ達に明け渡すこと。
町の人で今後の生活に不安を感じる人は期限内に出て行って良いこと。
残った時点でゴンゾの指揮下に入ること。
元奴隷は皆町に移住すること。
今後も今までのような業務を実施するが、待遇は納得できるものにすること。
等々と大枠の条件を提示して周知してもらうことに。
そうして、大きな混乱もなくポートガスの町でのクーデターは成功した。
実際には元々奴隷を激しく虐げてきた町の人に対する個人的復讐(特に娼館関係)があったり、住居が不足するので、その整理や仕事の条件決めなど、色々と大変だったみたいだけど、リーダーシップのスキルを得たゴンゾが奮闘してくれたようだ。
それよりも私は早く王都に攻め入りたいんだけど、オムは慎重だ。
「どうしてさっさと王都に攻め込まないの?」
「前にも言ったけど、重要なのは大義名分だよ。王国の混乱がなければクーデターの正当性は人々には認識されない。それに、兵力の増強、兵站の確保などやらなきゃいけないことは盛り沢山だ。」
「う~そんなの私がパパっとやっちゃえるのに~」
「ダメダメ、あくまでも主体はゴンゾ達で、我々はサポートなんだ。我々がいないと成り立たないような状況だといつまでも持たないからね。だから臨時の大活躍以外はミコトの出番がない方がいいのさ。」
「早くあいつらぶっ潰したいんだけどな~。」
「大丈夫大丈夫。今回領主一族が逃げ出したりしていることからも上層部がかなり腐って来ているのは明確だからね。時間の問題だよ。今はポートガスの町奪還のために全国各地から徴兵と徴発が行われていると思うけど、リーダーシップを失った腐った上層部がそんなことしたら、各地では不満続出になること間違いなし。それより、気をつけなきゃいけないのは暗殺かな。」
「暗殺?」
「そう、王都には沢山のスキル持ちが集められた特殊部隊がいる。向こうもミコトの能力の一部は今回で把握しただろうから、脅威として手っ取り早く取り除く方向で動くはずだ。そうすれば勢力としては圧倒的に上回る王国側がポートガスの町1つを落とすの何て簡単だからね。」
「どうやって防ぐの?相手だって私の顔とか完全に把握している訳じゃないとしたら狙われるのはゴンゾよね?」
「そうなんだ。相手はミコトを単なる回復役としてしかまだ認識していない。こないだの結界なんかはまだ誰のスキルかまで分かっていないはずなんだ。だから、まだ情報集めるのに必死な段階だろうね。そうなるとゴンゾが一番危ない。」
「どうする?ずっと側についている訳にもいかないわよね?」
「まあ、そこは考えがあるから大丈夫。取り急ぎこちらの急務は街の外に小規模な砦を建築することかな。居住スペースが足りてないから、砦を作って周辺に畑を開拓していずれはそこも城壁で覆って都市を拡大していく。この辺ではミコトの活躍を期待しているよ。」
「分かったわ。任せて。」
こうしてポートガスの町の安定と拡充のためのプランが大急ぎで立てられ、私は砦建築や開拓の労働力として駆り出されることになった。
神速や収納を使える私は物凄い働くので、次々と小規模砦と畑が完成していった。




