第52話 王宮の闇
翌朝、迎えに来てくれた親衛隊の兵士さんと一緒に初めて王宮の門をくぐる。
観光の時は遠目にしか見ていなかったけど、高い壁と大きな門、堀に囲まれて敵が攻めてきても籠城できるようにしてあるみたいだ。
別に敵国なんてもういないはずなんだけど、随分頑丈だなと思った。
門のところで下馬を要請されたので、ブルブルとチルチルは預けることにした。
念のため荷物もブルブルに預けて2人に番をお願いする。
身体検査とかあったら色々と面倒そうだし(くそ王子から奪った名剣もあるし)、2人なら誰かに荷物を触らせることもないだろうと信頼できる。
待合室に入ると、ユリウス隊長が待っていた。
「ミコト殿、よくぞ来て下さった。」
「ユリウスさん、お久しぶりです。王子殿下のご様子はいかがですか?」
「お体は元気そのものですよ。ですが、その・・・」
ユリウス隊長は言い淀む。
やはり、心は壊れたままなんだろう。
「そうですか。それで、これから何をすれば良いのでしょうか?」
「はい、既に私の方で王陛下へのご報告等全て行っております。やはり、生還したとはいえ成人の儀式は失敗した上にあのような状態に陥ったことに対する動揺は大きいです。調査委員会を立ち上げて経緯を調べて王陛下に改めて報告する必要があります。
ミコト殿にはその調査委員会の調査にご協力頂ければと思っています。」
「分かりました。誰かの質問に答えれば良いのですね。ありのままをお話すれば問題ありませんね?」
「もちろんです。念のためにお教えさせて頂きますが、調査を担当する文官は嘘を見破るスキルを持っていることがございます。お気を付け下さい。」
「分かりました。ご忠告ありがとうございます。」
やれやれ、調子に乗った馬鹿が産まれて初めてボコボコにされて心壊れただけなんだけど、随分と大袈裟よね。
それよりも、嘘を見破るスキルって言うのがとても興味を引く。
私が持っている『鑑定』でも同じことができるけど、どの程度のことができるのか気になるところだ。
そして、いよいよ準備が整ったらしく、私は別の部屋に移動した。
部屋の中は円状の机が段々外側に行くにつれて広く高くなるようになっていて、真ん中には5人横並びに座る長机と長椅子があり、その真ん中正面に向かい合うように1人分の椅子が置いてある。
長椅子には白髪のひょろっとした老人が5人座っていて、何やら机には書類が乗っていて、それぞれ羽ペンを持っている。
促されるままに座席に座る。
「それでは、これよりアラゴルン殿下成人の儀式の顛末についての聞き取り調査を開始する。証言者はエランの町紹介所所属のフリーランスであるミコトに相違ないか?」
「え、はい。」
あまりに言い方が大袈裟なので思わずびっくりしてしまったけど、名前を確認されただけだと分かったので少し落ち着いた。
「これよりは我らの問いに正直に答えるように。余計な発言は控えること。虚言は我らの目には通じないので心するように。」
そういえば嘘を見破るスキルがあるとか言ってたっけ。
試しに私も鑑定を行ってみると、確かに5人とも同じ『真偽判断』というスキル持ちだった。
どうやら嘘か本当かが分かるようだ。
流石に頭で考えていることが全部分かるというレベルではなさそうなので安心した。
返事の代わりに一つ頷くと、いよいよ審議が始まった。
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・・・・・・・・・・・延々と似たようなことを違う言葉で聞かれてうんざりしてきた。
一応丁寧な言葉で聞いては来るけど、明らかに信用してないというか、どこか侮った気配がする。
疲れもあってイライラしながらも淡々と戦闘の様子などを話して聞かせる。
「このように王子はレッドドラゴンに挑んでは跳ね返されて致命傷を負い、その度に私が治療をして再び立ち向かうことを繰り返したのですが、遂に心が折れてしまった王子をレッドドラゴンが食べようとしたのですが、負けを認め、王子を生きて帰すことのメリットを訴えることでどうにか何とか我々で連れ帰ることができたのです。」
「ふむ、しかしアラゴルン殿下の神速の動きにドラゴンごときがついていけるとは思えんがな。まして名剣エグゼイビアをもってして切れぬものがあるとも信じられぬ。そう言えば剣はどのようにして失われたのであったのかな?」
「ですから、何度も申し上げました通り戦意を失った時点で殿下は剣を手放しておりました。私としても王子のお体こそが守るべきものでしたので・・・・・それと、王子の攻撃が尽くレッドドラゴンに通じなかったのは事実です。」
「・・・嘘は言っていない・・・」
剣についてはこれ以上突っ込んで話すと嘘になってしまいそうなので言葉を濁しておいた。
それに王子が敵わなかったことも完全に事実なので、彼らの真偽判断スキルにも引っかからずに済んでいるようだ。
最終的にこのやり取りは深夜まで繰り広げられ、終わった時にはぐったりだ。
同じ話を何度も何度もさせられて疲れ果てている。
放心状態で何とか宿に帰り着いて、食事もそこそこに眠りについた。
次の日は疲れもあってゆっくりとお昼前くらいに起きて身支度を整えて再び王宮へと向かった。
ユリウス隊長に会って別れを告げるためだ。
せっかくの王都だったけど嫌な想い出が出来てしまったし、用は済んだのでさっさと自宅に帰ってゆっくりしたい。
門番に名前と用件を告げると、直ぐに中に取り次いでくれた。
暫く門前で待っていると、ユリウス隊長を先頭に大勢の兵士がやってきた。
ユリウス隊長の表情が妙に硬い気がする。
「ユリウスさん、おはようございます。ってもうお昼近いですね。昨日は遅くて挨拶できませんでしたが、無事に説明は終わりましたので、これで失礼させて頂きます。」
私が暢気に挨拶をすると、いつしか周りは兵士に囲まれてしまっていた。
「ユリウスさん?」
「ミコト殿、いや、ミコト、そなたの王族に対する加害行為による国家反逆罪の罪で拘束する。」
「え?」
あまりに予想外の話に一瞬呆けてしまったのが悪かった。
私は取り囲む兵士たちによって一気に地面に引き倒されて縄で拘束されてしまう。
『ミコト様に何をする!直ぐに叩きのめしてやるわ!』
チルチルとブルブルが戦闘態勢に入り、ブルブルは猛烈な後ろ蹴りで兵士を吹き飛ばした。
間違いなく即死レベルの攻撃だ。
『駄目よ、あなた達は逃げて!私なら大丈夫!何とでもなるから!』
慌てて正気に戻った私は逃げるように指示をするが、ブルブルは興奮して暴れ続けている。
いくら普通の馬に比べて圧倒的に強化されているとはいえ多勢に無勢、仲間を殺された兵士達に囲まれて槍で間合いの外から集中攻撃を受けてブルブルが倒れてしまった。
『ブルブル!ブルブル!』
『済みません、最後までお乗せ出来なくて・・・チルチル、後はお願いね・・・・』
地面に伏す私と倒れたブルブルの目が合ったが、ブルブルの目からはその光が失われていく。
『いや!いや!ブルブル!ブルブル~!』
私はあまりのショックに目の前が真っ暗になった。
後から思えばスキルを使えば何とでも助けられたはずなんだけど、その時は自分の身に起こった突然の意味不明な拘束にパニックになってしまっていて何もできなかったのが今でも悔やまれる。
チルチルが何か念話で話しかけている気がするけど、何を言っているのか分からない。
どうしてこんなことになったんだろう?
昨日までは何も問題なかったはずなのに。
それから暫くのことは良く覚えていない。
気が付いた時には暗くジメジメした地下牢に突っ立っていた。




