第53話 決意
どれほどの間ボーっとしていたのだろう?
私は狭く、暗い牢屋にいた。
鉄格子で出来ている一面以外は全て石造りで、僅かな明り取りの隙間が高いところにある位で、後は文字通り何もない。
服は元のままだし、幸い腰に括り付けていた無限収納の巾着袋はそのままだった。
見かけのその小ささから見落とされたか見逃されたのだろう。
私は硬い床に座り込んだ。
床から伝わる冷たさが少しずつ混乱した頭の中を整理する冷静さをくれる。
「えっと、私はユリウスさんの依頼で成人の儀式に失敗して心が壊れたアラゴルンの身におこったことを説明するために王都に来た。」
「そして、5人の調査官の前で実際に起こったことを話した。(不都合なことはもちろん話さなかったが、積極的に嘘はついていない)」
「ユリウスさん別れを告げるために王宮を訪れたら突然兵士に拘束された。」
「その時に暴れたブルブルが・・・・ブルブル!」
その時、やっと私の心身は覚醒し、立ち上がって全てを思い出した。
私を守ろうと暴れるブルブル。
何本もの槍に刺されて倒れて目の前で命の光を失っていくブルブルの黒い瞳。
私はブルブルが死んでしまったことの衝撃に打ちひしがれた。
鞍に仕込んでいた生命の玉は発動しなかったんだろうか?
なぜ私はさっさと兵士を全滅させてブルブルを助けに動かなかったんだろう!
後悔がぐるぐると私の頭を支配する。
怒りが沸き起こってくる。
ブルブルを殺した兵士達と、助けられる力を持っていたのに咄嗟に動けずにむざむざとブルブルを見殺しにしてしまった自分に対する怒りだ。
「はっ!チルチル!?チルチルは?」
いつでも私の肩に留っていたチルチルの姿が見えない。
もしかしてチルチルも交戦してやられてしまったのだろうか?
最悪の事態を想像して背筋が凍り付く。
『チルチル・・・・チルチル・・・・』
『ミコト様!ご無事でしたか!』
『チルチル、チルチルなの?無事だったのね、ああ良かった。』
『はい。私は大丈夫です。ですが、ブルブルは・・・』
『やっぱり駄目だったのね・・・私が咄嗟のことでボーっとしていたばっかりに・・・』
『ミコト様が鞍に仕込んだ生命の玉も発動して何度もブルブルの傷は癒えたのですが、繰り返し刺され続けて、最後には力尽きてしまいました。』
『そうだったの。逃げろって言ったのに・・・・こんな時ばっかり私のお願いを聞いてくれないなんて・・・・』
『ブルブルのこと、どうか褒めてやって下さい。私もホワイトクロー応戦したのですが、数が多く・・・ミコト様が連れ去られてしまったので一旦退避してお探し申し上げておりました。』
『いいのよ。ありがとう、チルチル。あなただけでも無事で良かったわ。』
『痛み入ります。それで、これからどうしましょう?』
『そうね。まずは彼らが何故こんなことをしたのかを追求する必要があるわね。まずはユリウスを見つけて問い質さないと。』
『私はどうしたら良いでしょうか?』
『本当は一緒にいたいけど、どうなるか分からないから目立たないように隠れていて。』
『分かりました。ブルブルの弔い合戦となるときは必ずお声掛けください。』
『ええ、約束するわ。絶対に仇は討つ!一緒にね。』




