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第48話 再び赤竜島へ

ペース遅くなって本当に済みません。

 私の治癒のスキルを試す恐ろしい蛮行が終わった後、我々は乗船して赤竜島へと航海を開始した。


 切られたメイドさんと話をしてみたかったが、残念ながらその機会はまだ得られていない。


 私は王子と一緒が嫌なので与えられた医務室にチルチルとずっと籠っている。


 たまに船酔いが酷い人が来たり、小さな怪我で治療を求める人が来るので、それに対応する以外は仕事もないので黙々とあのくそ王子をぎゃふんと言わせるプランを考える。


 単純に殺す。


 治療や診察と称して体に触ってしまいさえすれば一撃だから問題なく可能だけど、依頼は失敗になるし、大陸中でお尋ね者になってしまうだろう。


 あるいは、離れたところからジワジワと奪って弱らせて殺した場合はどうだろうか?


 やっぱり依頼は失敗とみなされるだろう。


 ではスキルを奪う。


 これは悪くない。やり方は殺すのと同じだし、痛みがある訳じゃないから気付かれることもなさそうだ。


 鼻っ柱を折る。


 うん、これは必須ね。


 殺しても飽き足らないくらいな奴だから、心をズタボロにして生き恥を晒すのがいいかしら。


 我ながら暗い思考だけど、考え出すと止まらないし、色々アイディアが出てきて面白い。


 とはいえ、いつまでも王子苦しめ計画だけを考えているだけなのも何なので、もう一つの気がかりについても思いを寄せる。


 あいつはスキルを持っていた。


 『神速』確かに目にも止まらないスピードで動かれたので一切見えなかった。


 椅子に座っていたところから、立ち上がって剣を取って鞘から抜いてメイドさんを切って私の横まで移動した上で喋ったのはずだけど、一切その動きが見えなかった。


 まともに戦闘になったらどうなるんだろう。


 結界に閉じこもって隙を伺うか、クリムゾンと戦った時のようにダメージを受けて死んだふり作戦をするか、空中に転移してひたすら上空から断界やホワイトクローを連発するか、移動が速いからむしろ圧縮爆発で広範囲攻撃をする方がいいか。


 クリムゾンと戦った際に寸でのところで負けて死ぬところだったので、戦い方や勝ち方に少し工夫が必要だと思い始めていた。


 なので今日予めあいつのスキルが分かったのは大収穫だ。


 鑑定の力も使いこなせばかなり勝率は上がりそうだし。


 それにしても、一体人がスキルを得るのはどういう条件なんだろう?


 私の時はロッソ先生が殺されて、この世界の理不尽に猛烈に怒っていた時だったけど、そんなの奴隷なら皆ありそうだけどなぁ。


 山暮らしなんてあいつはしないだろうから、関係なさそうだし。


 単純に運の問題なんだろうか?


 散り散りの思考で時間を潰していると、いきなりドアが開いて私の思考の渦中の男が入ってきた。


 ゴドリエル隊長とメイドさんも一緒だ。


 狭い医務室は4人の人間でギチギチだ。


 「狭いな、お前たち2人は外に出ていろ。警備ならそれで問題ないだろうし、用があれば呼ぶ。」


 2人は無言で一礼して医務室から出ていった。


 「少し話がしたい。」


 「何でしょうか?船酔いですか?怪我ですか?風邪でもひきましたか?」


 「いや、そうではない。少しお前と話がしたいだけだ。」


 「私は忙しいので、体調に問題がなければお引き取り下さい。」


 「お前、余を王子と知ってそんな口を利くか?不敬罪で斬首されてもおかしくないことが分からんのか?」


 「そうなったらそうなったで全力で抵抗します。」


 「ふむ、やはりか・・・」


 あれ?確かにかなり無礼な発言をしているし、言葉上は結構脅されているのに全く本気で怒っている気がしない。


 むしろ何か考え込み始めた。


 「お前、何者だ?いつそのスキルに目覚めた?」


 「私はエランの町のフリーランスですよ。忘れたんですか?目覚めたのは、半年くらい前でしょうか。」


 「どんな状況だったんだ?」


 「それは秘密です。フリーランスに過去を問うのはマナー違反ですよ。」


 そう、食い詰め物の犯罪者一歩手前のフリーランスなんて過去に碌な想い出がない人が多い。


 家を放逐されたり、元孤児だったりするのが普通だからだ。


 だからお互い過去を聞かないというのが暗黙の鉄則だということはエラル所長に聞いた。


 「何?そうなのか?」


 「常識です。」


 「むぅ。スキルの発現条件を確認したかったのだがな。これ以上は無粋か。おい、今回は誰も見ていないから許すが、以後このような無礼な態度を取ったらその場で叩っ切るからな。」


 そう言い残して王子は出て行った。


 むぅ、スキルの発現条件か・・・要はスキル持ちと普通の人との違いを明確にしたいってことだよね。


 それでスキル持ちを増やしたいってことなのかな?


 逆にスキル持ちを作らないようにしたいってことなのかな?


 うん、まあ意図はよく分からないし、私自身何でかは分かってないから役には立たないと思うんだよね。


 何となくあの時は物凄く怒ってたから、それが原因かなと思ったりもするけど、それならあの王子は一体何に対して怒ったのかっていうことになるしねぇ。


 あんな理不尽に人を切るような人だから、むしろあの王子の周りにスキル持ちが増えるはずだし。


 そもそも、魔物は種族的に固定のスキルを持っているらしいから、その辺も良く分からないよね。


 私は難しいことを考えるのをやめて、私が本当は治癒・回復のスキルだけじゃないって知ったらどんな顔をするかな?


 あいつのスキルを奪って目の前で使って見せたらどんな顔をするかな?


 とかあいつをギャフンと言わせる計画を立てながら船は順調に赤竜島に向かって進んでいった。


 

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