第47話 第二王子
中々毎日更新に戻れなくて本当に済みません。
いよいよこのポートガスに来た元々の目的である第二王子の成人の儀に向けて集合の日になった。
当日まではのんびりとスキルの練習がてらチルチルとブルブルと交代で追いかけっこして遊んだり、狩りや漁に勤しんだ。
海の上を飛んでの漁は着地できないという緊張感があったけど、慣れるととっても楽しかった。
お陰で私の巾着袋の中身は狩った猪やらバッファローやら魚やらがとてつもない量入っている。
しかも、まだ未だにレッドドラゴンのクリムゾンの肉を食べ切ってないので、貯まる一方だ。
ポートガスでは特段お裾分けするほど仲の良い人がいる訳でもないので、エランに帰ったら近所の人とパーティーでもしようかな。
そんな風に平和に過ごしていたらうっかり期日を忘れそうになったけど、紹介所の人が宿に伝言してくれていたので助かった。
朝一番で集合場所の港に行くと、先触れの近衛兵達が王子のための天幕を用意したり、道が通りやすいかどうかの確認をしていた。
ちなみに今日は治療・回復役なので生命の玉の杖を持っている。
所長を見つけたので、声をかける。
「おはようございます。いよいよ今日からですね、よろしくお願いします。」
「おお、ミコトか!おはよう!隊長殿、こちらが今回我々紹介所が自信をもってお勧めする治療・回復役のミコトです。ミコト、こちらが第アラゴルン殿下直属の親衛隊の隊長であるユリウス様だ。ご挨拶なさい。」
「ミコトと申します。精一杯頑張りますので、よろしくお願いいたします。」
「うむ、ユリウスだ。しかし、話には聞いていたが本当にこんな子供で大丈夫なのか?船旅も旅も楽ではないぞ。」
「任せておいて下さい。私は体力も人一倍ありますし、船も漁船の船長さんが乗せてくれて経験済みですから。それに、頼もしい相棒もいますしね。」
そう言ってポンポンとブルブルの首を叩いてやると、ブルブルは嬉しそうに嘶いた。
「むぅ、まあエラル所長の推薦だから間違いはないと思うがな。何しろ今回の赤竜島行きには我々護衛すらついては行けぬからな。」
そう言ってユリウス隊長は悔しそうな顔をした。
護衛も討伐も自分たちを使ってくれたら安全に確実にできるのにと思っているのかな。
「ご安心ください。殿下は必ず五体満足でお帰り頂きます。」
その他簡単な注意事項や依頼内容の最終確認などを終えるころに、アラゴルン第二王子の到着を告げる声がした。
見れば遠目にも豪華な馬車が護衛の兵士に囲まれ、荷物などが積んであるのだろう馬車を何台も引き連れてこちらに向かって来ている。
なるほど、馬車と言ってもこんなにもレベルが違うものかと、その美しい装飾に思わず見惚れてしまった。
私は所長の横で所長の真似をしながら控えておく。
どんな人が出てくるのか楽しみでワクワクする。
馬車が止まり、兵士によって列が作られて扉が開かれ、身の回りの世話をするのだろう女性に続いて体格の良い男性が出てきた。
私としては煌びやかな装束を着た人をイメージしていたのだけど、武装した戦士という感じだった。
隣で所長が「あれはミスリルプレートか・・・?流石殿下だ。」と呟いている。
ミスリルプレートって何だろう。
後で聞いてみよう。
静寂の中波の音だけが響く港を無言で王子様一行は場所を降り、そのまま天幕に入っていった。
行列を作っていた兵士たちは天幕を囲うように護衛の配置につき、中に入ったのはユリウス隊長と身の回りの世話をする使用人の女性たちのみだ。
所長も私も外で待ちぼうけ。
気が付くと船長も近くで一緒に控えている。
聞いている予定ではこれから身の回りの世話をする奴隷と私のみを連れて船で行く。
船員の護衛を兼ねてゴドリエル隊長他兵士も同乗するが、あくまでも船員の護衛という建前なので赤竜島での探索中は留守番になる。
レッドドラゴンの強さを身をもって知る私としては真面目に滅茶苦茶なプランだとは思うけど、事前調査も戦ったことも秘密なので余計なことは言えない。
というか、むしろ私とは関係ない。
私はあくまでも王子を生かして帰還させれば良いわけだし、そもそもの今回の依頼を受けた最大の動機は王族に触れて良く知りたいということだ。
「ミコト、中に入れ。」
ユリウス隊長が天幕から顔を出して私を手招きした。
ちらっと所長の方を見ると、黙って頷かれたので中に入る。
中に入ると真ん中にアラゴルン王子が腰かけていた。
教えられた通りに片膝をついて頭を下げる。
これも仕事だから我慢だ。
「お前が今回私についてくることになった治療師だな。来るしゅうない、表を上げよ。」
「はい、エランの町のフリーランス、ミコトと言います。」
「ふむ、聞いていた通り子供だな。腕の方は確かなんだろうな?此度のドラゴン討伐は余と奴隷のみで行くつもりだったのだが、どうしてもというので治療・回復役に限って追加で雇うことになったのだ。半端な腕では許さんぞ。」
「はい。レッドドラゴンのブレスで消し炭にされない限りは御身とご随行の方々のお体については私にお任せ下さい。」
「ほう、大きく出たな。」
王子はニヤリと笑うと、次の瞬間姿がブレて、メイドさんがお腹を抑えながら崩れ落ちた。
「?」
王子はいつの間にか私の隣に立ち、倒れたメイドを指さしている。
「治してみろ。」
何が起こったか分からなかった。
いや、分かったが、見えなかったというのが正確かな。
恐らく王子は目にも止まらない速度で剣を抜いてメイドの腹を切り裂き、剣を鞘に納めて私の横に移動したのだろうけど、その動きは全く見えなかった。
とにかく、そんなことよりもメイドさんの治療だ。
駆け寄って仰向けに寝かせると、お腹が横にスパッと切られて、そこから内臓がはみ出ている。
まだ息はあるけど、確実に致命傷だろう。
すぐさま杖の先の生命の玉を傷口に当てて治療を開始する。
淡い光と共にはみ出た内臓は中に納まり、傷は消えていく。
相当な血を失っているだろうから、そこもきっちりと元に戻すために生命の玉の力を注ぎこむと、メイドさんは血色も良くなり、お腹も元通りになった。
服は流石に直せないけど、兎に角助かった。
いや、ホッとしている場合じゃない!
「ふむ、驚いたな。凄まじい治療の力だ。確実に致命傷だったはずなのだがな。」
「何をするんですか!?死んじゃったらどうするんです!?」
「そうだったらお前を能力詐称で斬っていたな。」
「な・・・・!」
「それに、奴隷は余の持ち物だ。持ち主が持ち物をどのように扱っても構うまいよ。」
「・・・・・」
頭が沸騰して言葉も出せない。
思い切り睨みつけていると、鑑定のスキルの効果なのか王子の情報が頭に伝わってくる。
名前:アラゴルン
性別:男
年齢:15歳
職業:王国第二王子
スキル:神速・・・目にも止まらない速度で動くことが出来る。副次的に動体視力もその動きを妨げないレベルで上がる。
スキル持ちだ。
私以外のスキル持ちの人間は初めて見た。
驚きで沸騰していた頭が少し冷えていく。
「ふん、やや反抗的ではあるがスキルの方は問題ない。同行を許そう。」
私は無言で頭を下げた。
私の方はこの行いを許してやるつもりは全くないが、あの速度は脅威だ。
機を待とう。
森での狩りと同じだ。
潜んで機を見て一気に狩る。
この報いは必ず受けさせる。
私の王族への印象は元々奴隷制度を敷いている時点でマイナスだったが、これで更にふっきゅ不可能なほど下がったのだった。




