第44話 レッドドラゴンとの遭遇
岸壁を登るのは正直全く問題なかった。
流石にブルブルには留守番してもらったけど、チルチルは常に私の周りで飛び回って周囲を警戒してくれる。
軽い身体は強化された腕や指の力をもってすれば何の苦にもならない。
そして、下を見て皆が点にしか見えなくなったところで一気に瞬間移動に切り替えて見える限りの最高の場所に瞬間移動し続けたらあっという間に山頂を超えた空に到着した。
そこから見下ろした景色は想像を絶するものだった。
山だと思っていた岸壁は、山というよりもその名の通り壁というのが正しいのだろう。
丸い岸壁の中央部は窪んでいて、そこには湖も森林もある。
そして、その中にはレッドドラゴンが大小沢山棲んでいたのだ。
岩壁の淵に着地した私は、暫くその光景に見とれていた。
壁に囲まれた不思議な土地、そこに棲むレッドドラゴン。
空を飛ぶ姿は優雅そのもので、湖で水を飲むもの、湖畔で日向ぼっこでもしているのか寝ているもの、数にして恐らく20匹程度だろうか、まさにレッドドラゴンの楽園というが一番しっくり来た。
『凄いねぇ、チルチル。強そうだし、カッコいいし。。。』
『はい、私も圧倒されてしまいます。』
『ブルブルにも見せてあげたいな。よし。』
強化された視力でブルブルの位置を特定して、よっと。
『わ!?え?あ!?ミコト様、チルチル?・・・ってあれがドラゴン・・・!』
『びっくりさせちゃってごめんね。でも、ブルブルともこの雄大な景色を一緒に見たかったの。』
『ありがとうございます。驚きましたが、地面に足がついているから大丈夫です。それにしても、ドラゴンがこんなに・・・・凄まじいの一言に尽きますね。』
『ええ、本当に・・・』
私たちがドラゴンの棲み処をうっとりと眺めていると、1匹の大きなドラゴンがこちらに向かって飛んできた。
ゆっくりとした飛び方だったし、いきなり攻撃してくる感じはなかったけど念のために私たちの周りに結界を張って警戒しておくことにした。
果たして、ドラゴンは私たちを見上げる高さまで上がってくると、静かに停止してじっくりとこちらを観察するようにじっと見つめてきた。
近くで見るレッドドラゴンの迫力は物凄かった。
大きな翼を広げた大きさは山と見まがうほど大きく、手足や口に無数に生えている爪や牙は一本一本が私の体ほどもある。
前身は赤く、前足の太さは大きな大人の全身を遥かに超え、足に至っては更にその比ではない。
太ももはもう大樹と言って差し支えない太さだ。
果たして攻撃を仕掛けてくる様子はないが、目を離せないし離さない。
『ふむ、お主達念話ができるのか。いったい何をしに来た。我らに何か用か?』
突然のドラゴンからの念話に驚いたが、会話できるなら是非とも話してみたい。
ドラゴンと話した人間なんて絶対初めてだと思う。
『えっと、初めまして。私はミコト、こっちはチルチルとブルブルで私の仲間です。依頼によってドラゴンの生息状況を調査するように言われてきました。』
『ふん、嘘はついていないようだな。人間がこの地を訪れるのは果たして何百年ぶりか。我らを狩ろいうという訳ではないのだな?』
『ええ、私たちにその意思はありません。ただ、しばらく後に王家の王子があなた達の誰かを狩りにやってきます。』
本当なら今回の目的は偵察なのできっとこうして見つかっていることも会話していることもマズいのは分かるけど、圧倒的な光景に気配を消すのを忘れてしまったし、念話で会話ができてしまえるし、何より見透かすような視線の前に嘘などつく気が起きない。
『ほほう、そんなことまで正直に話すとはな。』
『何となくですが、嘘をついても無駄なような気がしています。』
『うむ、見事だ。我らドラゴンは『鑑定』のスキルを持っているのでな、嘘などつくだけ無駄なのだよ。そして、そなた達が念話を使えることも、変わったスキルを多数使えることも分かっている。』
『そうだったんですね。良かった。』
『嘘をついた瞬間にブレスで消し飛ばそうとしていたのだが、不要だったな。それでどうすのだ?もう帰るのか?』
『一応依頼は果たしたことになるので本当はそうするべきなんでしょうけど、時間的には余裕があるので良かったら色々お話させて頂けませんか?』
『うむ、構わんぞ。我々としても外界の話を聞くのも楽しそうだ。では、こんなところでは落ち着かんし、他にも話を聞きたいものもおるだろうからな、そこの広場で話すとしよう。』
『分かりました。あそこですね、では直ぐに参りましょう。ブルブル、乗せてくれる?』
来る方も対外な断崖絶壁だったが、内側も外ほどではないがそれなりの急斜面だ。
それをブルブルはものともせずに一気に駆け下りてくれる。
ドラゴンは咆哮を上げて一息に飛んで広場に移動した。
咆哮で空気は震え、飛ぶスピードも先ほどとは比べ物にならない程速かった。
果たして王子は一体どうやってこんな相手と戦う気なのだろうか?
そんなことを思いながら、ブルブルにしがみついていると、崖を降り切った。
その後はチルチルによる上空からの方向指示に従って森の中を走っていった。
『ミコト様、凄い数のドラゴンが広場に集結しています。』
『そう、襲う気はないと思うけど気は抜かないでね。』
広場に着くと、真ん中に大きな岩があり、それを取り囲むようにレッドドラゴン達が座っていた。
大小取り揃えて23匹、島中のドラゴンが集まったようだ。
岩の上に登って腰かけると、先ほどのドラゴンが声を上げた。
『小さきものよ、皆が珍しがって話を聞きたいようだ。』
『分かりました。改めまして私はミコトと言います。皆様にお会いできてとても光栄です。』
『おお、本当に念話が使えるのだな。』
『小さいな~』
とか、色々聞こえてくる。
皆私に興味津々なようだ。
もちろん、私だって興味は尽きないけどね。
早速、お互いの好奇心を埋めるための会話が始まった。
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