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第23話 初仕事4

 何事もなく昼過ぎには鉱山に着いたので護衛役が周囲を警戒している間に鉱夫の指示で奴隷達がせっせこ石を掘り出しては荷車に積んでいく。


 ハッキリ言ってメチャクチャ重労働だと思う。


 2人の鉱夫は鞭を持って作業を監視し、奴隷達は黙々と重労働をこなす。


 故郷での光景と作業内容が変わっただけでおんなじだ。


 暴れて彼らを解放しようかとも思ったけど、ハンスおじちゃんを始めロジンパックの面々は私に優しいので巻き添えにするのは忍びない。


 何が正解か分からないまま、黙々と作業する彼ら守るためにジッと周囲を見ていた。


 「チチチチチ~~!!」


 森の方を飛んでいたチルチルが高い鳴き声を発しながら一目散に私のところに飛んできた。


 「何か襲ってくるの?」


 「チチ!」


 「みんな!今からここは襲われるから気を付けて!」


 「嬢ちゃん!本当か?」


 ハンスおじちゃんが血相を変えて問い詰めてきた。


 「ええ、チルチルが報せてくれたの。何が来るのかは分からないけど、用心して。」


 「分かった!戦闘員以外は全員山の坑道に入れ!念のための護衛としてジン・ロンは坑道内部を警戒!兵士達には行動の入り口の警護をお願いしたい!残った我々は坑道の入り口を中心に扇形に展開して迎え撃つぞ!」


 流石護衛になれているロジンパックのリーダーだけあって、ハンスおじちゃんの指揮は早くて適格だ。


 「おう!」


 皆も流れるような動きで展開して鉱夫と奴隷達の避難誘導が瞬く間に完了。


 私がハンスおじちゃんの隣で突っ立っている間に入り口を覆うような陣形が出来上がっている。


 「ミコトは俺と一緒に弓で全体を満遍なく支援しながら回復に勤めろ!」


 「うん!分かった!」


 こうして陣形が出来てから程なくして、周囲の木々の間からそれらは顔を出してきた。


 「フォックスハントだ!こいつらは連携して動くぞ!一匹に気を取られ過ぎるな!」


 ぞろぞろと姿を現す魔物『フォックスハント』。


 その数はゆうに20匹を超えている。


 その体格は普通の狐を一回り大きくしたように大きく、陣形を組んでいるこちらを警戒するようにゆっくりと周囲に展開しながら近付いてくる。


 「前衛は槍を中心に牽制に専念!俺とミコトで弓を使って仕留める!」


 言うが早いかハンスおじちゃんの矢が大きく弧を描いて先頭を歩く狐に襲い掛かるが、惜しくも狙いは外れてしまった。


 しかも、攻撃を仕掛けられたことに怒ったのか身を屈めて突撃する体勢を取っている。


 あれは山で狐が獲物を狩る体勢にそっくりだ。

 

 「来るぞ!」


 一匹が物凄いスピードで突進してくる。


 前衛の槍使いが切っ先を向けて牽制するも、穂先をするりと躱して槍の柄に食いついた。


 槍が振り回せなくなったところで後ろからもう一匹が飛び掛かる。


 咄嗟に槍から左手を離して顔の前を庇うように腕を突き出すと、ガブリ!とフォックスハントが腕に噛み付いた。


 「う、ぎゃあ~!!」


 と叫び声を上げた槍使いは思わず右手で持っていた槍から手を離し、左手に噛み付いたフォックスハントを素手で殴りにかかるが、あっさりと離れたフォックスハントに躱されてしまう。


 その隙に槍に噛み付いていたもう一匹が地を這うように近付き、空振りした右手に食らいつく。


 私はそこここで繰り広げられる死闘に呆然としてしまった。


 すると、ハンスおじちゃんの怒号が飛んできた。


 「お嬢!お前護衛だろう!ここで俺らがやられちまったら中の奴らが皆死ぬんだぞ!出来ることをやれ!」


 「はい!」


 初めての集団戦闘の雰囲気にちょっと飲まれていたが、私だって山ではクローベアー達を相手に渡り合ってきたんだ。


 さっと周囲を見回してみると、先ほどの槍使いが最も苦戦しているし、大けがをしているので弓を捨てて走って近付く。


 生命の玉によってで強化されている私はあっという間に間合いを詰め、槍使いの右手にくらいついていたフォックスハントに向かって左手を無言で当てがって『生殺与奪』を発動させて絶命させた。


 そして、パンチを躱して距離をとった一匹と槍使いの間に入って左手で剣を構えた。


 そして、空いている右手に出現した生命の玉とスキルの玉の内、スキルの玉を巾着袋に押し込んで生命の玉を倒れている槍使いの体に適当に押し込んでいく。


 フォックスハントから目が離せないので手探りだ。


 「うう、手が・・・手が・・・って・・・あれ?」


 「ほら、治ったでしょ?早く武器を持って!私は他のところにフォローに行くわ!」


 「お嬢ちゃんか!助かった!もう不覚は取らんぞ、任せておけ。」


 戦線に復帰した槍使いにその場を任せて一旦中央に下がると、フォックスハント達も何故か距離をとっていた。


 「良くやってくれた!まさかここまでの回復のスキルとは思わなかったぜ!それよりもマズいな、奴ら陣形を変えてやがる。嬢ちゃんを脅威と見破って一点突破でここに攻め入ってくるかも知れん。」


 「凄く賢いのね?」


 「ああ、あいつらは頭がいい上に意思疎通ができるっぽくてな、連携が恐ろしくいいんだ。」


 確かに最初に私達を囲い込むようにしていたフォックスハント達が三角形のようになって全員でこっちに向かって突撃体勢をとっている。


 そして、一糸乱れぬ動きで一気に私に向かって突撃してきた。


 ハンスおじちゃんと私も矢を撃って先頭の2匹の頭を貫いたが、後ろに控えていたフォックスハントが前に出てきて陣形を回復させ、前衛の槍使いを吹っ飛ばして凄い速度で襲い掛かってくる。


 ハンスおじちゃんが2の矢をつがえて私の前に立って庇うようにして立って矢を放った。


 矢は狙い違わず新たに先頭になったフォックスハントの右目を貫いて即死させたが、勢いは止まらない。


 ハンスおじちゃんは至近距離に詰められたので剣を抜いて応戦しようとしたが、フォックスハントの突撃に吹っ飛んだ。


 本当はあんまり人前で使いたくはなかったけど、背に腹は代えられないので、私は横薙ぎにホワイトクローを放った。


 ドシュ!!


 という音と共に前半分のフォックスハントが肉塊と化した。


 後ろから突撃してきていた連中もその死骸に足を取られて転んだり止まったりした。


 その隙に私は前に出て小回りの利くショートソードで2匹のフォックスハントの首を飛ばした。


 ロジンパックの面々も今度はフォックスハントの後ろから回りこんで突撃してきたことで、前後を挟撃されることになったフォックスハントは混乱に陥った。


 私は前側の壁として近付くフォックスハントを斬ったり生殺与奪で息の根を止めたりして持ち場を死守した。

 

 そして、気が付いたときには周囲には動くフォックスハントはいなかった。


 疲労でショートソードを持つのも辛いし、あちこち爪で傷つけられていたので、生命の玉を1つ取り込んで回復。


 周囲を見るとハンスおじちゃんや吹き飛ばされた前衛の槍使いの2人が倒れたままになっている。


 慌てて駆け寄って生命の玉を押し込んでいくと、幸いまだ息があったのかすんなりと身体に取り込まれて3人とも回復していった。


 ロッソ先生のことを想い出してパニックになりかけていたが、無事に全員生き残れたことに心底ホッとした。


 こうして、初めてのことでかなり戸惑うことも多くて失敗だらけだったけど、犠牲者を出さずに済んで本当に良かった。

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