第21話 初仕事2
初日は休憩を挟みながらも何事もなく進むことが出来た。
特に魔物や危険な動物に襲われることも無く、予定通りの野営用の広場で夜を過ごすことになる。
このルートは当然ながら日々使われているのでスポットスポットにこうした野営場が設けられているらしい。
野営場と言ってもせいぜい草を刈って平地になっている広場に気持ち柵がある程度だ。
特に管理人がいる訳でもなく、使用した人が少しだけ帰り道に改善して帰る、という暗黙の了解で成り立ち、今に至っているのだとか。
食料は各自持参なのだが、共同で使えるように火を熾したり、夜の見張りなどはロジンパックのリーダーのハンスおじさんが仕切ってくれるので従うだけだ。
薪を拾って集めて数か所で火を熾す。
私は干し肉を焙ったり薪拾いのついでに採ってきた木の実を摘まんだりして簡単な食事で済ませた。
沢山寝られるようにとの気遣いからか最初の見張りに組み入れてもらったので、持ち場について警戒を開始する。
夜目のスキルがあるから暗くたって問題ない。
たまにチルチルを飛ばして異常があれば簡単な方向だけなら教えてもらえるので、持ち場以外の全方位を一応警戒しておく。
いつでも矢が打てるように弓を左手に持った状態で待機していたが、何事もなく交代の時間を迎えたので、眠ろうかとも思ったが生命の玉で強化されているのであまり疲れてもいなかったし、山の中に入ると落ち着くのでこっそりと中に入って行ってみることにした。
さっき薪を採りに行ったときにも感じたことだけど、山の中ややっぱり落ち着くし、生命の玉の補充に食料の調達なんかも簡単にできる。
久しぶりに左手の力を解放して生命の玉を沢山作ってバッグに入れておく。
今回は回復のスキルを期待されているので、数は大いに越したことはない。
ラッキーなことに途中で大きな鹿を見つけたので新たに買った弓矢で射たら一発で仕留められた。
矢の威力が抜群に上がっている。
これが以前の木の弓だったら力に耐え切れずに弓が壊れていただろうから、新調して良かった。
早速血抜きをしていき、新鮮なうちに塩を振って数切れのお肉をナイフで削いで食べる。
やっぱり干し肉もいいけど生肉は力が漲る気がする。
明日の晩餐の足しにしてもらおうと肩に担いで野営の地に帰ろうとしたとき、チルチルが凄まじい声で鳴き始めた。
「チルチル、どうしたの?」
と暢気に問いかけた時、左足に激痛が走った。
慌てて足を見ても何もいないが足に穴が2つ空いて出血している。
咄嗟に左手で傷口の近くをまさぐるとざらりとした手ごたえがあった。
「奪う!」
叫ぶと同時に体から痛みが消えて傷口が塞がっていく。
そして、左手の先には太い蛇が息絶えて転がっていた。
カメレオンスネークだ・・・姿を隠して毒の牙で襲い掛かる強力無比な山の暗殺者。
生殺与奪のスキルがなかったら確実に死んでいた。
予めハンスおじちゃんに教えてもらっていたからこそ迅速に対応できたというのもある。
ドッと噴き出す冷や汗に改めて山の怖さを思い知った。
これ以上の夜の山での散策は危ないと思ったので右手にできていたスキルの玉と小さ目の生命の玉を巾着袋に突っ込み、カメレオンスネークを首から掛けて、肩に鹿を担いで急いで山を下りた。
山を下りて野営地に戻ると、見張りに驚かれたけど間違えて襲われることなく中に入れてもらった。
緊張感で流石に疲れたので油紙に包まって体を冷やさないようにしながら鹿と蛇を枕に眠りに落ちた。
もちろん、眠る前に新たなスキルの玉を使ってスキル『迷彩』を覚えるのは忘れなかった。




