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第15話 旅立ちと旅の仲間

 さて、力も物資も知識もある程度手に入ったところで今後の方針を改めて考えよう。


 元々の予定ではサラヘの町へ行って『町の人』の生活を味わいながら色々なことを知っていこうと思っていた。


 でも、知識の玉のお陰である程度の先行知識は手に入ったし、そこから分かったこととしてロッソ先生がクローベアーに殺されたことはかなり話題になっているということ。


 私も先輩方にお願いして死んだことにしてもらっているし、そこへクローベアーの毛皮から作られた服を着た私が登場したら絶対に騒ぎになりそうだ。


 まして今頃は5人の兵士もクローベアーの犠牲になったという話が出ているはずだから、余計にそうだ。


 そう考えると、この町には行かない方が無難かしら。


 やっぱり近くの別の町を目指した方が良さそうね。


 そして、とにかく色々経験を積んでから考えましょう。


 ミコトは1人でブツブツと考えている。


 10歳の元奴隷としては異質なほど知恵が回るのがスキルを発現する前からのミコトの本来の特徴の1つだ。


 そんなミコトであるから、あえてスキルでゴリ押しして全てを薙ぎ倒そうとは考えていない。


 色々な知識を得たとはいえ、それはあくまで兵士目線の知識であり、この世界にはもっと色々な立場の人が居ることを知った以上、余計に慎重になっているのだった。


 幸い、この国の簡単な地図も頭に入ったし、ここ以外に沢山の役目を担う町や人というのも見てみたい。


 ミコトが地面に枝で地図を描いてみたら、結構うまくかけた。


 流石兵士達ね、地理に明るいことは絶対条件みたいだからラッキーだったわ。


 ここから一番近い町は工業の町『エラン』っていうところね。


 山を超えれば直接街道に出られそうだから、そこから歩いて大体7日くらいかな。


 兵士の足で7日っぽいから私がどれ位で行けるか実際のところは分からないけど、まあ行ってみましょう。


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 それから私は、兵士から奪った背嚢の食料を確保して、生れ育った町と奴隷の里を離れて工業の町『エラン』に向かうため、山を越えて街道を目指した。


 途中で魔物に襲われたりすることはあったが、『生殺与奪』と『ホワイトクロー』の前に敵ではなく、むしろミコトに食料と毛皮や骨・牙等のお金になる素材、そして何よりの生命の玉とスキルの玉を献上しているようなものだった。


 大きな収穫としては、夜に襲われた夜行性の鳥の魔物オウールを倒した際に獲得したスキル『夜目』により、暗いところでも良く見えるようになったので休憩を取りながら昼夜連続で動けるようになったこと。


 これで活動可能時間が一気に広がった。


 また再び、クローベアにも襲われたが、お株を奪うホワイトクローで牽制しての生殺与奪による一撃必殺によりホワイトクローの玉を2つ追加で手に入れた。吸収してみようと試したが、既に習得しているせいか自分では吸収できなかった。


 もちろん、捨てるのも勿体ないので取り敢えず持っていることにした。


 そして、道なき道を超えて4日後にようやく街道を見つけることが出来た。


 日は既に傾きつつあるので、旅人は既に野宿の準備を終えた頃だろう。


 しかし、夜目の効くようになったミコトにとっては大した問題ではない。


 僅かな月明かりしかない漆黒の闇の中を、黙々と歩いていった。


  --------------------------------------------



 街道は草原に流れる小川に沿ってくねくねと曲がっている。


 町と町の距離はかなり離されている。


 町には町の単独の機能が課せられていて、サラヘは食料生産・エランは工業などと言った形だ。


 この分業制により物流も必須になるので町と町は有機的に繋がっているのだが、距離を離されている分物流コストがかかるので、どこも財政事情は似たり寄ったりと言ったところらしい。


 なんでも町同士の対立や、町同士が結束しての国家への反乱がしにくいようにするために離されているのだそうだが、結局国民に苦労を強いている辺り、やはり王家って碌なもんじゃなさそうな印象が強まってしまった。


 しかも、旅が長期化するために旅商人という流通を担うものが護衛を雇うのだが、半数以上は国軍の兵士を使うことが義務付けられているため、その護衛料でも国家は収益を上げているという。


 ただ、本当の本音としては兵士知識によれば元々各都市は独立した国家だったのを征服していったので、独立運動を未だに恐れている節があるようだ。


 そんな背景は私にはどうでもよい。


 距離が離れているということで長期化する旅なので、旅の安全等を支援するために道は水場の近くを通りように設計されているので川に沿ってくねくねとした道が続いているという訳だ。


 これだけでも飲み水の運搬というコストからかなり解放されているので、とても旅する環境としては良い。


 中にはどうしても川沿いを通れない場合もあるが、その際にはポイントポイントに井戸を掘ってある。


 その井戸のメンテナンスは旅商人達が使用する度にすることになっているので、ゴミが溜まることも汲み上げ用のロープなどが劣化し過ぎることもない。


 そんな訳でミコトが喉を潤しつつ空になった水筒に水を補充しようと川辺に下りていくと、岩場に弱った小鳥を見つけた。


 小鳥はカワセミのように綺麗な毛並みで、月明かりをそのエメラルドの羽が反射して、まるで宝石のように美しかった。


 しかし、まだ辛うじて生きてはいるが、ピクピクするばかりなのでもう飛ぶこともできないのだろう。


 後は黙って死を待つか大きな鳥か動物に食べられるのを待つのみといった状態だった。


 「あんた、こんなところでどうしたの?」


 思わず話しかけてしまった。


 「こんなところで会ったのも何かの巡り合わせよね。あんた運が良かったわ。私が治してあげる。」


 小さな虹色の玉を取り出してそっと押し当てると、玉は光を放ちながら静かに小鳥の体に溶け込むように吸収されていった。


 「チチチチチチチッ!」


 元気になった小鳥は澄んだ鳴き声で鳴き、私の手の平で体を起こしてキョロキョロと周りを見回している。


 「元気になって良かったね。」


 さっさと飛んで行ってしまうだろうと思って、話しかけた。


 「チチチチッチチチッ!」


 すると、鳥はまるで返事をするように鳴き、一向にどこかへ飛び去る様子はない。


 そう言えば鳥は夜あまり目が見えないんだっけ、と兵士から吸収した知識が教えてくれる。


 それじゃあ、とオウールから頂いたスキル『夜目』を小鳥に押し込む。


 「どう?これで良く見えるようになったでしょ?気を付けていくんだよ。」


 小鳥は驚いたように周囲を見回していたが、飛びあがると、まるでありがとうを言うように私の周りをクルクルと飛び回り、何と最後には私の右肩に停まった。


 「あれ?一緒に来るっていうの?1人ぼっちは寂しいから、私としては嬉しいよ。よろしくね。」


 こうして、私に旅の仲間が加わった。


 「お前の名前は・・・・・・チルチルでどうかな?」


 「チチチチチチチ!」


 なんか嬉しそうに羽ばたいてる。


 「うん、じゃあチルチルに決まりだね。それにしてもまるで私の言っていることが分かっているみたい。賢い子なんだね。」


 「チチチ」


 私が何か話すと、相槌を打つように鳴き返してくれるので、結構話し相手にはなってくれている。


 その時ミコトは実に久しぶりに微笑んでいたのであるが、本人がそれに気付くことはなかった。


   --------------------------------------------

 (ミコトステータス現状)

 性別:女

 年齢:10歳(数え)

 職業:なし(旅人)

 スキル:生殺与奪、ホワイトクロー、夜目

 技能:弓術、槍術、剣術、解体、料理、識字、習字、算術

 装備:クローベアーの毛皮の服、ナイフ、木の弓矢、兵士の槍、兵士の剣

 所持品:皮のお手製バッグ

      干し肉、塩、その他木の実・野草少々

      油紙、紐、皮の水筒、火打石、ロープ

      オウールの羽、爪、その他各種魔物動物の素材

      兵士の巾着袋(金貨が10枚に銀貨が25枚に銅貨が15枚)

      生命の玉、スキルの玉(ホワイトクロー×2、夜目×1)

 (チルチル)

  性別:メス

  種族:カワセミ(綺麗な羽と声が特徴、川の宝石と呼ばれ、貴族にも人気が高い)

  スキル:夜目

  ミコトに助けられて懐いた

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