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第13話 更なる成長

 「はあ、はあ、はあ、やった・・・やったわ・・・」


 眼下に息絶えて倒れ伏す5人の兵士を見下ろしながら、ミコトは高揚していた。


 しかし、一方でどこか冷めてもいた。


 自分が勝手にロッソの仇と決めた兵士であり、過去の非道の象徴でもある兵士達を倒し、殺したのだが一向に気分が良くならないのだ。


 武器を持つ兵士5人を倒したこと。


 相手が恨みを持つ復讐対象だったことから、その達成感が増していた。


 それは確かに事実だろう。


 しかし、それは力を証明できたということに過ぎず、過去の恨みが無くなった訳でもロッソを喪った悲しみを消してくれる訳でもなかったのだ。


 しかし、右手に握られた3種類の玉。


 生命の玉は分かるが、新たに緑色の玉と赤色の玉が出現しているのには驚いたが、これも新たな力に繋がるのだろうと思うとようやく笑みがこぼれた。


 「お、おい・・・お前一体何をしたんだ?」


 恐る恐る先輩守護の役目の男が声をかける。


 「何でもありませんよ。ただ、私のことを弄ぼうとしていたみたいなので身を守ったに過ぎません。」


 「いや、そりゃ分かるけどさ?武装した兵士5人を手も触れずに倒すっておかしいだろ?っていうか兵士に手を出したことがバレたら俺たちは終わりだ!なんてことをしてくれたんだ~!」


 「落ち着いて下さい。まだ1人しか殺してないですし、こいつらはクローベアーが出たという報せを受けて見回りをしていたんですよね?それなら、クローベアーに殺されたことにしたらいいんじゃないですか?」


 「いや、そりゃ無理があるだろ?傷一つ付いてないんだぜ?」


 「ご心配なく、ほら、こうしておけば・・・えい」


 ミコトが倒れた5人に向かってホワイトクローを放つと、鎧をものともせずに兵士達は切り裂かれた。


 「な・・・・」


 男たちは最早言葉も出ない。


 硬直している先輩達を尻目に、ミコトはバックに玉を入れて兵士達の所持品を確認していく。


 5人分の巾着袋に槍と剣と剣帯を回収したが、鎧は重いしサイズが合わないしボロボロにしてしまったので放置。


 動物の皮を剥いだりして素材をゲットするのと同じ感覚で淡々と作業を進めているミコトに男たちは戦慄する。


 一通り確認が終わったところでミコトは先輩たちに向き直った。


 「そういう訳ですので、町への報告はお願いします。私のこともここで一緒に死んだことにしといて下さい。」


 ミコトが真面目な顔で頭を下げる。


 「わ、分かった・・・誰にも言わないし、言ったところで誰も信じない。俺自身この目で見ても信じられないんだからな・・・」


 「ありがとうございます。先輩方に手を出さずに済んで私も良かったです。まだ私はこの先どうすればよいかを決めかねているところだったので、余計な邪魔をされる訳にはいかなかったもので。」


 「お、おう、、、、(マジか、こいつ口封じに俺らを消すつもりだったのか・・・)」


 「あ、奴隷の印のお話ありがとうございました。取り敢えずはコレを消す方法を考えることにします。」


 そう言ってミコトは下山してきた山を再び奥に向かって歩き始めた。


 ・

 ・

 ・


 「ぶっは~!!」


 ミコトの姿が見えなくなると、硬直していた男達が大きく息を吐いて我に返った。


 「おい!お前、あれを見たか?一体ミコトの奴どうしたってんだ?」


 「俺が知るかよ!こないだまでただ弓が上手いだけのロッソにべったりの小娘って感じだったのに、まるで人が違ってる!それにあの力・・・バケモンだ・・・・」


 「んで、どうするよ?」


 「どうって?町に下りてあいつに言われた通りに報告するしかないだろう?」


 「そうだよな、それなら信憑性あるし、俺らも罰を受ける心配もない。」


 「おう、全部クローベアーのせいにしときゃあどさくさで何とでもなるだろう。」


 こうして、守護の役目の先輩方の保身のお陰で、ミコトは『兵士殺し』という大罪を犯したにも拘わらず町には一切露見せず、かつ死んだことになったので、本格的な自由を手に入れたのだった。


 先輩方の苦悩を気にするでもなく、ミコトはまた山の奥に入っていた。


 そこにはいつもと変わらない静寂があった。


 何だかんだ言ってミコトにとって山は一番落ち着く場所である。


 火を熾して持っていた兎の干し肉を焼き、塩を振って食べた後に途中で採った甘い木の実を食べてお腹一杯になったところで少し状況を整理する。


 ようやく千々に乱れた心持が落ち着いてきたので、頭の整理もかねてまずは所持品の確認を開始した。


 --------------------------------------------


 (ミコトステータス現状)

 性別:女

 年齢:10歳(数え)

 職業:元奴隷(守護の役目)・・・現在失踪中扱い(報告が終わると死亡扱い)

 スキル:生殺与奪、ホワイトクロー

 技能:弓術 LV3、解体、料理

 装備:クローベアーの毛皮の服、ナイフ、木の弓矢、兵士の槍、兵士の剣

 所持品:兎の干し肉、兎の毛皮、塩、その他木の実・野草少々

     油紙、紐、膀胱の水筒、火打石、

     クローベアー皮のお手製バッグ

     生命の玉(大)(中)(小)(極小)各多数

     緑の玉 1個

     赤の玉 5個

     兵士の巾着袋×5、兵士の雑嚢×5


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 あいつらから奪った荷物は結構重かったわね。


 生命の玉で体が強化されていなかったら確実に途中で放り投げていたわ。


 とにかく中を見てみようと思って背嚢や巾着袋の中身をぶちまけて確認していく。


 背嚢の中身は殆ど私が持っているものと変わらないわね。


 それは旅の必需品だった。


 食料と水と野営用の道具が数点といったところか。


 一方で巾着袋の方には何やら金銀銅と3色の色をした丸くて平べったいものが入っていた。


 「??何かしらこれ?凄く綺麗だし、表面の絵も凄く素敵。あんな乱暴な人がこんな綺麗なものを持っているなんて、似合わないわね。」


 もちろん、それは金貨・銀貨・銅貨であり、巾着袋は兵士達の財布だったのだ。


 職業軍人であった兵士にはもちろん賃金が支給されていた。


 兵舎に住み、配給で食事を食べられる上に奴隷を犯して性欲を処理していた男はかなり貯め込んでいた。


 しかし、銀行もなければ相部屋の兵舎に全財産を置きっ放しにする訳にもいかず、持ち歩いていたのだ。


 もちろん、酒も飲みたいし本気で女を口説くのに金を遣うことだってあるので賃金を丸々貯めていた訳ではないが、結構な金額だった。


 しかし、ミコトは元々奴隷出身で、中でも街で暮らしたことも無い山暮らしだったので一切お金というものを知らなかった。

 

 物々交換の概念は仲間と行ったりしていたので知っていたが、通貨制度を始め、一般市民以上の常識というものは一切持ち合わせていなかったのだ。


 これは奴隷として必要なことは『従うこと・逆らわないこと・奴隷であるのは自分たちの責任であること』だけを徹底していれば困らないため、教えられてこなかったので、ミコトの責任ではない。


 「う~ん、あいつらがわざわざ山の中にまで持ってくるものなんだから大事なものなんだろうけど、良く分からないわね。」


 綺麗は綺麗なんだけど、何の役に立つのか全く想像もつかないので、取り敢えず放っておこう。


 「それよりもこっちよね。」


 私は新たに手に入れた緑の玉と赤色の玉を手の平で転がして眺めてみた。


 「青い玉はスキルだったから、今度は何か違うものが身につくのかしら?それとも何かいい別のスキルかしら?あの兵士達も実は結構強かったのかな?でも、2色ある理由が・・・・」


 散々悩んだミコトだったが、これまで玉が自分を傷つけたりしたことはないし、迷っていても仕方がないのでさっさと試すことにした。


 まずは数の多い赤い玉を5個、順番に一つずつ胸に押し当てるようにすると、静かに吸収されていった。


 数が多いものを使った理由は何となく影響が小さそうだったから。


 「う~ん、なんかいまいち何かが変わった実感はないわね。」


 体を動かしてみたりしてみたけど、特に強化された感じでもない。


 「一体何だったのかしら・・・まあいいわ。毒だったってこともない訳だから、次はこれね。」


 そうして緑の玉を改めて指でつまんでみた時、違和感に気が付いた。


 「あれ?なんか読める?」


 今までは何か模様のようにしか思えなかった玉の模様だったけど、今ははっきりとこう読める。


 『知識』


 ということは、これはあの兵士の持つ知識を吸い取ったということなのかしら。


 字なんて読めないはずなのに、意味も含めて理解できる。


 これはきっと赤い玉の効果なんだろう。


 あの中の1つがきっと文字を読む能力だったに違いない。


 我ながらこの生殺与奪のスキルって凄いなと思う。


 しばらく玉を指の間で転がして弄んでいたが、意を決しておでこに押し当ててみた。


 すると、物凄い情報が頭の中に流れ込んできた。


 「なにこれ!?う、気持ち悪っ・・・・・・・」


 ミコトはせっかく食べた食事を吐き出し、荒れ狂う情報の波に意識を失わないように必死に抵抗しながら木の洞に何とか体をねじ込むことが出来たが、そこで意識を手放した。

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