表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/89

第11話 スキルの理解

 山に入った私は、今まで行ったことがないくらい奥を目指した。


 山の中とはいえ、守護の役目の同僚がいつ回ってくるかも分からない。


 クローベアーの出現を聞いた兵士が出張ってくる可能性だってある。


 まずは自分に起きた変化を1人でじっくりと確かめて、その上で今後どうするかを決めなくてはいけない。


 奴隷の間は全てが決められていたので何も考えなくて良かったが、これから私は自由だ。


 何をしても良いというのは逆に何をしたら良いか分からないってことだと初めて分かった。


 私は奴隷の生活以外のことは山のことしか知らない。


 何も知らないから何をしたらいいか分からない。


 自由になったはいいが、気分はあまり晴れやかではなく、怖いことでもあった。


 この先何をして、どうなるのか予想もつかないということは不安であり恐怖だった。


 でもまあ、最悪山で1人で生きていけばいいかなと思うと気が楽になった。


 正直話し相手もいないのは寂しいけど、3年間も山暮らしをしているから特に山で暮らすことに不安はない。


 考えても仕方のない先の不安は打ち払って、自分に起きた変化を知るために色々なことを試した。


 木を相手に命を吸うということと、出てきた虹の玉を戻すことで復活させられることから、虹の玉を『生命の玉』と名付けた。


 生命の玉は枯れた木を復活させることができたが、木が枯れてある程度時間が経ったものには効果がなかった。


 ロッソ先生に効果がなかったのも同じことだろう。


 草や虫などの小さな生き物だと生命の玉の大きさも小さく、巨木だと大きいというのも発見だった。


 クローベアーとの戦いの時に気になっていた私の傷についても試してみたところ、ナイフで自分に傷を付けた後に生命の玉を取り込むと、あっという間に傷が塞がることが分かった。


 また、傷を付けた状態で左手の力で木の生命を吸い取ると、傷を治したうえで生命の玉が出来ることが分かった。


 あの時私の体に傷一つなかったのは、クローベアーから吸い取った生命の力で治ったのだろう。


 このスキルは『奪う』という言葉で発動して、左手から相手の命を含む全てを奪って、右手から玉として吐き出す。


 別に言葉を発しなくても、心の中で念じるだけでも良いようだ。


 別に手を触れていなくても問題なく発動するけど、範囲が広くなる一方で全てを吸いつくすまでにかかる時間がかなり長くなることも分かった。


 直接触れなくても効果を発揮するのは正直ありがたい。


 攻撃手段としては使いづらいけど、その分相手を殺さずに少しずつ生命力を吸い取って回復するという意味では十分使える。


 この辺りは使い分けをする必要がありそうだ。


 逆に、右手と左手を入れ替えてみると、効果が出なかったので手は完全に固定だ。


 これは右利きの私にとってちょっと不利だけど、慣れていくしかないかな。


 ただ、青い球の方はクローベアー以外出てきたことがない。


 やっぱり、魔物ということが重要なのかな。


 これはもう少し試す必要があるけど、正直魔物には出会いたくない。


 これで、『吸う』側の力は大体これで把握できたと思うし、生命の玉の効果も大体分かった。


 大きな発見としては、何も私の体に問題がない時や軽傷の時に吸収すると、身体能力が上がることだ。


 メキメキと筋力、視力、聴力が上がっていくのが分かる。


 お陰で山中を移動するのも狩りをするのも凄く楽になった。


 今までよりも獲物を発見しやすいし、遠くからでも弓矢で正確な一撃で仕留められる。


 川の中の魚も手掴みで採れる。


 今まで分かったことを整理してみる。


 ・吸う

   直接触れていると速いが、触れていなくても対象として考えた範囲の相手からゆっくり命を吸うことができる


 ・生命の玉

   傷を治す

   疲れを癒す

   生き返らせる(但し、一定時間以内)

   身体を強くする


 この玉の傷を治す力は思ったよりも凄くて、傷を治してくれるだけじゃなくて、切り取った手足なんかも再生してくれる。


 必要な玉の数はそれなりに増えるみたいだけど、これを沢山持っていれば意識さえ刈り取られなければどんなダメージでも回復できるってありがたい。


 もちろん、手足の再生を試すのに自分は使わなかったので、代わりに協力してくれた小動物さんはその後美味しく頂いた。


 ちょっとだけ心が痛んだけど、もっと自分自身を知りたいという気持ちの方が強かった。


 さて、後は、最後に残ったこの青い透明な玉だ。


 これは1個しかないから、試すのは私自身でやろう。


 正直、もう一度クローベアーと戦いたいとは思わないからね。


 これまで、この新しい力を試してみて私に害のあるようなことは一切なかったから、きっと大丈夫だ。


 私は青い球を摘まんで胸に押し当ててみた。


 すると、ズズズっと痛みもなく体の中に玉が吸収されていく。


 ここまでは生命の玉と同じだ。


 完全に吸収された時、唐突に私は理解した。


 クローベアーのスキル、『ホワイトクロー』を私が今使えるようになったんだ。


 あの時のクローベアーをイメージして腕を振ると、爪の先から白い刃が飛び出して、目の前の木々をなぎ倒した。


 驚きもさることながら、あまりの喜びに体が震えた。


 青い玉は『スキルの玉』相手のスキルを奪えるんだ!


 私はこの力でドンドン強くなれる!


 そして、自由になれるんだ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ