何でもやってみよう
「おーい、トムー」
集中しよ始めたが直ぐに誰かが大声で呼んできた。
自分の知り合いで尚且つ外で見つけると大声で呼んできそうな奴は一人しかいない。と言ってもほとんどこの世界に知り合いはいないが。
無視するわけにもいかないので集中を解き、振り向きながら答えた。
「なんだアーロン、わざわざ今日の散走のルートにここらへんも入れたのか」
「いや、魔王様からの伝言だ」
アーロンならこの場所も詳しく知ってるが。アーロンを送ってきた理由は何故だろうか。
考えるのがめんどくさくなったので聞いてみることにした。
「いったいなんだ、わざわざアーロンを送ってくるなんて」
「トムが城に現れたと同じ日にここから大陸の真逆の位置にある南西のある国で異世界からの勇者の召喚に成功したらしい」
「同じ日にってのは気になるが、他に何か問題があったのか」
「ああ、以前からそんな動きがあっからよ、魔王城のやつが事前に召喚魔方陣を事前に調査してたんだが、絶対に成功しないはずだったんだ。人間の技術力や能力では世界の壁が破れないからな」
「つまり俺の転送に巻き込まれたってことか」
「まあ、そういうこった。気にしてないだろうが気にするな」
「世界の壁を越えるのは魔人でもできないのか」
「ああ、それこそ神でもなけりゃ無地なんじゃねぇのか」
「神ならできるか……」
神か、そういえば俺の目は神眼とか書いてたな。
「なぁさ、クゥ」
「なんですか」
「俺さ、世界の壁越えれるかな」
「はい、いけそうですね主殿」
「おい、いきなりどうしたんだ二人とも。話が全くわかんねぇ。説明してくれよ。あといつからいたんだクゥよ」
「簡単にまとめるとですね、主殿の眼を更に進化させたのですが能力が頭いかれてんじゃねぇのかってぐらい跳ね上がったんですよ」
「今、途中お前の口調がかなり荒れてたので大体やっちゃったってのがわかったぜ」
「想像の三乗はひどいと思うがそんなことは後でも話せるさ、ちょっと面白いことを思いついたから試してみようと思うんだが」
「時間は掛かるか」
「わかんないな、ただ失敗したら世界の狭間に落ちて永遠に帰ってこれないかもしれないから」
「無茶はすんなよ。じゃ、俺は散歩に戻るわ」
「伝言ありがとな」
アーロンは振り返らなかったが軽くてを挙げて振ってくれていた。
「それで主殿、世界の壁を越えて何をするのですか」
「ちょっと神に会いに行こうかと」
「もう一人の件ですか」
「ああ」
「本当に巻き込んだ責任を感じたりはしてませんか」
「うん? ああ、そういうのじゃなくて、たぶん神のところに行けたら自力で元の世界に帰れるからさ」
「そういうことでしたか。なら行きましょう」
「クゥ。体を俺ん中の核に収納できないか」
クゥが全身を黒焔化しトムの体にするっと入っていった。
「できましたよ」
「なら行くぜ」
基本的には何時もと同じだが世界を越えるのは初めてなので少し緊張した。
眼を閉じて白い部屋を想像する。
そしていつも通り眼を開けた。そこには見渡す限り白以外の色が存在しない場所。
良く見ると壁も無かった。成功したようだ。
後を振り向くと爺さんがいた。
いや正確に言うなら寝ている。それもわざわざこの世界に布団を敷いて。
とりあえずクゥを体から出しゴットバードアタックを指示した。
直ぐにクゥは巨大化して高度を上げ始めた。俺も静かに剣を抜き上段に構えた。
クゥが空中で一度静止し一気に高度を下げ始めた。
恐ろしい速さでクゥは爺さんに突撃した。
爆音が発生し辺りが煙で充満した。
しかし、直ぐに突風と共に煙が散った。中心には服のあちらこちらに焦げ跡がついた服を着ている爺さんがいた。
そして俺は爺さんを狙いながら思いっきり剣を振ろうとしたが、爺さんは何処からとも無く取り出した楯で軽く防いだ。
「いきなり何すんじゃこの馬鹿者」
「自爆系必殺技と全力の一太刀」
「で、何の用じゃ」
「もう一人の転移者について」
すると、軽く答えるかと思っていたが爺さんもとい神は少し険しい表情で帰してきた。
「む、どう言うことじゃ」
「大陸の南西の端で勇者が召喚されたようだ。理由は偶然タイミングが爺さんが俺をこの世界送り込んだときと一緒だったからだと推測されるってさ」
「そうか、トム、そいつのいる町の場所を眼に送るから話とかを聞いたりここにつれてきて欲しいのじゃが」
「ああ、分かった。でも人相がわからんから厳しいぞ」
「それは大丈夫じゃ、ミツルギの中の黒髪はおぬしともう一人だけじゃ」
「つまり相手は日本人か」
「それでは頼んだぞ」
「ああ」
答えると同時に床が抜けるような感覚に襲われた。




