不意の遭遇
その後、トムが発した魔法は一割程度しか狙った威力と精度でしかなかった。大抵は威力か精度どちらかが失敗していてひどいときには両方大きく失敗していて、小さな丘が小さなクレータに変わった。
そんな感じで火柱を上げたり竜巻を起こしたりしていると魔眼に誰かの反応を感じた。どうやらゆっくり近づいてきていたようだ。せっかくだからトムはクゥに偵察させることにした。
「クゥできる限り高いところからちょっと偵察してきてくれ。それと、遠距離で会話できる魔法はないか」
「主殿、私達は使い魔契約の影響でパスができているのでそれを使えば」
「じゃあ対象の特徴とどんな装備を持っているか確かめてきてくれ」
「分かりました、主殿。それでは行って参ります」
そう言ってクゥは上空に飛んでいった。一瞬で見えなくなるほど急加速したが一切の負荷が肩にかからなかった。
暫くしてクゥからの連絡が来た。
「主殿。対象は一人で、武器を入れれるような鞄などは何も持っていません。それと恐らく魔人系の人種なので魔王城の人かと思います」
「ありがとうクゥ。このまま見張りを続けてくれ」
「分かりました主殿。何か変化があればご報告します」
~三分後~
待つのが面倒になったトムは自分から近づいていくことにした。
「クゥ、待つのが面倒くさいからこっちから行く」
クゥに一言伝えてからトムは進みだした。
まだ物理的な視力では何も見えないがしっかりと魔眼で捕捉しているので問題ない。
今の魔眼の範囲知覚では何か動いているものがあるとかシルエットしか見えないといった程度の感知能力だから、そのとき物理的な視力で一度でもしっかり認識していないと誰か分からなかったりする。ただ最初の魔眼の知覚範囲5mはしっかり把握出来る。
さっきの訓練で周りを穴ぼこだらけにしたせいで地面に2mほどの窪みがいくつもできていた。
少し深めの窪みから上がると人影が見えた。上空にはクゥの反応もある。あれが誰かよく分からない魔人か。
両者が少しずつ近づいていって後50mほどの地点で誰か分かった。もう警戒する必要がないと分かったのでクゥを呼び戻し転移で跳ぶ事にした。
「クゥそいつは知り合いだから大丈夫だ、戻ってきてくれ」
いつも通りの返事を返され気づいたときにはクゥは肩に止まっていた。
「飛ぶスピード速いなクゥ」
「上空から加速しながら降りて来ましたから」
「だからか。クゥ今から転移で近くまで跳ぶからしっかり掴まっとけ」
「はい主殿」と言う返事を聞きつつ相手の近くに照準を合わせて転移した。
「おはよう、アーロン」
「なんだ、トムかここらへんで魔法ばら撒いてたの。魔力の制御技術と魔力量とかが全然つりあってなかったから何事かと思ってな、トムならありえるな」
「アーロンはもしかしてこの前言ってた城の近くの散歩か」
「おお、そうだ」
「ここ近いか」
「おう、近いぜ」
「俺は、魔法の余波で魔王城周辺が悲惨なことにならないように魔王城から少し遠いところで練習してたんだが」
「走ったら10分、20分だぜ」
「散歩で走るな」
「今度から気をつけれるように覚えることを頑張る」
「つまりまた走る、とでもまあどうでもいいか」
トムは車で緑地まで行ってそこで散歩するようなものと考えて諦めた。
「ところでその肩に乗ってるのはなんだ」
「使い魔のクゥ」
「使い魔なんていつの間に」
「一人で適当に転移で飛んでたらあっちのほうで不死不死鳥にあって」
「ちゃんと逃げれたか」
「いや、核をもいだ」
「それで不死不死鳥を殺せたのか」
「いや、実は生きていて、魔力を注ぎこんでその時、不死不死鳥の呪いが解けて使い魔にできた」
「そういえば使い魔って魔法生物系の核に魔力を注ぎ込んだら生まれるんだったな。しかし、元は不死不死鳥だったのに今はただの小鳥か」
「いや不死不死鳥の亜種だぞ。クゥ戦闘態勢に移項だ」
「はい主殿」
指示したとおりクゥは巨鳥形態で黒焔化していた。
「おい、アーロンどうした」
「不死不死鳥なんて初めて見たぜ。だけどよ、不死不死鳥って不死鳥が狂化して暴走して暴れまわってる種じゃねえの、それと今そいつしゃべったよな」
「簡潔に言うと不死不死鳥には特殊な呪いを受けた不死鳥が変質して生まれる魔物でクゥは運良く不死不死鳥を殺した使い魔化のときに元の不死鳥の魂が核に入り込んで不死不死鳥の能力を残したまま不死鳥の魂、つまり高度な知能を持った状態で使い魔として生まれたんだよ」
「そういうことか、クゥ、俺はトムの隣室に住むアーロンだよろしくな」
「はい、よろしくお願いします。アーロンさんと呼んでもいいですか」
「別に何でもいいよ。ところでこの周りの惨状はトムの仕業か」
「はい、アーロンさん。トムの存在強度は私を討伐したことで、現在の存在強度が1000弱まで上がり、なのに一切魔法の訓練をしたことがないのでこんな状態に」
「そりゃ仕方ねぇな。恐らくだがノア様がやってこいっていったんだろ、ならこうなることも承知だから大丈夫だろうな」
「もしかしたら整地のほうも練習の一部かも」
「そりゃ大変だなじゃあ俺はそろそろ行くが一回着いてきてみるか」
「面白そうだな、魔物に遭ったらアーロンが倒してみてくれよ」
「おお、いいぜ。特攻魔将と呼ばれた俺の実力を見せてやる」
「俺たちは両方ほぼ完全な不死身だから一応近くでぶっ放しても大丈夫だから」
「そんなことは分かってるがトムお前視力良いんだからちょっと離れておとなしく見とけよ」
「分かってるよ。じゃあ行こうぜ」
「ああ。クゥと言うわけなんだがご主人さまが訓練をサボって散歩に行こうとしてるがいいのか」
「ええ、問題ありません。魔王城の魔将と言うことは魔法が上手いのでしょうから主殿の参考になるかと思いまして」
「俺の魔法はあんまり参考にならんがな。細けぇことは気にしないだな」
「じゃあ行こうぜ」
そう言って二人と一羽は適当な方向に歩いていった。




