対戦
何故こうなってるの?
いま、目の前にはSランク冒険者パーティーであり、英雄王パーティーがいる。
正確には元が付くSランクだと思うんだけど、現役Sランク黄昏の剣よりはるかに強い
剣士を真ん中に、片手剣と盾を装備した騎士、そして魔法使いが並んでいる。
『武器、防具ともにレジェンドクラスです。お気をつけ下さい』
コアIIからの助言。
『ん~、その前に、この模擬戦は回避できなかったのかなぁ~?』
『回避する必要がなく、またライザ様からも質問がなかったため……』
ぐっ……聞けば良かった。
『ライザ様、本気を出したらダメです。魔法の制御は私が承りますので、身体の方に意識を使ってください』
『本気出さなきゃ死んじゃうよ?』
『問題ありません。
あの3人でもティアは倒せませんから……』
ウンウンと頷くミニドラ。
串焼きを手に持ち、観覧席でランスロットさんの膝に座っている。
参ったなぁ~。
朝、ギルドに呼び出されて、執務室で3人で話し始めたら、トリスタン様が入ってきた。
にこやかに挨拶していたと思ったら、いきなり小脇に抱えられ、そのまま闘技場へ。
準備万端で待っていた国王様とギネヴ様。
そして、涼やかな顔で――
「おはよう」
「あ、おはようございます」
「ん、いきなりで悪いが、我らのパーティーと戦ってもらおう」
「えっ? 何故ですか?」
「私が戦いたいからだ!
ギルドにも依頼として出してある」
そう言うと、国王様が剣を横薙ぎに振るう。
すると、真空の刃が飛んできた。
慌ててショートソードでいなし、ティアのいる方向へ反らす。
ドゴンッ!
ティアのすぐ下にある闘技場の壁が抉れた。
ティアがあんぐりと口を開けている。
自分だけ、抱っこしてもらってるけど……。
流石、英雄王の剣撃。
破壊力は凄いかも……。
一息ついたところで、トリスタン様が相手側へ戻る。
3人が並ぶと、凄い威圧感がある。
で、最初の問いに戻る。
ちょっと……理不尽じゃない?
建国の英雄たちでしょ?
少しイライラしてきたので、コアIIに指示を出す。
『全力で、闘技場の周りに結界を展開して』
『ティアは、あの3人に結界をお願い』
『五大竜王撃を撃つから!』
『マム! この場が崩壊します。迷宮だから耐えられたのです!』
『だから、結界を張れって言ってるの!
出来ないなら、黙ってなさい!
で、出来るの? 出来ないの?』
『ヤー、マム。
結界の展開が完了しました』
『ティア!』
『大丈夫。直撃しても死にはしないわ……たぶん……』
魔力を高め、呟く。
「竜王」
火の龍が闘技場の周りを巡る。
風の龍が3人の頭上で佇む。
水の龍が3人の周りを巡る。
土の龍が足元から隆起する。
木の龍が縦横無尽に走り回る。
この段階で、ギネヴ様が青くなり、結界魔法を幾重にも掛けているのが分かる。
手を前に出して、呟く。
「五大竜王撃」
五種の龍が手の前に集まり、絡み合いながら目標へ向かう。
さすがに英雄王と言われるだけある。
ガヴェイン王は2人を背に庇うと、聖剣カラドヴォルグに力を注ぐ。
竜王撃が迫り来る中、眩い光を放つカラドヴォルグを上段から振り下ろす。
極太のレーザーのような光が、竜王撃とぶつかる。
カラドヴォルグから放たれた光が霧散する。
絡みついた5匹の龍が鎌首を持ち上げ、3人を見下ろしながら下降してくる。
2人に覆い被さるようにして守る英雄王。
……ちょっと格好いい。
グッと手を握る。
竜王撃が霧散する。
「こんな感じで、気が済みましたか?」
2人を庇う体勢から、こちらに向き直る英雄王。
「まだだ!」
どうやら、剣で勝負したいみたいだ。
両手にショートソードを持つ。
片方は順手。
もう片方は逆手。
数合打ち合う。
力強い。
けど、隙があれば、すぐに付いてくる。
相手は聖剣。
まともにぶつかれば、こっちの剣がもたない。
相手が息を吸った瞬間に距離を取る。
ちょっと剣技じゃ勝てなさそうだから……。
ショートソードをしまい、無手で英雄王に向かって突っ込む。
途中でワンコ体型へ移行する。
目標がいきなり小さくなったことで、相手には消えたように映ったのか、一瞬だけ目が探すように動く。
その隙を突いて、ジャンプ。
前足による空爪撃!
カラドヴォルグで防がれ、その勢いのまま上へ飛ばされる。
ちょっと悔しいので――
空爪乱撃!
と、呟いたつもりが、
「ワフフン!」
両前足から、何発もの空爪撃を下へ向かって放つ。
英雄王が上から降り注ぐ斬撃に対処している隙に、地面へ降りる。
そして、両後ろ足に力を溜め――
思いっきり英雄王のお腹目掛けて飛ぶ!
本人のイメージでは、黒い砲弾になったつもりだ。
周りからは、どう見えたか分からない。
――ドゴーン!
およそ、人のお腹に当たったとは思えない音が響く。
英雄王が壁へ吹っ飛んでいった。
……たんこぶ、出来たかも。
ヒト形態に戻り、頭を擦りながら英雄王のところへ歩いていく。
すると――
「あれはバカね! あの魔法を見て、魔法以外で戦って勝てると思っていたら、本当にバカだわ!」
「あぁ……俺も、あの龍たちが飛んできた瞬間に、小さくて可愛かった頃のマーリンがいっぱい頭の中に浮かんだよ……。昔はおしとやかで可愛かったのに……」
「いやいや、お前ら心配しろよ? 一応、国王だぞ?」
自分で「一応」とか言っちゃうんだ……。
ガヴェイン王の元にギネヴ様とトリスタン様が集まり、ギネヴ様に回復魔法を掛けてもらっている。
そこへ、黄昏の剣の3人と、オマケが1匹も駆けつけてきた。
「ライザ、キレてた?」
「キレテナイデスヨ?」
「いやいや、なんか違ったな……」
「うん。威圧を掛けられたら、めっちゃ険しい顔になってたしね」
「そうだな……。その前までは仕方ないみたいな雰囲気だったのに、威圧を放たれた瞬間に凶悪になったな……。あの瞬間、ティアが震えてたからな……」
「ソンナコトナイデスヨ?」
と、ティアを見る。
……ランスロットさんに甘えてる!
「まぁ、魔法を放つ前に結界を張る余裕があったんだから、本気でキレてた訳じゃなさそうだな」
ガヴェイン王がトリスタン様に肩を借りながら立ち上がる。
「俺の鎧は、ミスリルだぞ?
それがベッコリ凹むって……」
「たんこぶ、出来たかも……」
すかさず、マーリンさんが僕の頭を撫でる。
「ん、大丈夫みたい」
「どんだけ頑丈な頭なんだ」
その言葉に、皆が笑い出した。




