初依頼達成!
とりあえず、依頼の内容に従って西門に着いた。
門兵さんにギルドの依頼書と、首に掛けたプレートを見せて外に出してもらう。
門の外には、街に入るため結構な人が並んでいた。
でも、まだ慌てている様子はない。
情報が回っていないわけじゃなく、兵隊さんたちが数組、周辺の見回りや護衛に付いているから安心しているように見える。
近くの警備兵さんに魔物の出没場所を聞くと、左手にある森から街道へ出てくるらしい。
その周辺を万能感知で索敵してみると、確かに反応があった。
森に入り、人の気配がなくなったところでワンコの姿に戻る。
そして、そのまま疾走した。
すると、上空を飛んでいるティアから念話が届く。
『感知で分かっておると思うが、警備隊らしき兵隊が襲われておるぞ』
『うん。何人かヤバそうだから、ティアは倒れてる人を集めて守護をお願い』
『承った。しかし、ワレは回復が使えん。早めに処置せんといかんのぅ』
『どんな敵か分かる?』
『あ~、チュールじゃな。ロブスターが馬より大きくなったような化物じゃ』
『ロブスター?』
『奇襲や待ち伏せをよく使う魔物でな。髭に捕まると麻痺毒が身体に回り、動けなくなったところを捕食するのじゃ』
ロブスター……。
絶対、美味しいヤツだ!
気合いが入る。
ワンコの体からヒトの姿へと変化し、右手にショートソード、左手には爪を装備する。
そして、そのままチュールへ突っ込んだ。
チュールは、ザリガニやエビがやるように両ハサミを上へ持ち上げ、威嚇のポーズを取る。
意識がハサミに向かった途端、髭が左右から迫ってきていた。
(毒だったよね・・・)
後ろに下がりながら、魔力を込めた爪を振り抜く。
「空爪撃!」
ザシュッ!
鋭い音と共に、チュールの両ハサミが地面へと落ちた。
そのまま跳び上がり、頭部へショートソードを突き立てる。
動かなくなったのを確認すると、すぐにアイテムボックスへ収納した。
周囲を警戒しながら辺りを見回す。
そこには、力なくその場に座り込む警備隊の兵たちがいた。
ティアは負傷者たちを背にかばうように立ち、結界を張っている。
すぐにティアの元へ向かい、負傷者たちに回復魔法を掛けていく。
千切れ飛んだ腕や足も元通りになる。
ただし、失われた血までは回復できない。
失神している者も多かったが、幸いなことに死者はいないようだった。
「助かった。しかも回復魔法まで掛けてくれたお陰で、部下たちも一人も欠けることなく街に戻れそうだ」
周りの兵たちよりも豪華な装備をした兵隊さんが、こちらに話し掛けてきた。
「あ、はじめまして。冒険者のライザです。丁度、ギルドで依頼を受けたところだったので、間に合って良かったです」
「ああ。本来なら問題なかったのだが、チュールは奇襲を掛けてくるからな……」
隊長さんは苦笑しながら続ける。
「今回は森から女の悲鳴が聞こえたので、慌てて中へ入った。それが失敗の原因だったな……」
「悲鳴ですか?」
「うむ。だが、どこにも女など居なかった」
一応、万能感知で周囲を調べてみる。
……人の反応はない。
『ライザ様、チュールはヒト族の声真似をして、おびき寄せることもするのじゃ。それではないかのぅ?』
ティアが念話で教えてくれた。
「あ、それですね。チュールは人の声真似をすることがあるそうです」
「ほう、そうだったのか」
「襲われてる人はいないみたいで良かったです。じゃあ……私は街に戻りますね」
「うむ。我らも街へ戻ろうと思う。世話になったな」
隊長さんに軽く頭を下げ、警備隊から少し距離を取る。
木陰に隠れると、そのまま転移。
西門近くの木陰へ移動した。
木陰から出て門へ向かい、街に入るための列へ並ぶ。
すると、門兵さんが心配そうな顔で近づいてきた。
「早いな……。まだ警備隊も戻っていない。見つからなかったのか? それとも応援の要請か?」
「いえ、終わりましたよ。警備隊も、もうすぐ帰ってきます」
そう言って後ろを指差す。
「ほら!」
少し離れた街道を見ると、警備隊の人たちがこちらへ向かって歩いてきていた。
「そうか! さすがAランクだな!」
門兵さんは感心したように頷く。
「まあ、無理だったなら、もうすぐ着くSランクの黄昏の剣に頼む予定だったのだがな」
黄昏の剣?
アーサーさんたち、こっちに来てるんだ。
「とりあえず、身元確認はもういい。ギルドに知らせてくれないか? 辺境伯には警備隊から連絡する」
「じゃあ、お言葉に甘えて先に入らせてもらいます。ありがとうございます」
お礼を伝え、街の中へ入る。
そして、そのままギルドへ急いだ。
ギルドに着いて中へ入ると、なんだか慌ただしい。
職員さんたちが、あちこちを走り回っている。
近くを通り掛かったギルド職員さんを捕まえ、エルザさんを呼んでもらえるよう頼んでみた。
けど……。
「う~ん、今忙しいの分かる?」
職員さんが、ちょっと呆れた顔で周囲を見る。
「みんな動き回ってるでしょ? これから国王様やSランク冒険者パーティーが来るし、西門の魔獣対策もしなくちゃなの」
……うん。
確かに、忙しそうです。
「邪魔しないように、端の方で座っててくれる?」
「はい……」
お、怒られた……。
と、とりあえず……。
言われた通り、ギルドの端っこにある椅子へチョコンと座って待つ。
ティアは膝の上で、すでに気持ち良さそうに寝ている。
まあ……。
初依頼、達成かなぁ……。




