外の景色
意気揚々と街へ向かって歩き出した私達を、テントにいた数名の人達が取り囲んだ。
「暫くお待ちください。少々お伺いしたいことがありますので、出来ればこちらへ来ていただけますか?」
「えっ? 何か問題でもありましたか?」
取り囲んでいる人達の中から声をかけてきた人に尋ねる。
「えぇ……。あそこから出てきたということは、迷宮をクリアして出てきたということですよね? その辺りを詳しくお聞きしたいのですが……」
「あ~、ギルドの方でしたか……。分かりました」
どうやら冒険者ギルドの人達らしい。
テントの奥には、応接セットらしきものが置かれている。
ここは迷宮の出入り口に併設された受付所で、長期にわたって迷宮内で生活する冒険者達の記録や確認を行う場所らしい。
そこへ促されたので、言われるまま向かうことにした。
「ここはギルドの迷宮受付所になりますので、こんな簡易的な椅子しかありませんが、どうぞお座りください」
妙に下手に出てくるけど……。
『たぶん、迷宮を生き延びて戻ってきた者なら、相当な実力者だと思われているのではないかの?』
ティアが念話で教えてくれる。
『でも、見た目は小娘だよ?』
『この世界にはエルフやドワーフ、魔法使いなど、見た目だけでは実力を判断できない人達がたくさんいますからね。見た目だけで判断しないのではないでしょうか?』
今度はコアIIが答える。
するとティアが頷いた。
……あれ?
コアIIの言葉、ティアにも聞こえてるんだね。
『念話なので、三者通話のような形になっています』
『そうなんだ!』
……っていうか、三者通話ってコアIIがよくそんな言葉知ってるね?
『ライザ様の記憶から学習しました』
『僕の記憶?』
『はい。前世の記憶も共有させていただいています』
『そ、そうなんだ……』
なんだか、自分の頭の中を覗かれているようで、ちょっと恥ずかしい。
そんなことを考えながら椅子に座る。
「申し訳ありませんが、お名前と冒険者ランクなどを教えていただけませんか? 私は冒険者ギルドのエルザと申します。この受付所の総括として派遣されています」
「あ、はい。名前はライザです。冒険者登録はしていないので、ランクはありません」
「えっ? 冒険者ではないのですか?」
「はい」
「では、迷宮に入る際の受付もしていないということですよね?」
「はい……」
……なんか、声が怖くなってきた。
「では、なぜあそこから出てきたのですか? どうやって迷宮に入ったのですか?」
矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
あ~……。
もっとちゃんと、黄昏の剣のみんなに色々聞いておけば良かった。
コアII、なんか良い返事ないかな?
『…………』
無言かよ!
「えっと……なんか迷っちゃってて、気付いたらあそこにいたんですけど……」
「どう迷ったら、迷宮から出口へ出てこられるのですか?」
「分かりません!」
ここはキッパリ答えておく。
「はぁ……。まぁ、その辺りは後で調べるとして……では、身分を証明するものや、お知り合いの方はいらっしゃいませんか?」
「身分を証明するものは持ってません。知り合いですか……」
「そうですね。このままですと、不審者として扱うことになってしまいますから……」
不審者!?
取り調べとかされたら、ちょっと困るんだけど……。
ティアを見る。
……ソファーでくつろいでる。
我関せずですか。
いや、あなたも当事者だからね?
「あ、黄昏の剣!」
「黄昏の剣?」
「はい。パーティーのアーサーさん、マーリンさん、ランスロットさんなら!」
「はぁ?」
エルザさんの顔が引きつった。
「黄昏の剣って、Sランク冒険者ですよ? それにアーサー様は王位を継承する立場の方で、マーリン様は国の魔法使いのトップクラス。ランスロット様は近衛騎士副団長ですよ?」
「えっ?」
そんなに偉いの?
「なぜ、貴女のような子が、その方達と知り合いなのですか?」
「えっと……迷宮の中で少し一緒になって……」
「……」
エルザさんが黙り込む。
……なんだろう。
余計に怪しまれてない?
「アーサー様のお父様は『英雄王』と呼ばれ、グラン王国を建国された方です。マーリン様、ランスロット様のご両親も、王国の建国に尽力された方達ですよ?」
「そ、そうなんだ……」
知らなかった。
というか、アーサーさんって王子様だったの?
マーリンさんもランスロットさんも、そんな凄い家柄だったなんて……。
迷宮の中では肩書きなんて関係なく、ただの仲間として過ごしていたから、全然実感がなかった。
「と、とりあえず……知り合いは、その方達だけなので……」
「分かりました」
エルザさんは少し考えるように黙った後、ため息をついた。
「では、街のギルドで連絡を取ってもらいましょう。ギルドまでご同行をお願いします」
「はい……」
こうして私は、ギルドの人に連れられて街へ向かうことになった。
……なんか、迷宮の外に出ただけなのに、すごく大事になってしまった気がする。




