4,友達の力を借りる(いい話っぽい言い方)。
美弥が連れて行かれた住所に向かおう。
ところが──もう終電でーす。
徒歩だと時間がかかるけど、タクシーに乗るお金がない。
こんなときは、親友に頼るのだ。
オリ子から貸してもらった、【無限ダンジョン】と繋がるスマホで電話。
相手は小梨くん。
ちなみに小梨くんは、【無限ダンジョン】で暮らしている。巨大蝙蝠になってしまったので、これは仕方ない。
ただそのうち偽装スキルを身につければ、人間の姿を偽れるそうだ。その時が来たら、家族と感動の再会をすることでしょう。何年先になるか知らないけど。
「もしもし小梨くん。大至急、僕を運びに来て欲しいんだけど」
「てめぇ、ふざけろよ! こんな姿で出ていったら通報されるだろうが! だいたいなんで俺が、てめぇのために働かなきゃならねぇんだ!」
説得に時間をかける余裕はない。
ほかに選択肢はないので、脅すことにする。
「あのね、小梨くん。僕はフロアボス、君の上司だからね。僕が不要と思ったら、君は処分されるから。10分以内に僕が指定した場所に来なかったら、処分コース確定だからねー。以上」
もちろん本気ではないよ。友達を処分したりはしませんともさ。
9分後、小梨くんが飛んできた。うまい具合に、夜の闇に紛れて飛行してきたようだ。
「わざわざありがとう、小梨くん」
「てめぇ、いつか殺す」
「じゃ運んでもらおうかな。あ、住所はね──」
ふいに小梨くんの影から、早苗さんが出てきた。
「知樹くん! わたしを置いていくなんてひどいよ!」
先日。
早苗さんが僕の影から出ている隙に、【無限ダンジョン】を出たのでした。
まさか小梨くんの影に入って追いかけてくるとは。
「あー、ごめんね早苗さん。悪気はあんまりなかった」
早苗さんが僕の影に入る。落ち着いたという声で、
「やっぱり、ここが安心するよ」
「……なら良かったよ」
早苗さんがいくら軽くても、ずっと引きずる身にもなって欲しい。
「じゃ小梨くん、頼むよ」
小梨くんの両脚が、僕の両肩をガチっと掴む。
飛翔。
そのまま街灯の多いところは避けつつ、目的の住所まで向かう。
そこは高級住宅街だ。最上級国民の根城。迷いこんだ庶民を狩るため、自警組織が巡回しているような場所。
「おい。こんなところに何の用なんだ?」
「僕の妹を誘拐した輩を血祭りに上げるんだよ~。じゃ、小梨くんはここで待っていて」
「……」
最上級国民の人っぽく歩いて行こう。巡回中の自警組織がスルーしてくれるように。
ところが速攻でバレた。貧乏臭がするとでもいうのか!
巡回していた自警員が3人。僕を取り囲んで、警棒で小突いてくる。
「貴様のような下等国民が足を踏み入れていい場所ではないぞ。痛い目にあいたくなかったら、とっとと消えろ」
自警組織は最上級国民に雇われているだけの庶民。
では彼らに罪はないのか、といえばそれは違う。ナチスの協力者のようなものかな。
というわけで、両膝破壊コース。
《地獄神》召喚──からの、連続ドリルビット。
「ぎゃぁあ!」「ひぎゃぁ!」「うぎゃぁ!」
目にも留まらぬ速度だった。自分で言うのもなんだけど、腕を上げたね。
「ち、畜生、ふざけやがってぇ……」
両膝にドリルビットを食らったので、3人とも地面に倒れている。
「そこで大人しくしていてくださいね」
僕が歩き去ろうとしたところで、一人が無線で連絡を取ろうとした。
すかさず、その人の右眼にドリルビットを打つ。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
「大人しくしている人は、無線で連絡なんてしませんよ」
僕は残りの2人を見やって、念押しした。
「オーケー?」
2人はガタガタ震えながら答える。
「は、はい」「わ、わ、わかりました」
まだ悲鳴を上げている1人目の自警員を指さして、
「あとこの人、黙らせておいてください。片目を失ったくらいで大袈裟ですよねぇ?」
その後は何の障害もなく、目的の邸宅に到着。
まさしく大豪邸だ。僕が住んでいるボロアパート本体よりもでかい。
僕の影から、早苗さんが顔を出す。
「わぁ、凄いね~。やっぱり最上級国民の方々は住む世界が違うよね、わたし達とは」
「そうでもないよ。【無限ダンジョン】では、モンスターと『彼ら』は同等だからね」
侵入方法を色々と考えたけど、どうせセキュリティに引っかかるだろうし。
そこで僕は、ある意味では王道を取った。
インターフォンを鳴らしたのだ。
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