11,ストーカーも仲間になった。
おっと。これは、なんというか──
これまで人間からモンスターにチェンジしても、たいした変化はなかった。
僕の場合は見た目は変化率0パーセント。
美弥もネコ耳と尻尾が生えただけだし、変化率5パーセントくらい?
ところが小梨は100パーセントいった。突き抜けましたね。
ひとことで言うと、巨大な蝙蝠の怪物になってしまったのだ。しかも右腕だけが、やけに肥大化した蝙蝠に。
まてよ。あの右腕から繰り出すパンチは強そうだぞ。それに飛行できるのは便利だし。
ただ惜しいのは、ダンジョンには天井があることか。第1階層の天井は、20メートルもなかったしなぁ。
ところで小梨はモンスター化によって一時的に自我を失ったらしく、暴れ出した。
「あちゃあ」
スマホに着信。オリ子からだ。
「オリ子さん、なんかモンスターが出来ました」
「うむ。《種族チェンジ》を使ったのならば、意外ではないがな」
「とりあえず新加入モンスターを、【無限ダンジョン】に転送してもらえますか?」
「承知したぞ。だがわらわの力でも、どのようなモンスターになったか分からんと難しいのだ。お主のスマホで、その新加入モンスターを撮影してくれ」
「分かりました」
にしても、ひと気がないところで良かった。目撃者がいたら、ちょっとしたパニックに──
と思いきや、背後から悲鳴が聞こえる。
「きゃぁぁぁ! 化け物ぉ!」
ハッとして振り返ると、早苗さんがいる。
「早苗さんっ! どうしてここに?」
「知樹くんをストーカじゃなくて、道を歩いていたら偶然にも知樹くんを見つけて」
うん? いま、何か聞き捨てならない単語が挟まれていたような。
気のせいということにしておこう。
などとやっているうちに、小梨が飛び立とうとする。
慌てて撮影してから、オリ子に送信した。
ついでに早苗さんも撮影し、やはり送信。
次の瞬間には、僕、小梨、早苗さんの3人は第1階層へと転送されていた。
浮遊玉座に腰かけたオリ子が、小梨の異形を見て感心する。
「ほう。これはなかなか面白いな。潜在能力の高さでは、南波美弥には遠く及ばない。が、雑魚モンスターの器には収まらんぞ。さすがイコライザー。モンスターの才能を見抜く眼も確かだな。それに、そっちの娘も──」
「え、早苗さんですか? 彼女はモンスターにはしませんよ。偶然にもモンスター化した小梨を目撃しちゃったので、ココに転送してもらっただけで。これから、じっくりと口止めするつもりです」
「それは許さんぞ、イコライザーよ。この秘密を知られたからには、2つに1つだ。命を取られるか、モンスターの仲間になるか」
「秘密って?」
「むろん。わらわが人間をモンスター化していることに決まっている。どう考えても、人間社会的にはアウトだからな。拡散希望の反対だ。拡散絶望だ」
「はぁ」
拡散絶望なら仕方ない。
「早苗さん。モンスターになるか、オリ子さんに口封じされるか選んでくれる? あ、オリ子というのは、そこの見た目は幼女のモンスター」
実はこのとき、早苗さんの頭脳はフル稼働していた。
そして一つの結論を導き出していたのだ。
「モンスターになったら、知樹くんと一緒にいられるのかな?」
「僕の下で働いてもらう感じかな。そこの小梨くんと一緒に」
チラッと見たら、小梨はどこかに飛んでいったあとだった。まぁ【無限ダンジョン】内だし、いいか。
ところで、なぜか早苗さんの顔は輝いている。幸福を感じているように。
「本当に!? それなら、モンスターでお願いしまーす!」
「え、そう? 僕が言うのもなんだけど、軽いね人間捨てるの。じゃ、いくよ~」
《種族チェンジ》を使おうとしたところ、オリ子に止められた。
「待つのだ、イコライザーよ。貴様の《種族チェンジ》は、残り1回だろう? それは大事に取っておけ。その娘は、わらわがモンスター化しよう」
《種族チェンジ》が発動される。
瞬間、早苗さんが消えてしまった。
「オリ子さん! 早苗さんはモンスターになる覚悟を決めたのに、消すなんてひどいっ!」
「いや、わらわは消してなどはおらんぞ。早苗はちゃんとモンスター化した。まぁ、そのうちお主にも分かるだろう」
オリ子は、なぜか僕の影を見ながらそんなことを言う
ここはとりあえず、オリ子を信じるとしよう。
「じゃ、小梨くんを探してくるよ」
5分ほど歩いたところで、小梨を見つけた。
自我は取り戻したようで、今は体育座りして泣いている。巨大蝙蝠の姿なので、なんかアレだが。
「やぁ小梨くん、どんな感じ?」
メソメソと泣いていた小梨が、僕を見やる。
「て、てめぇ……よくも俺を化け物にしやがったな! 俺の人生を返しやがれ!」
ここは彼の『上司』として、何か慰めの言葉をかけてあげなければ。
「どうせ人間のままでも、たいした人生じゃなかったでしょ」
素晴らしい慰めの言葉だと思ったが、よけい泣かせてしまった。
困っていたところ、第1階層にコンビニの入店音が響き渡る。
冒険者がやって来たのだ。
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