10,即戦力をゲットしよう。
第50階層には、都市があった。屋内都市が。
ダンジョン内であることは間違いないけど──天井まで100メートルはある。
そんな大空洞に摩天楼が立ち並んでおり、モンスターたちが活気ある生活をしていた。
「第1階層とのこの違いっ!」
どうやら第1階層は、ようはド田舎らしい。ド田舎な上に、冒険者との戦争の最前線。まぁ最前線だからド田舎になったのだろうけど。
そんなところでフロアボスをしている僕とは──
「冒険者を殺す競争相手がいないので、稼ぎまくりではないかっ!」
という素敵な事実に気づいた。
しばらく歩いていると、モンスター専用病院を発見。
美弥には入院が必要とのことで、僕は着替えを取りに戻ることになった。
病院を出たところで、アイスを食べているオリ子を見かけた。浮遊玉座に腰かけたまま、ボーとしている。
「どうも、オリ子さん」
「おお。我が期待の新星ではないか。妹さんの具合はどうなのだ?」
「全治3日だそうです。肋骨が折れたにしては、完治まで早いですよね」
「モンスターは治癒力が人間より高いからな。ヒールを使える冒険者とかと比べると、また変わってくるが。ところでモンスター部下の勧誘は順調か?」
「ぜんぜん。せっかく仲間になってくれたゴブリン一家は瞬殺されましたし」
「お主の場合、既存のモンスターを仲間にするより、新しくモンスターを造ったほうがいいのかもれんな」
「《種族チェンジ》でですね? 何だかフランケンシュタインになった感じですよ」
「そんなモンスターならいるぞ。確か28階層に」
「いえフランケンシュタインはモンスターじゃなくて、モンスターを造った科学者の名前ですからね。まぁどうでもいいですけど。とにかく、人間をモンスターにするのは責任重大ですよ。気軽にはできない」
「むろんだ。それにモンスター素質のある人間を選ばねばならんからな。せっかくモンスターにしても、雑魚では仕方ないだろう。そこいくとお主の妹は才能の塊だ」
美弥が才能の塊でも、即戦力じゃなかった。カナさんも非戦闘員だし。
ここは即戦力が欲しいなぁ。
★★★
翌朝。
僕は我が家で目覚めた。
昨日は美弥の着替えを届けたあと、自宅に寝に戻ったのだ。睡眠不足はモンスター稼業の大敵。
そのため、いま第1階層は蛻の空。カナさんだけ置くわけにもいかないので、都内の死体安置所に避難してもらっている。
このまま【無限ダンジョン】に行ってもいいけど、即戦力を探すのが先決かも。
で、重要なことを思い出した。
今日は登校日じゃないか。
慌てて支度して、学校に向かう。
教室に入ったところで、隣席の東浦早苗さんに声をかけられた。
「知樹くん、久しぶり。いまのところ夏休みはどう?」
モンスターになって冒険者を7人殺した。
とは言えないので、
「バイト三昧だよ」
これも間違ってはいない。
「そうなの? あの、知樹くんと一緒に、どこか遊びに行けたらいいなぁ……と思っていたんだけど」
「無理だね」
早苗さんにモンスター資質があるとは思えない。
──という僕の結論は早計だったわけだけど、それに気づくのはまだ先の話だ。
早苗さんは残念そうに言う。
「……そっか。だよね、ごめんね」
「別にいいよ」
登校日の帰り、よく分からないが不良たちに絡まれた。
お決まりの校舎裏へ。テンプレすぎて、ここに来なくては始まらない感がある。
不良グループのリーダーである小梨祐一が、僕の胸倉をつかんで言うわけだ。
「おい南波、てめぇ東浦さんと仲いいじゃねぇかよ。付き合ってんのか?」
「付き合ってないけど」
「命が惜しかったら、東浦さんとは別れろよ。いいな、おい?」
「あの、話聞いて。付き合ってないものは別れられない」
「ふざけんじゃねぇえ! 殺すぞオラァ」
小梨の右ストレートが、僕の顔面に入った。
鼻が潰れてしまったが、完全再生すると怪しまれるので現状維持。
それにしても──
「ざまぁみやがれ」
小梨は仲間たちと歩いて行く。
その背中を見ながら、僕は思った。
今のはいいパンチだった。まったく容赦がない。イジメっ子特有のパンチ。
見どころのある人間だ。欲しいかも。
まわりに人がいないのを確認してから、完全再生で鼻を治す。
そして小梨たちを尾行。彼らは女子たちと合流して、カラオケ店へ向かった。ちなみに早苗さんはいなかった。
僕はカラオケ店近くの路地で張り込み。
やがて小梨たちが出てきて、解散した。
僕は口笛吹きながら、一人になった小梨を尾行。やがてひと気がなくなったところで、肩をつかんだ。
「どうも、小梨くんっ!」
小梨がギョッとして、僕を見やる。
「あぁ!? 南波、てめぇ何のようだ?」
「君の無慈悲ないじめっ子パンチに、僕は惚れた」
「気持ちワリぃこと言うんじゃねぇ! 離せクソが」
「諦めて、小梨くん。これも運命だ。さぁ、この指を見て」
小梨祐一に指を突き付けて、
「《種族チェンジ》!」
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