第9話 夕焼けの死神と、理不尽と。
パンパン!
パンパン!
バーン!バーン!バァーン!
銃撃音はどんどん近付いて来ているようだ。
一つではなく複数の音が聞こえる。殺人鬼どもが撃ち合っているのかもしれない。
まずい、見つかると殺される。
本能から俺は急いで職員室の扉を開く。
机の下でオッサン教師と、英語の女先生がガタガタ震えている。オッサンは目を瞑り、頭を抱き抱えてまるで生まれたばかりのポニーのように体を痙攣させている。
薄ら目を開けたオッサンは俺に気がつくと、涙目のまま手で早くきてとジェスチャーする。
俺は扉を急いで閉めると、オッサンの隣にならなんで、机の下に避難する。
オッサンの鼓動がこっちにも伝わりそうで、俺までビビりそうになる。
てか汗くさ。
「た、田中君、そ、外は大丈夫だったんですか。ここで静かにい、息を潜めましょう」
無言でうなづくとオッサンは震えを止める。どうやら、生徒が来てから落ち着いたらしい。
椅子を机を射線を遮るように設計するとオッサンは、俺に伸びる警棒を渡してきた。これで身を守れ、てことなのか?
隣の席の女先生も顔を真っ青にしながら半泣きで、虚空から中世の銀の剣を呼び出して、両手で握っては抱きしめている。
美女OLに剣か、悪くないなあ。
てか、この世界の女の子て全員武器呼び出せるか何か能力あるのか。
俺も汗は止まってきた。自分より慌ててるやつを見ると人は落ち着くらしい。
暫くして、銃撃音は止んだ。
俺らは必死に息を静める。オッサンが両手を組んで、神に祈り出す。
まじで過ぎてくれ。強制イベントはもう充分やっただろ。まじで頼む。
俺らの祈りは虚しく。
扉を勢いよく開くと、誰かが入って来たようだ。
俺らは息が止まった。
明らかに返り血が付いた機能的なデザインの黒いヘルメット。全身には黒尽くしで特殊部隊が着るような防弾ベストにスーツ、ブーツ。そして手に持ったアサルトライフルを構えながらそいつは無言で周囲を見渡し俺らに狙いを定める。
あ、やべ詰んだわ、これ。
死を覚悟して目を瞑っていると、
予想していた銃声はしなかった。そいつは俺らを明らかに視認したのに、扉を開けたまま引き返した。
ふー。どうやら、
ターゲットは俺じゃないぽい。これなら生き延びるの余裕じゃね?
足音が去っていくのを確認して
隣のオッサンは尻餅をついたまま、涙と鼻水が混ざった形相で俺に抱きついてこようとする。
「た、田中君、僕ら生き延びたよおおお」
オッサンを剥がして、放置すると俺は冷静に胸を撫で下ろす。さっきのやつはうちの校内のやつじゃなかった気がする。てか学校で銃声がしたってことは銃撃されているのか。誰に?なぜ?俺らをなんで殺さなかった?何のために?虹は知っていたのか?
いや、あいつのことだ。ほぼ確実に知っていただろう。
俺のゲーム脳が高フレームで加速する。
てかさっきの射撃はどう見ても上の階から来てるよな。うちの教室か?それともどっとか他で戦闘があったのか?
もし女の奴らが銃とか呼べるなら、今拾うのがアイテム入手のチャンスじゃね?
ここに止まっていてもイベントは進まないし、ここを出よう。
暫くしてそう結論づけると、俺は止めて来たオッサンを振り払って、しゃがみながら足音を消して職員室の外に出た。
そのまま階段を伝って慎重に上に登る。手すりについた赤い血、鉄の錆びた匂い、生々しい匂いに俺の胃が限界を迎えて逆流する。
「うぇっ、おえっ。」
一通り胃袋が空になると、口を拭う。あれ、俺もしかして昼のホットドッグまで出したんじゃね。勿体な。
階段を登れば登るほど、悲惨な状況が広がる。遂に2-1の階に辿り着く。上がってすぐの廊下に見覚えのある可愛いクマのヘアピンが転がっていることに何とも言えない気分になる。
赤髪ちゃん、お前もやられたのか……
2-1の扉は激しく争った形跡が残っており、扉の半分に細かい銃痕の穴がいくつも空いていた、一部は木の板が抉れている。
「ひっ!」
俺は覚悟を決めて中を覗くも反射ですぐに扉を閉めてしまう。
口にリバースしかかっていたモノをまた腹に戻す。
意を決して再び開けると、カウボーイの格好のままサイドテールちゃんが血の海に倒れていた。腹に数発弾を受けたらしい。
そっと彼女の目を閉じてあげる、こころの中であーめん、と祈りを捧げた。
濁っていた空気を換気して、憂鬱した気分の俺は爽やかな外の空気を肺にすっかり吸い込むと、気が楽になった。
地面に転がっていた、銀色で2丁のリボルバー式拳銃を見つめる。
もう使わないなら、俺が使ってもいいよな。
もしかして俺でも弾浮かべながら、リロードなしで撃てるんじゃね?
チートアイテム、ゲットだぜ!
そう思って、拾い上げる。手に持つとかっこいい銃身の刻印が黒く光る。
手で持ってポーズを取って、試しに壁に向かってトリガーを引いてみる。
カチカチ。カチカチ。
特に何も起こらない。
て本人以外はただのガラクタじゃねーか。これえぇええ。
そう思って、地面に勢いよく投げつける。
つってもなんかの役に立つかもしれねーし。これでビビらせられるんじゃねーか?
そう思って、再度片方を持ち上げてポケットしまいながらもう片方を右手に装備していると、
ふと教室の開いた扉の外のやつと目が合う。
「あっ。」
正確には黒いヘルメットと目が合った気がした。
「これは、その、何つーか、散歩で来たていうか、俺はただの無害のモブなんすけど、さっきみたいに見逃してくれたりってしますかね。」
そいつはアサルトライフルを構えたまま、俺の全身を一瞥すると躊躇なくトリガーを引いた。
パンパン!パンパン!
バーン!
ですよね。
見逃してくれるわけないよな。知ってた。
薄れていく意識で、ヘルメット野郎が立ち去る背中が見え、俺はサイドテールの隣に倒れた。
DEAD END : 6




