第22話 水色の悪魔
激しい雨だ。
窓を大振りの雨粒が叩きつけるのを横目で見る。
今日は天気が悪いな。
台風でもくるのか?
俺は副委員長の用意してくれたカツ丼を貪る。
部屋にあった机に置かれたPC端末でゲームをプレイする俺。
昨日の夜を俺は無事に5体満足で明けた。
それどころかかなり至り尽せりだ。
今着てるのは副委員長が俺の為に新しく買ってくれた新品の服一式。
パンツもしっかり揃えてくれた。
スースーしていないのが少し寂しい。
虹のジャージ直履きしたのも悪くなかったと振り返る俺。
相変わらず俺の右足は鎖に繋がれている。
一一一一一一一一一一一一一一一
「ちっ、こいつ、エイム終わってんだろ。」
対戦ガンゲームの野良マッチで味方になった下手くそな奴を、俺はチート使用の理由を選び通報する。
スナック菓子が食べたくなったので、机に置かれたベルを鳴らす。
数分後、中世のメイド服を着た副委員長がトレイを持ってやってくる。
メイド服は俺が喜ぶからというので朝から着てくれていたのだ。
「西宮君、どうかしましたか?♡」
可愛いなあ。
ん、じゃ。
俺はお腹をさすりながら、副委員長に注文を言う。
「ええと、コンソメ味のポテチてあるかな。お嬢さん。俺欲しいかも。」
俺は再びpcの液晶画面に向き合う。次はルームでもっとマシなやつを呼んで対戦するか。
一一一一一一一一一数時間一一一一一一一一一
副委員長は、彼女はいない間に俺がトイレに行けるようにすんなり鎖を解除してくれた。
「西宮君。悪い子しちゃだめですよ?♡」
副委員長が指でドアの指紋認識を開けて外に出る。
副委員長が玄関から立ち去るのを見送る俺。
立ち去ってから数分後。
試しに玄関のドアをこじ開けようとしたが開かない。
オートロックかよ。
他の窓や、庭の窓もそうだ。全て試したが、全部が鍵掛かったようで押しても引いてもびくともしない。
どうすっかな。
逃げるのは無理そうだ。
疲れて家のリビングの椅子に身を投げ出す俺。
ダメ元で何か手かがりを探すか。
俺は、副委員長が外出したぽいので部屋を探検してみることにした。
この家は俺が歩き回った感じは3階に分かれいる一軒家だ。
一番上の階は俺と副委員長の寝室に、すぐ隣の物置部屋。2階は謎の二つの部屋があって、一階のリビングと風呂場、キッチン等がある。
俺は副委員長の寝室の机から持ってきた赤ペンでティッシュに部屋の見取り図を書く。
物置部屋はさっきちらっと見た感じ奥行きは大してなかったし、何か隠せる空間も無さそうだ。
…….
となると、一番何かありそうなのが、2階の二つの部屋だな。
俺はささっと、赤ペンで2階の部屋にばつ印を付ける。
行ってみよう。
一一一一一一一一一一一一一一一
ギシギシ。
階段の床を踏んでフローリングされてる床がキシキシ音を立てる。
2階にたどり着いた俺は扉の前のドアに張り紙を見かけた。
『優斗の部屋』
俺の字と同じぐらい汚ったない字だ。小学生が書いたのか?
取手を掴み開けてみる。
中は電気が付いておらず薄暗い。
目を凝らして見ると
綺麗に整理整頓された男の子の部屋のようだ。
奥にも部屋があるのか小さな奥扉がある。勉強部屋なのか、光がちょっぴり漏れ出ている。
特撮ヒーローのでかいフィギュアが本棚に飾ってある。
副委員長、弟といたんだ。
良く掃除されているみたいで埃が一つない。
俺を連れ込んだの親御さんにバレたら怒られないか?
まずは弟君にお兄さんとして挨拶しよう。
そう思って俺は、部屋の奥ある小さな扉に向かう。
中に弟君入っているのかな?満面の笑みを浮かべ、挨拶のセリフを考えながら俺は弟君の部屋の奥扉をノックして開く。
「やあ!弟君、君のお姉さんにお世話になってる西宮ていうだ!よろしー//」
俺の目に飛び込んできたのはライトアップされた仏壇と三つの並んだ遺影。ニコニコしていた俺の表情が固まる。
恐怖して尻餅を付く。
うぇっ、最悪だ。
中の部屋は勉強部屋ではなかった。
亡くなった副委員長の家族を祀る部屋だったんだ。
俺は慌てて気味悪くなって部屋を飛び出そうとする。
誤ってぶつかけた本棚が揺れ、特撮ヒーローのフィギュアが地面に落ちるそうになる。
あぶねっ!
これ、デジャブ一///。
俺は、咄嗟に超低姿勢になりスライディングしてギリギリでキャッチする。
ドンッ!
ガシッ。
俺を舐めてもらっちゃ困るね。
頭を棚の足にぶつけたらしい。でもフィギュアが無事なら問題ないだろう。俺は、体を起こそうとする。
グワァー!
木が軋む音がする。
上を見上げると俺が角に頭をぶつけたせいで本棚ごと倒れて来た。
クソが。
まじで付いてねえぇええ!
そのまま俺は下敷きになった。
ガシャン。
手に持っていたフィギュアも割れたらしい。刺さった破片と全身に掛かる重みのある本を退かす俺。
まじで死ぬかと思ったわ。指が切れて血が出る。
もうこの部屋から出よう。後で副委員長に謝って許してもらおう。
!?!
俺は急な殺気を感じて振り返る。
部屋の入り口には買い物袋を手に何個も持った副委員長の姿が。
彼女はどさっと袋を無気力に落とすと、袋の中から鋭利な高級なナイフを引っ張り出す。
「どうして……どうして………悪さをするですか。
どうしていい子にできないんですか………。どうして私の思い出を壊すんですか…….。」
少女は絶望した表情を浮かべ、その瞳の奥でピンク色のハートのマークがずっと怪しげに光る。
迫りにくるナイフに俺は赦しを乞う。
「ひっ!待って副委員長。わざとじゃないんだよ。」
「棚が勝手に倒れてきて」
副委員長は俺を遮って続ける。
「なんで……..私の見捨てるんですか。また一人にするんですか………あなただって私を一人にするんですね。西宮君。」
聞いてねえわ。こいつ。
今のうちに逃げよう!俺は隙を見て腰を起こそうとする。
クザッ!
痛えええええええ!!
俺の太ももに容赦なくナイフを突き刺してすぐに抜き取る副委員長。
俺の血が勢い良く吹き出し、地面に散らばった本に染みて赤く染めていく。
俺は太ももを押さえてのたうち回る。
壁のはじまで尻餅ついたまま逃げていく。
副委員長は彼女の頬を伝って流れる涙を手で拭いナイフについた俺の血を振り落とす。
「優しくしたのに…….好きだったのに…….。ずっと一緒に暮らしたかったのに。
西宮君、あなたも虹ちゃんみたいに私を嫌っていくんですね。」
俺の肩を狙ってくるナイフ。
「や、やめっ、やめてくれ」
俺の制止を無視し、ナイフはスピードを落とさない。
咄嗟に庇った腕が抉れて刻まれる。
スッシャー!と力任せに刃物を引く副委員長。
一部の俺の肉だったものが地面に落っこちる。
「ひぃいいいい!俺の腕ぇええええ!」
頸動脈をやられたせいか
豪快に飛び散る俺の血が床に血溜まりを作る。
俺は抵抗する力を失い。だらんと壁に寄りかかって転がる。
彼女は質問責めにしながら、そんな俺の体を何度も何度も執拗に切り刻む。
肩、腕、太もも、指の俺の体だったものが抉れて、痛みが麻痺してきた。死にゆく中で俺は狂った彼女の躍動を静かに眺めた。
この世に悪魔がいるならこういう者のことをいうのだろう。
彼女のすらすらの水色の髪に俺の返り血が染み付いて先端から滴る。
紅い月の光と外で轟いた雷が部屋の窓を通して彼女の顔を照らしつづける。
彼女は泣きながら血だらけのままナイフを振い続けた。
ああ、
なんて美しい
水色の悪魔だ。
と、
俺はそう思った。
DEAD END : 9




