第21話 物憂げな少女
コトコト。
…….
コトコト。
…….
コトコト。
…….
何の音だ?
動けない体。
全身を触られてるような感じがする。
めっちゃ痒い。
たしか…..俺は夜、副委員長とカレー食ってて……
…….副委員長のレモンの匂いのガスにやられて誘拐されたんだ。
…….
俺は死んだのか?
闇に包まれているようで目は開けられない。
今は不思議と少しも痛くない。
それどころかすごく心地がいい。
まるで高級ホテルの低反発の安眠枕に全身を委ねているみたいだ。
そして、お股もスースーしない。
まさか、死んでリスポーン地点が変わったのか?!
またあの下水道はこりごりだぞ。
俺は暗闇の中で取っ掛かりを見つけようとまさぐる。
何か盛り上がったものを見つけた。
これは…….
ふわふわで、柔らかくて、両手にすっぽり収まる。
俺は夢中になって取っ掛かり所としてそれを掴んだ。
先の方が尖っているな。
これはなんだ?
夢中になって模索していると、その物体は素早い動きで消えていった。
??
下水道のどデカいふわふわモンスターか?
このクソゲーならありそうだな。俺はさらに床を触ってみる。地面は平地のようだ。
ふむふむ。
でもおかしいな。
なんでこんな、高級布みたいな感触がするんだ?反発式の地面なのか?下水道のくせに?
サワサワしていると、突然目隠しが取れる。
???
ここは?
青い布団が敷いてあるベッドの上で布団を弄る俺と、恥ずかしそうに自分を体を抱き抱えるパジャマ姿の副委員長。
あれっ?俺死んでない??!?
副委員長、パジャマ?
さっきの塊て?ー//
副委員長は立ち上がってすぐに逃げるように部屋を出ていく。
状況を判断して流れる鼻血をキリッとした顔で拭く俺。
危なかった、なんという魔物だ。危うく、命を落とす所だったぜ。
にしてもなんで副委員長は俺を殺さなかったんだ?
ヤンデレ化もしていない気がする。
となると……
俺はリープしなかったのか。
暗い部屋の窓の外を見る。みんな寝静まったのかシーンとしている。外はどうやら住宅街のようだ。
窓の外をもっと見ようと動こうとする俺、
ジャラン。
地面に降りた俺は、右足にベッドの傍から伸び鎖がかけられているのを発見した。窓までギリギリ辿りつけるがもっと遠くは無理だ。
引っ張って見てもびくともしない。
戻ってきた副委員長がドアをノックして部屋に入ってくる。
手に持ったトレイに温かい牛乳と、湯気ののぼるおしぼり。
なんの罠だ?!
身構えていると、副委員長が目を逸らして俺の服を脱がす。汗ばんだ俺の上半身が顕になる。
くるのか?
殺すなら一思いにやってくれ!
歯を食いしばって、目を瞑っていると、身体を湿ったもので擦られる。
これは、新しい拷問か?
俺の首元や腹も執拗に何度も擦られる。
遅効性の攻撃なのか?!
そのまま口にコップの口を当てられる。
これは毒なのか?
さては牛乳に毒を入れたんだな?俺を苦しめて殺したいんだな。なんて腹黒い女の子なんだ!副委員長!!
俺は絶望しながら毒が入った牛乳(仮)を飲み干した。
彼女は俺の口を丁寧に拭き、
細い指で服のボタンを締めてくれた。
そのままの抱きついてくる副委員長。
今度こそ俺を絞め殺す気なのか?!
慌てる俺をただただ抱きしめる副委員長。
暫くして俺は落ち着いた。
彼女の心臓の音が体を伝って俺の鼓動を上書きする。
ドクン、ドクン。
レモンのシャンプーのいい匂い。
あれっ?
もしかして俺を殺す気はない?
ええと、整理してみよう。
外は黒メット。小メット。俺の命を狙うヤンデレどもがうじゃうじゃ。
ここは誘拐されてて鎖に繋がれてるけど、優しいパイパイ超デカい、俺に甘々の美少女付き監禁部屋。
これもう、監禁部屋じゃなくてSSS級美少女嫁付き3食飯付き引きこもり最強シェルターじゃね?
彼女の体は少し震えているのがわかる。
きっと俺を誘拐したのも何か事情があるのだろう。
本当はただ一人孤独な弱い女の子なのかもしれない。
俺は素早く適応して彼女を力強く抱き返す。
「田中君、本当のお名前はなんですか。」
俺は面をあげて、
副委員長の可愛い顔を見つめる。黒い物憂げな瞳。纏めていない青い髪がすらっと伸びいて幸薄そうな物憂げな雰囲気を醸し出していた。
「俺は本当は西宮錦ていうだ。宜しくな。副委員長。」
俺は彼女の綺麗な瞳を見つめてそう伝える。
ああ、女の子のいい匂い。ぐへへ。
「教室で目があった時に好きになったんです。そして分かりました。貴方は転生者だと。」
まじかよ、あの時にもう俺のメロメロ能力発動したのか?教室見渡した時に?!
俺はやらかしたことの重大さを思い知った。
だから抑制薬も効かなったのか。
「西宮君、もう攻略はやめて私と暮らしませんか。」
副委員長の瞳は悲惨な色を映していた。まるで深夜俺の部屋でえ◯げのプレイ中に音が出て、弟にバレた時のような後悔とやるせなさ、絶望の匂いがする。
彼女の瞳の中でハートのマークが時折点滅していた。
もう彼女のことは恨んでいない。
俺は開き直って生きていくことにした。
俺は男前な顔を作って彼女の瞳を真剣に見つめる。
「お嬢さん、俺で良ければ。
不束者ですが宜しくお願いします」
彼女が茹でられたタコのように赤くなって俺を振り解いて逃げていく。反動で地面に転がっていく俺。
ぐっ。
副委員長め。手強いな。
ここで物理攻撃とは……
予測してなかったぜ。
一一一一一一一一一一一一一一一一一一
再度仕切り直して、二人で狭い布団に寝っ転がる。俺を後ろから抱っこしてくれる副委員長。
誘拐?監禁?拷問?
ノー、ノー、ノー。
ここはただの天国です。
俺は暴れるエクスカリバー抑えるのに必死で、一睡もできなかった。




