第19話 うっめえー味、騙されないぞ?
俺は油を鍋にドカドカ入れて行く。
こう見えて自炊はよくしてたんだ。
ジャガイモとニンジンの皮を剥き終えて、副委員長に一口サイズに切ってもらった。
冷蔵庫にあった高そうな牛肉も鍋にぶち込んだ。
タマネギは嫌いだから入れない。
肉が色が変わるまで炒めると、俺はジャガイモとニンジンを入れて混ぜながら炒めた。
副委員長には野菜を切るのしかやってもらっていない。何かを入れられたら怖いからな。
俺の隣で副委員長は、俺が炒めるのを観察しているみたいだ。狭いキッチンなのでたまに副委員長の体の所にぶつかりそうになる。
「飯は良く一人暮らしで作ってたんすよ。」
炒めながら振り向くと室温が高いからか、彼女の唇が潤んで見える。顔が上気してて赤い。
やべ、換気しないと、俺は急いで換気扇を開ける。
倒れそうになる副委員長。
おおおおぉ!高感度ボーナスイベントだ!!
さりげなく、倒れそうになる彼女を支えようと、俺は姿勢を低くしてキャッチできるように両手広げる。
さあ、ドンとこい!
目を閉じて待っている俺。飛び散った油で床がすべすべしていたのもあり、俺は姿勢を崩してそのまますっ転ぶ。
ドゴンッ!
倒れた所に副委員長の背中が俺の顔面にクリティカルヒットする。
「ぐっは。」
フラフラのまま、俺はボコボコにされた顔で
今世で一番のイケメン顔を作り副委員長を気遣った。
「大丈夫ですか?お嬢さん」
副委員長は、下敷きにされて顔が腫れ上がった俺をクスクス笑う。
ツボにでも刺さったらしい。
一通り笑い終わると、副委員長は俺に謝罪と感謝し、俺の顔を虹んちの医務箱で手当てしてくれた。
いってえな。昨日の背中の古傷も痛むぜ。
俺は最後にカレーのルー入れて煮込み始めてると、再びソファーの副委員長の所に行った。
副委員長の指が俺の顔を綿棒で優しく撫で撫でしていく。なんかすごい変な気分になる。ほっそい指が俺の顔の上を行き来きする。
「田中君、やりずらいです。顔を私の膝の上に乗せてもらってもいいですか?」
ひ、膝枕??!しかも美少女から?!
虹悪いな、俺はもうニューホームを見つけたかもしれん。
俺はさっそく、横になって顔を副委員長の膝枕に乗せた。
ぷよーん。
何のこの弾力感。まるでトランポリンに乗せられたように俺の頭はちょっと跳ねた。
虹のスリムボディーとは異なる新世界だ。
俺は新世界に辿り着いだぞ!諸君!!
副委員長が俺の顔面を胸元に固定して、綿棒で優しく腫れた俺のおでこに擦り付ける。
俺は眼を閉じて今を楽しむことにした。
何度も俺のおでこの敏感な所を綿棒でゴシゴシされる。
最初は痛かったのもだんだん、薬が染みてくると、痛さに気持ちよさを見出した。
優しく触られてると、変な気分になる。
いやーん。そこだめーぇええ。
一一一一一一一一一一一一一一一一一一
数分後、副委員長は綿棒を片して、俺に処置が終わったことを告げる。
俺は顔に満遍なく塗られた薬にお礼を言い。膝枕から飛び起きる。
ふーう。危うく、快感から何かに目覚めそうだったぜ。
一一一一一一一一一一一一一一一一一一
待ってるのも暇だったので、副委員長に彼女が興味ありそうな、虹の話をしてあげた。ドSで、昨日俺をベランダに土下座にさせたこと。相変わらずめっちゃ毒舌なこと。俺に当たりが強いこと。
そして…….
本当はめっちゃ世話焼きで寂しがり屋でいい子だってこと。
俺はどんな事情かわからないが、副委員長にも虹と仲直りして欲しい。
そう素直に彼女に告げた。
副委員長は俯いたまま感動したのか、お目目に涙を溜めてうなづいた。
それからもしよかったら明日3人でキャンプに行きたいと言われた。
俺はどうせならと思って虹に手紙を書いてやることにした。あいつのことだから帰ってくるのが遅い気がしたからな。副委員長は自分のことを明日まで秘密にして欲しいと俺に言ってきた。
明日サプライズでもしたいのか。
俺は、書斎から持ってきた紙とペンですらすら書いていく。
虹へ
明日山へキャンプ行こうぜ。サプライズもあるわ!
俺が寝てたら作ったカレー温めて食えよ!
by親愛なる天才イケメン
ブーブー!
書き終えると丁度調理用タイマーが鳴り出す。カレーできたのか!
俺は書いた紙をテーブルにいる副委員長に手渡して、カレーを取りにいった。
ジャッジャン。
俺はご飯を盛り盛りにした2皿に、カレーついでテーブルに運んだ。
カレーの香辛料と独特の脂の匂いに俺の腹が極限状態になる。
俺は待ってくれていた副委員長の向かい側の席に着いた。
副委員長も多分いい奴だな。
でも念の為ために副委員長に先に食ってもらおう。九里ちゃんの惨劇はもう繰り返したくないしな。
いくら「ぽよーんぽよん」してるからって騙されないぞ?
俺は副委員長にスプーンを渡して勧めた。
「お疲れっす!いい感じに出来ましたね!カレー。是非最初の一口をどうぞ!」
副委員長はニコニコしている。
さあどう来る?ここで拒否したら俺は食わないぞ。
「はい。ではお先に一口頂きますね。」
迷わずご飯とルーをスプーンに乗せミニカレーを作って副委員長は口に運ぶ。
「美味しいです!」
目を細めてめっちゃ美味そうに食う副委員長。
俺は毒気を抜かれて、一口掬って口に運ぶ。
ん?!
ルーにコトコトに煮込まれたジャガイモの一部がとろけて混んでいてさらに濃厚になっている。
そして特筆すべきは噛めば、蕩けるように柔らかい牛肉。
「うまいすね…..」
ルーが少し辛いが、そこがご飯とよく合う。
俺は掻き込むようにカレーを平らげた。
もう三杯ぐらいおかわりしたかな。まだルーは半分ぐらい残ってるから。虹のやつも足りるだろう。
副委員長はおかわりしなかった。少食なのかもしれない。
俺は盛ったカレーを綺麗に胃袋に送り込むと、テーブルで少し休むことにした。
お腹いっぱい。
副委員長も満足げだ。
ちゃんと完食してくれたみたいで、めっちゃ嬉しい。
副委員長からなんかいい匂いがするな。なんか虹のみかんの匂いとは違う。酸っぱいような匂い、そう、レモンみたいなの匂いがする。
にしてももう20時だぞ。虹のやつ遅いな。俺は腕時計を確認して、心配するのだった。




