第12話 抵抗のち無理ゲー
遠く学校の方で銃声がまだ続いている。
暗闇の中で俺は地面に横たわっている。
ここに入ってからかなり時間が経った気がする。
念の為に電気はつけていない。
砂でも敷いてるのか少し肌がカサカサする感じがする。
ドサッ
俺の隣で鶏がほっかほかの臭いモノをドロップしていく。
もう日は落ちたみたいだ。
窓から見た外は真っ暗で何も見えない。
虹のやつ、今度会ったら覚えてろよ。絶対泣かしてやるよ。
俺はこの世界に来てからあまりにも色んなことがあったことを思い出す。
学校の襲撃、ショットガン、毒サンド、ポニーみたいに震えるオッサン。
そして、性格が人間界からログアウトしてる虹。
我ながらえ◯げをやっていた頃からは想像がつかない日々だ。
両手をゆっくり天井に向けて伸ばす。
痛いし、クソ臭いし、ヤンデレかう◯こみたいな性格のやつしかいないけど、なぜかこの命懸けのクソゲーが楽しくなってきた気がした。
そう回想にふけていると額の上に滴る生暖かいモノを感じる。
鶏がすっきりしたような顔をして俺から離れた。
「っ?!糞鳥が!とっ捕まれて焼き鳥にしてやるよ!!」
ブチギレた俺は頭に血が登って逃げていく鶏を追いかけようとする。
一一一数十分後一一一
俺は糞鳥を捕まえるのを諦めて、大の字になっていた。
夜になると少し心細い、ああ、俺のりんりんたちは元気してるかな。
呑気に妄想に耽っていると、小屋を、肌を指すような冷たい風が走る。
俺の肌に鳥肌が立つ。
嫌な予感がする。
頻繁に殺されてるせいで、とある蜘蛛ヒーローみたいなセンスが俺の体で芽生えたのかもしれない。
俺は急いで体を起こし、木造小屋のドアの後ろに隠れた。
案の定、暫くしてから小屋のドアがキィーと、音を立てて開く。
突き出た銃口が見える。
おいおい、よりによってお前かよ。
小メットならまだ振り巻いていける自信があったのに。
もうそんなに俺にしつこく付き纏って殺そうとすんなら、俺もやってやんよ。クソメットが。
俺はポケットからずっと教室から持ってきていた定規を取り出して構える。
やつが入ってきたら定規をメットに当てて、混乱してるうちにメットを殴って気絶させてやるよ。コンニャロ。
パカッ!
突然、暗い部屋の中がドアの方からライトに照らされる。
メット野郎慎重深いな。もうさっさと早く入れよ。
暫くそこら中を照らしたかと思うと、黒メットはライトが出たまま小屋の入り口に足を掛けた。
そのまま奴は堂々と中に乗り込んだ。
今だ!
俺は渾身の力を振り絞って定規をぶん!と振る。
俺の定規が奴のメットに衝突しようとしたその時。
ガッシャー!
俺の定規が何かに物凄く硬いモノに弾かれて、勢いよく俺ごと後ろに吹き飛ぶ。
俺は吹き飛びながら大きく目を見開く。黒メットを中心に球状のピンク色のバリアが見えたからだ。
奴が俺に気がつくと持っていた懐中電灯を俺目掛けてノーモーションで投げつける。
顔面にモロにくらって頭がふらふらする。
俺は脳震盪を起こしたのか、頭が上手く回らない。視界がゆらゆら揺れて気持ちが悪い。
揺れる中、黒メットが淡々と俺に向けてライフルを構えたのが見えた気がした。
ここまでか。ついてないわ。次、虹のやつに会ったら今度は俺が置き去り(デコイ)にしてやろう。
と俺は誓った。
暗闇の室内が一瞬、火薬の爆発で光った気がした。
パンパン!
バーン!
DEAD END : 7
はっと目覚めると、目の前でトランプを持っている虹がいた。
「ねえ、早く引いてよ」
リバースしないように口を押さえてる俺に虹は急かす。
「どっちがババでしょうか♡。当ててみて」
イライラが限界に溜まった俺は持っていた2枚の手札を黒メットから学んだフォームで、ノーモーションで虹に投げつける。
「ぎゃーっ」
虹が顔を押さえて俺に文句を言う。
「何すんのよ。バカなの?いくら負けそうだからって」
俺は拗ねてヘソを曲げる。
何かを察した虹は少し考え込むと、俺に手に持った手札を見せる。
「また戻ってきたのね?見捨てられた?クソザコじゃん、乙www」
この野郎、生まれてこの方、女は殴ったことなかったが、今は男女平等がいいんだろ?グーで行っていいか?
そう思っていると、虹が手に触れてくる。
「見捨ててないよ、今回のあたしはね。あんたどうせ生き返るんだから拗ねないの。ほらこっちきて。」
怒る俺の頬を指で突きながら虹は言う。
ちょっと怒りも少しずつ晴れてきたから、条件付きで許してやろうと思う。
てか指ぷにぷにして柔らかっ。
「マンホール行くんだろ?今度は俺が先頭行くからお前が後ろからこいよ。」
虹は少しも躊躇わずに了承する。
もう少し反論されると思っていた俺は呆気に取られて毒気を抜かれる。
「どのみちあたしがいないと、君死ぬからね。まあ後だろうと先だろうとあたしは生き残るよ」
やたらと自信たっぷりに虹は続ける。どこからここまで自信が湧くかまったく理解できないし、虹が偉そうなのは変わらない。
俺ははあーと、ため息をつく。
俺は先頭を引き受けることになり、また裏庭で 四足歩行で少し濡れた土の上を這っていく。
てかこれもっかいやんの?
俺の後ろで虹が器用に周りを警戒しながらついてくる。
どうやら俺の異世界道は這って進むものらしい。




