< 41 この世界に就任した神 十七柱目 18 冒険者ギルド誕生までのお話 17 >
< ブレナン視点 >
商会で魔道具を売り出してからしばらく経った。
魔道具の評判は上々だ。
いずれ大きな利益を生む様になるのは間違い無い。
魔道具の作り方を発見した者に感謝だな。
しかし、十分に儲けられてはいない。
魔石が十分に集まらないからだ。
魔石の買い取り価格を引き上げた後、斡旋所に冒険者たちが戻って来た。
一時は冒険者たちとの関係が悪化したが、魔石の買い取り価格を引き上げた事で、関係が改善した。
『現金なものだ。』とも思ったが、それで我々も助かっているのだから、文句を言うのは筋違いだろう。
多くの冒険者たちが、斡旋所に魔石を持って来て換金している。
しかし、ウチよりも多くの魔石を買い取っているところがある。
斡旋所を内側で三つに分割した際、一番北側のエリアを割り当てられた商会が運営する支店に、より多くの魔石が運び込まれている。
彼らの支店は我々の支店とは違い、元冒険者の職員を解雇しなかったらしい。
その為、冒険者たちと良い関係が続いていて、ウチよりも多くの魔石が運び込まれている様だ。
また、ダンジョンにより近いというのも良い作用を及ぼしている。
ダンジョンに行って魔物の素材を採取してくる依頼を、ベテランの冒険者たちに出している様だ。
まだ我々の方が多くの職人を抱えているが、我々の優位を脅かしかねない状況だ。
何か対策を考えなければなるまい。
報告を受けた。
魔道具の製作に遅れが出ていた。
「我々が抱えている職人たちに、国が命令して魔道具を作らせています。」
むむむ。
国も魔道具を欲しがるのは当然だな。
だが、我々の抱えている職人たちを使われるのは困る。
我々の抱えている職人たちが、王都から近い場所に住んでいる事が災いしたな。
魔石は集まらず、職人も取られては、魔道具の販売で利益など出せない。
どうすべきか?
魔道具の製作拠点を移そう。
王都から遠い場所に。
どうせならダンジョンの近くが良いだろう。
ダンジョンの近くの街に在る商会の支店内に魔道具を製作する拠点を作ろう。
魔石の買取りを商会でしてしまうと問題になるから、その街の斡旋所から魔石を買わなければならなくなるが、職人は我々が一番多く抱えているのだ。
魔道具の販売で、他所よりも多くの利益を出せるだろう。
早速、対策に乗り出した。
< 国王視点 >
『冒険者斡旋所の経営が好転した。』との報告を受けた。
うむ。
盗賊を討伐した事もあるが、魔道具が作られる様になったのが大きかったのだろう。
きっと、斡旋所はこれからも利益を出し続けるだろう。
『クレイトンが動くはずだ。』
そう思うと笑顔になってしまいそうになる。
だが、表情に出ない様に平静を保つ。
「で、奴の動きは?」
「クレイトンに動きは見られません。」
うーむ。動かぬか…。
まだ、動く時ではないということか。
大きく成長してから奪い返すのだろうか?
奪われた復讐ならば、その方が効果的だろう。
ワシが斡旋所を手に入れるのには、今の方が都合が良いのだがな。
うーむ。
やはり、すべてを一度に手に入れようとするのは、都合が良すぎるか…。
クレイトンが動かぬ以上、すべてを一度に手に入れるのは不可能かもしれん。
クレイトンが動かぬ場合、どうするのが最善なのかを検討する様に指示を出して、下がらせた。
一人になって考える。
魔道具が作られる様になったことで、魔石の価値が上がった。
それにより、冒険者たちへの魔物討伐と魔石の採取の依頼が多くなっている。
近い将来、森から魔物が駆逐されてしまうかもしれん。
そうなると、次に冒険者たちが向かうのはダンジョンだ。
ダンジョンでは、ケイニル王国が兵を派遣して、おかしな動きを見せている。
ケイニル王国を牽制する為に兵を派遣するのは悪手だ。
関係悪化どころか、不測の事態さえ起きかねない。
兵を派遣するのではなく、冒険者を使いたい。
何かが起きても言い訳が出来るし、使い捨ても出来るからな。
それをする為には、斡旋所に依頼するよりは、斡旋所を手に入れて指示する方が良いだろう。
多くの冒険者を使うことが出来るし、こちらの意図が外に漏れない様に対策することも容易だろう。
やはり、冒険者斡旋所は早く手に入れるべきだろう。
うむ。そうしよう。
検討結果が出次第、動く事にしよう。
検討を指示した二日後。
商人たちとの会食を終え、例の件の検討結果を聞く為に執務室に向かう。
最近の商人たちとの会食には、うんざりする。
魔道具関連の陳情ばかりだからな。
国王のお墨付きが無ければ何も出来ない三流商人だと、自ら主張している事にすら気付かぬ無能者たちだ。
一流の者たちは、自力で何とかして、会いに来た時には魔道具を献上していくというのに。
ただ、呆れるばかりだ。
秘書官の一人が走ってやって来た。
そして、言う。
「クレイトンが来ました。」
おお。クレイトンが来たか。
ワシが注目している超一流の商人。
是非とも自分の”駒”にしたいと、熱望していた。
奴がワシに会いに来たのは、あの斡旋所の件だろう。
奴があの斡旋所を奪い返す時に手を貸して恩を売り、奴に首輪を付け、ワシの”駒”にしようと思っていた。
その時が来たのだ。
協力は惜しまぬぞ。
その恩を高く売るがな。
ワシが『すぐに会おう、』と言う前に、秘書官が続けて言う。
「二代目と名乗る、若い商人です。クレイトンの息子だと言っています。」
奴の息子?
なんだ、本人ではないのか…。
落胆する。
「『先代は引退した。』と言っています。」
その言葉を聞いて衝撃を受けた。
「なん…だと…。」
ワシは思わず、その場に立ち尽くした。




