< 39 この世界に就任した神 十七柱目 16 冒険者ギルド誕生までのお話 15 魔道具誕生 >
盗賊が討伐された。
そのお陰で、冒険者斡旋所に商隊の護衛の仕事が戻ってくる様になった。
最盛期と比べれば、かなり落ち込んだままではあったが。
素材の買い取り価格を引き下げ、また、買い取る素材も、容易に捌ける物だけに限定した結果、素材の売買で利益が出せる様にもなった。
また、冒険者を評価する仕組みも立て直せた。
斡旋所は持ち直したと言って良いだろう。
しかし、ベイカーの失敗によって、これまでに出した損害は膨大だ。
もっと利益を出さなければならない。
ベイカーの苦戦は、未だに終わりが見えなかった。
『単に時間的猶予が出来ただけ。』、『何かをしなければ、やがて限界が来てしまう。』
ベイカーは、その事をハッキリと理解していた。
< 神さま視点 >
うーーん。
このままでは潰れるよなぁ。
どうしようかな?
うーーん。
よし、助けよう。
あの面白い男がどう動くのか見てみたいしな。
うん。そうしよう。
さて、具体的に、何をすれば良いのかな?
冒険者を強くする?
強い武器を与えて?
それとも強力な魔法を教えて?
いや、そんな事をしても、冒険者ギルド…じゃなかった、冒険者斡旋所の経営改善には繋がらないか。
強力な武器が盗賊の手に渡ってしまったり、強くなった冒険者が盗賊にならないとも限らないしな。
うーーん。
魔物の素材の価値を高めれば良いのかな?
そうすれば、冒険者斡旋所の経営改善に繋がるかな? 繋がるよな?
何か方法が有るかな? 魔物の素材の価値を高める方法って。
うーーん。
そうか! 魔道具か!
魔道具の作り方を教えれば、魔石の価値が高まるな。
魔石の価値が高まれば、冒険者斡旋所の経営改善に繋がるだろう。
幸い、魔石の在庫を沢山持っている様だし、これでいいだろう。
よし、そうしよう。
この世界の人間に魔道具の作り方を教える事に決めた。
地上に降りて、魔道具の作り方を教える人間を探す。
さて、どんな人間に教えればいいのかな?
魔道具を作るには、魔晶石が必要だ。
魔晶石を作る為には、魔石を加熱しながら圧縮しないといけない。
そういう事が出来る者となると、鍛冶師だろうか?
まぁ、鍛冶師に限定しないで、作れそうな人間たちに試させればいいだけだ。
最初は鍛冶師に教えることにしよう。
適当に見付けた10人ほどの鍛冶師に、夢の中で魔晶石の作り方を教えた。
そして、魔晶石が有れば、それを使って魔道具が作れる事も教える。
価値が分からないと、魔晶石を作ってくれないだろうからな。
上手く作ってくれれば良いがな。
教えた者の中に「あなたは誰ですかと?」と訊いてくる者が居たが、それには答えなかった。
この世界に来る時に、『”神”と名乗るのは止めておいた方がいい。』、『”神”と名乗って、心に傷を負った神も居た。』と教わっていたからな。
憶えていて良かった。
心に傷を負うのは嫌だからな。
翌日の夜。
今夜は、漁師に魔晶石と魔道具の作り方を教えた。
魔術師に教えようと思ったのだが、この国の漁師の方がレベルが高かったからな。
何故、漁師の方がレベルが高いんだろうな?
おかしな世界だな。
さらに翌日の夜。
引退した元漁師と魔術師にも、魔晶石と魔道具の作り方を教えた。
引退した元漁師たちの方が、現役の漁師たちよりも暇だろうからな。
魔道具作りに、より時間を割ける人間たちの方がいいだろう。
さて、これでしばらくの間、様子を見よう。
上手くいけば良いな。
その後。
鍛冶師と魔術師は、魔晶石を上手く作れなかった。
しかし、漁師と元漁師の何人かが、魔晶石と魔道具を安定して作れる様になった。
よし!
彼らは、【クリエイトウォーター】や【ファイヤー】の魔法の魔道具を作って、自分たちで使う様になった。
そして、友人たちに、『こんな物が作れた。』と見せたり、魔道具の作り方を教える様になった。
よし!
これで、魔道具の存在とその便利さが広まっていく事だろう。
夜。
夢の中で、魔道具を作れる様になった者たちに、商人のところへ売りに行く様に教えた。
あの冒険者斡旋所を経営している商人のところへだ。
魔石の価値に気が付いて、魔石や魔道具の売買に力を入れる様になるだろう。
そして、魔石の価値が上がれば、あの斡旋所の経営状態が好転するだろう。
俺は確かな手応えを感じて、これからどうなっていくのか見守ることにした。




