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< 37 この世界に就任した神 十七柱目 14 冒険者ギルド誕生までのお話 13 >


< クレイブ視点 >


各支店に怪しい奴らの情報を送ると共に、捕縛ほばくを命じた。

だが、捕縛したという報告は一件も来ない。

こちらの動きが、筒抜つつぬけになっているのかもしれない。

くそう。

盗賊たちに情報を流している者たちを見付け出して捕縛しない限り、盗賊の討伐のほう上手うまくいかないだろう。

くそう。

考えたが、すべての内通者ないつうしゃを見付け出す良い方法を思い付けなかった。

だから、盗賊の討伐を先にする事にした。

斡旋所の客である商人たちの被害を無くし、斡旋所の信用を回復させる事が重要だからだ。

盗賊を討伐し、商人たちの信用を回復させれば、内通者を探し出す時間的余裕を作り出せるだろう。

既に上の連中からの、盗賊の討伐依頼が貼り出されていて、人が集まりつつあるしな。

そうとも。

盗賊の討伐を先にしよう。


内通者が居る事を前提として、作戦を考える。

大きな商隊を組み、それを大勢の冒険者たちで護衛することにした。

そして、冒険者たちは五人で一組とし、内通者らしき怪しい動きをした者は捕らえる様に命じた。

無様ぶざまで、作戦と呼べるほどのモノでは無いが、仕方が無い。

これで、盗賊も内通者も減らせる事を祈ろう。

俺は、呆れるほどの大人数おおにんずうになった商隊を送り出した。


この作戦は失敗した。

三回、商隊を送り出したが、盗賊も内通者も、何の動きも見せなかったからだ。

かね沢山たくさん使っただけに終わった。


四回目からは、積極的に盗賊を探すことにした。

五人一組の偵察隊を複数出して、盗賊を探しながら商隊を進ませることにした。

今回は俺も商隊の護衛に加わった。


盗賊の被害が頻繁ひんぱんに出ている場所までやって来た。

偵察に出していた者たちが帰って来た。

その内の一隊が、盗賊たちを見付けたそうだ。

よし。

商隊の護衛に半数を残し、俺は半数を率いて盗賊の討伐に向かった。

盗賊を見付けたという場所まで行く。

だが、そこに盗賊は居なかった。

居た痕跡は有ったのだが…。

嫌な予感がしたので、急いで引き返した。


あらそっている声や音が、遠くから聞こえて来た。

商隊が襲われていた。

くそっ!

俺たちは、商隊に向けて必死に走る。

護衛の冒険者が倒れるのが、遠くに見えた。

また一人倒れるのが見えた。

くそっ!

俺たちが辿り着く前に、盗賊たちは引き上げて行った。

護衛にかなりの被害が出ていた。

やられた。

俺は、負傷者の手当てをさせてから、休息を指示した。

無力感を味わいながら。


商隊の被害状況を確認してみると、馬車が二台足りなかった。

訊くと、盗賊たちに襲われていた時に、馬車が二台、護衛の冒険者たちに守られながら商隊を離れて逃げて行ったとのことだった。

危険なことを。

いや、不安にさせた、こちら側のか。

無事で居てくれればいいのだが…。


死者を埋葬し、負傷者の手当てと休息を終え、商隊を進めた。

しばらく進んだ場所で、人が数人倒れているのが見えた。

商隊から逃げ出した商人と、まだ若い冒険者たちが殺されていた。

馬車は無かった。

盗賊に襲われて、馬車ごと奪われたのだろう。

しかし、倒れている冒険者の数が少ない。

…まさか。

逃げた馬車を護衛をしていた冒険者たちが、盗賊と繋がっていた者たちだったのか?

だから商隊を離れたのか!

手土産てみやげに、商人をそそのかして!

くそっ!


街に着いた。

惨敗だった。盗賊たちに。

くそっ!


数日、この街で仕事と休息をしてから帰路に就いた。

護衛の冒険者を追加で加える事は出来たが、商隊に加わろうとする商人は少なかった。

先日の一件で、さらに信用を落としてしまった様だ。

護衛の冒険者が盗賊に通じている現場を見られてしまったのだからな。当然だろう。

商人は冒険者を信用していないし、冒険者も他の冒険者を信用していない。

こんな状態で盗賊に襲われたら、どうなってしまうのだろうな?

何とも言えない不安な気持ちで、商隊を進めた。

帰り道では、さいわい盗賊に襲われることは無かった。

もし出会っていたら、どうなっていたのか分からない。

出会わなくて良かった。

俺は、何とも言えない無力感を感じていた。


店に帰り、ベイカーと話し合う。

「盗賊たちは手強てごわいし、冒険者同士の連携も不安だ。冒険者たちだけでは対処できないかもしれない。」

「…そうですか。」

「国に任せないといけないかもしれない。どうするか、上と相談してくれ。」

「…はい。」

重い足取りで商会に向かうベイカーを見送った。


店を上がり、俺は武器屋に向かった。

剣の手入れを頼む為に。

今回は使う機会が無かったのだが、『次に機会が有れば、絶対に討伐してやる。』と思って。

剣を預け、武器屋を出たその足で、酒場に向かう。

『呑まずにはやってられない。』と思ったから。


呑みながら、斡旋所を立て直す方法を考える。

しかし、良い案が浮かばない。

せめて、盗賊の討伐が出来れば、盗賊と通じている奴らも大人おとなしくなるのにな。

そうなれば、商隊が被害に遭う事も無くなるし、冒険者を評価する仕組みを立て直す時間的余裕も生まれるだろう。

…その盗賊の討伐に失敗したから、こうして呑んでいるのだがな。

色々考えたが、ただ酒の量が増えただけだった。

くそう。


呑んでいたら、酔った冒険者たちにからまれた。

一体いったい、どうなっているんだ? 」

「素材の買い取り価格は以前より下がるし、商隊の護衛の仕事も無ぇじゃねぇかっ。」

「俺たちに死ねって言うのか? ああ?」

「………。」

頭が回らない。呑み過ぎた。

「何とか言えよっ!」

「…一部の冒険者が盗賊と繋がっていた。その所為せいで、商人が仕事を持って来なくなった。」

「「「………。」」」

「…おい、おかしな事を言うなよ。そんな事にならない為の”評価の仕組み”じゃなかったのか?」

「…そうだ。」

「じゃあ、何でそんな事になる?」

「おかしいだろっ、評価の低い事を理由に仕事を斡旋しなかったくせに!」

「仕事を取り上げる為の言い訳だったのか!!」

「そんな事は無いっ。ちゃんと機能していたんだっ。以前はっ。」

何故なぜそんな事になった? グリアムが辞めたからか?」

「………。」

それは直接は関係無い。だが、無関係でも無いな…。

「お前がグリアムを追放したという噂があるが?」

「…俺は追放などしていない。」

そう。俺は追放などしていない。

グリアムが辞める切っ掛けを作ってしまったが…。

「クレイトンとかいう男の商会との関係を切ったのが失敗だったんだろ。何故なぜ、以前の商会との関係を切ったんだ?」

「素材の買い取り価格を引き上げる為だ。実際に上がっただろ。すぐに引き下げられたのは、俺も予想外だった。」

「確か、10日ぐらいで元に戻ったな。」

「ああ。…以前の商会との関係を切ったのは、確かに失敗だったと思っている。…今のはダメだ。」

素材の買い取り価格を以前よりも引き下げるし、経費削減と言って、今の状況を招きやがったしな。

今の商会と組んだのは、本当に失敗だった。

「以前の商会ともう一度組めば、以前の状態に戻るのか? ”ならず者”なんて呼ばれない、以前の状態に。」

クレイトンともう一度組む?

奴が、今の斡旋所を欲しがるか?

誰も欲しがりなどしないだろう。今のあの斡旋所なんて。

「…今の斡旋所の状態はひどい。立て直さなければ、どこの商会も手を出さないだろう。」

そうだ、立て直さなければ。

グリアムが作ったあの斡旋所を、俺が潰す訳にはいかない。

そうとも。

「…グリアムが作ったあの斡旋所を、俺が潰す訳にはいかない。必ず立て直す。」

そうとも。

”ならず者”扱いだった冒険者たちの地位を上げて、世間せけんに認めさせてくれたのだ。

「グリアムは、俺たち冒険者の恩人だ。あの斡旋所を、俺が潰す訳にはいかない。」

そうとも。

「立て直す、絶対にだ。」

「絶対に、グリアムが作ったあの斡旋所を立て直す。」


気が付いたら、俺にからんでいた男たちは居なくなっていた。

何も考えずに、金を払って酒場を出た。

家に向かって歩く。

『絶対に、グリアムが作ったあの斡旋所を立て直す。』と、小さく何度も言いながら。


家の近くで転んだ。

『ふっ、呑み過ぎた。』と思ったが、俺の周りに何人かの人の気配が有る事に気が付いた。

少し遅れて、肩を触られた感触が有った事を頭が理解した。

ん? なんだ? 俺は突き飛ばされたのか?

「貴様の所為せいだっ。」

「?」

「そうとも、貴様の所為せいだ。」

顔を上げると、何人かの男が居た。

『なんだ? こいつらは。』

ぼんやりと考える。

その時、視界の隅に光る物が見えた。

咄嗟とっさに体を引きながら、剣に手をやる。

が、剣が無い。

咄嗟に、体を地面に転がした。

ガキン

何かが地面にぶつかる音がした。

そしてまた、視界の隅に光る物が見えた。

剣が無い理由は無視して、体を引くと同時に腕を上げてかばった。

腕が飛ぶのが見えた。

熱い。

が、何が起きているのか、頭が理解してくれない。

慌てて立ち上がった。

肩が熱くなった。

『剣で斬られた。』と分かった。

『ヤバイ怪我だ。』とも、本能で分かった。

横に動き、逃げようとする。

肩のあたりを何かがかすめた。

ヒヤリとしたが、それを無視して、先ほどとは別の方向に数歩踏み出した。

そして、背中に重い一撃を受けた。

もう、『ヤバイ。』とかは考えられなかった。


ただ、『剣は手入れを頼んだったんだな…。』と思った。


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