< 36 この世界に就任した神 十七柱目 13 冒険者ギルド誕生までのお話 12 >
< クレイブ視点 >
商人たちからの苦情がかなり増えた。
一度は聞かなくなった”ならず者”という言葉も、再び耳にする様になった。
俺が何とかしなければならない。
グリアムが作ったこの組織を、俺が潰す訳にはいかないのだから。
しかし、今の俺に何が出来るのだろう?
今の俺には、まったくと言っていいほど発言権が無い。
『経費削減』の言葉の前に、今の俺はまったくの無力だった。
それを認めるのは、とても悔しいがな。
苦情を集めて、調べる。
だが、冒険者の情報が更新されていなくて、誰が、いつ、何処で問題を起こしたのか、さっぱり分からなかった。
苦情があった、いくつもの街へ人を派遣して、情報を集める事にした。
毎日の様に苦情が来た。
おかしい。
俺が店長になった時には、こんなにも沢山の苦情は来ていなかった。
盗賊たちの活動が活発化しているのだろうか?
副店長のベイカーも困惑している。
派遣した者たちが帰って来た。
まだ帰って来ていない者もいるが、集まった情報だけでもまとめてみよう。
三カ所ほど、被害が多い場所を見付けた。
そこを通る商隊の多くが、”未着”になっていた。
護衛の仕事を請け負った者の名前を見る。
未着になった護衛依頼を、複数請け負っている者が、何人も居た。
おかしい。
どういう事だ?
まさか、盗賊とグルなのか?
それぞれ違う街で請けた仕事だから、他の支店では把握できていなかった様だ。
この者たちは、支店間の情報の共有が不十分な事を知っていたかの様な行動をしていた。
経費削減の悪影響なのか?
他にも怪しい奴が居るかもしれない。
調べよう。徹底的に。
副店長のベイカーも同意した。
『経費削減』とか言っている場合ではないからな。
ランクの高い冒険者たちに依頼して、すべての支店の冒険者の情報を集める事にした。
それと、今分かっている怪しい者の情報を伝えて共有させよう。
俺は、ランクの高い冒険者を捕まえては、依頼をして送り出した。
支店の数が多いので、かなりの日数が掛かった。
情報が集まって来た。
護衛依頼をあちらこちらの街で請けては未着状態にしている、そんな怪しい者が、20人以上居た。
恐らく盗賊と繋がっているのだろう。
マズイ。
盗賊と繋がっている恐れのある者に、そうとは知らなかったとは言え、護衛の仕事を斡旋してしまっている。何度も何度も。
とんでもないことだ。
この斡旋所の信用を失墜させかねない大失態だ。
ベイカーも青い顔をしている。
困った事に、怪しい者の中にランクの高い者も居た。
Bランクのマレルという男だ。
以前、Aランクだった者の多くをクレイトンに引き抜かれてしまった。
その後にAランクに上がった者が多少は居たが、Bランクは、今のほぼ最高ランクだ。
ほぼ最高ランクの者の中に、盗賊と繋がっている者が居たなんて…。
このマレルという男は、商隊の護衛だけでなく、冒険者の情報を運ぶ仕事でも未着になったものが多数あった。
冒険者の情報を運ぶ仕事は、特に信頼の置ける者だけに任せている最重要の仕事だ。
最重要の仕事を、盗賊と繋がっている者にさせていたなんて…。
コイツの所為で、冒険者の情報が届かずに、冒険者を評価する仕組みが働いていなかった様だ。
さらに、何処に冒険者の情報が届いていないのかも、盗賊たちに知られていたのだろう。
いや、コイツだけの所為ではないな。
この斡旋所の大失態だし、大問題だ。
この斡旋所の信用を失墜させる、とんでもない大失態だった。
俺とベイカーは、頭を抱えた。
先ずは、怪しい奴の情報の共有だ。
そして、捕縛もさせよう。
これ以上、被害を出してはならない。
そして、盗賊も討伐しなければならない。
ベイカーに訊く。
「盗賊の討伐は誰がやるんだ? 国に任せるとウチの大失態が知られてしまう事になるのではないか?」
「………………。」
ベイカーは青い顔をして考え込んでいる。
そして、ブツブツ言いながら出て行ってしまった。
やれやれ。
俺は、冒険者の評価方法の見直しをしよう。
何とか立て直さなければならない。この組織を。以前の様に。
グリアムが作ったこの組織を、俺が潰す訳にはいかないのだから。
大変な状況だ。
だが俺は、久しぶりにやる気を感じていた。
< ブレナン視点 >
ベイカーがやって来た。青い顔をして。
付き合いの長い部下の一人だが、ベイカーのこんな顔を見るのは久しぶりだな。
最近は、自信を持って仕事をしている様に見えていたからな。
「………大変な事になりました。」
いつになく深刻そうな様子に、思わずグレンと顔を見合わせた。
「詳しく話せ。」
ベイカーの話をじっくりと聞いた。
想像以上に大変な状況だ。
ベイカーが顔を青くするのも当然だな。
冒険者の評価方法を早急に見直さなければならない。それと盗賊の討伐だな。
斡旋所の不手際だ。
国に任せずに、我々だけで片付けたい。
「我々の依頼で、冒険者に盗賊を討伐させろ。」
「…はい。」
「まだ大丈夫だ。今まで影に潜んでいた”ならず者”たちが表に出て来ただけだ。それを始末してしまえばそれで済む。」
「…はい。」
「金はいくら使っても構わん。キッチリ始末するんだ。」
「はい。」
少し顔色が戻ったベイカーを見送った。
グレンが言う。
「良かったのですか?」
「ああ。」
「経費削減で失敗した様に見えますが。」
「………そうだな。」
「”駒”の切り捨て時なのでは?」
「………それは、まだ分からん。」
グレンに答えつつ、俺は、この後どうすべきか考え込んだ。




