< 28 この世界に就任した神 十七柱目 05 冒険者ギルド誕生までのお話 04 >
< 神さま視点 >
面白い男が居るな。
興味深い。
うん。
興味深い。
こいつが何をするのか見てみよう。
面白そうだから。
< グリアム視点 >
『川に関所を作る計画なんて存在していなかったらしいな。』
あの日から俺は恐怖に囚われている。
クレイブに言われた、”あの一言”で。
あの日から俺は恐怖に囚われている。
『あの騒動は、クレイトンが仕組んだことだ!』
俺の直感が、そう叫び続けている。
隣街カムデンを押さえられた後、『舟を使おう。』と俺に言ったのは誰だ?
クレイトンだ。
『川に関所を作るそうだ。』と俺に言ったのは誰だ?
クレイトンだ。
『国王陛下に訴える。』と俺に言ったのは誰だ?
クレイトンだ。
カムデンの騒動の鎮圧の仕事を取ってきたのは誰だ?
クレイトンだ。
疑い始めたら、おかしい事が有ることに気が付いた。
関所を作る話を聞いて王様に会いに行ったクレイトンから、王様が『川を利用した水運でこの国を発達させてきたご先祖様たちを愚弄する行為だ!』と、激怒したと聞いた。
だが、領主ともあろう者が、そうなることを予測できないものなのだろうか?
おかしい。
カムデンの騒動の最中、領主の館が焼け落ちたのは何故だ?
ガザルドたちがしたと無意識に思っていたが、あの状況で奴らがそんな事をする理由など無いだろう。
おかしい。
前の領主を捕らえて王都に送っても死刑だと言っていた。
なぜ殺した? 口封じか?
何を知られたくなかった?
『川に関所を作る計画なんて存在していなかった。』ことをか?
カムデンの騒動を鎮圧した後、執拗にガザルドの関係者を討伐したのは何故だ?
ガザルドたちも何かを知っていたのか?
口封じをしなければならない何かを?
だから討伐し続けたのか?
王様から打ち切りが通告された後も!
鳥肌が立つ。
体が震える。
恐ろしい。
俺は、恐ろしい。
俺は、クレイトンが恐ろしい。
俺は『クレイトン斡旋所』を辞める。
絶対に辞める。
クレイトンに会いに行くのは、とてつもなく怖かったが、酒の力でなんとかした。
酔って「辞めたい。辞める! 辞めるんだ!」と喚く俺に、クレイトンはすごく驚いていた。
だが、俺が辞めることを認めてくれた。
クレイトンが認めてくれた理由なんかどうでもいいが。
クレイトンは俺に退職金を沢山くれた。
俺はそれを持って、すぐに王都を出た。
そのまま徒歩で。
馬車を探す時間さえも惜しかった。
俺は、早く逃げたかった。
奴から。
俺は西に向かう。
北のケイニル王国に行く気はない。
北へ向かう街道に沿って、すぐに奴の『クレイトン斡旋所』が出来るだろうから。
マロニヨル王国にも行きたくはない。
クライス王国とは付き合いが深い国だから。
俺は西に…。グラム王国に向かった。
クライス王国の王都から一番遠いから。
奴の居る王都から、一番遠いから。
俺は西に向かった。
寄り道なんかせずに、真っ直ぐに。
グリアムが王都クライスを発ってから数日後。
国王に、その報告がもたらされた。
『ガザルドが討伐された。』と。
或る商隊が襲撃を受け、護衛たちが襲撃者を返り討ちにしたところ、襲撃者の一人がガザルドだったとのことだった。
国王は、王都の隣街カムデンを混乱に陥れた大罪人の討伐を喜んだ。
討伐した護衛と、彼らの雇用主を王宮に招き、褒美を取らせた。
その時にその場に居合わせた者たちの一部が、こう囁いていた。
「また”あの商人”か。」と。
国王から褒美を受け取った、商人とその仲間たち。
褒美以外にも、ガザルドたちの所持金も得ていた。
盗賊などの持ち物は、討伐した者に所有権が移るからだ。
ガザルドたち襲撃者は、不自然なほど多額の所持金を持っていた。
だが、その事を訝しく思った者は、彼らの中には一人も居なかった。
彼らは知っていたから。
ガザルドが、そこに居ることを。
ガザルドが、それまで何処に居たのかを。
ガザルドが、誰に匿われていたのかを。
そして、ガザルドが持っていたお金が誰の持ち物だったのかを。
彼らは、すべて知っていたから。
< クレイブ視点 >
グリアムが斡旋所の仕事を辞めたと聞かされた。
目の前に座るクレイトンから。
「国中に支店が出来て、一区切りついたからでしょう。」
「彼の目的は達せられたと言っていい状況です。」
「ですから、『辞めたい。』と言う彼を引き留めませんでした。」
クレイトンは、笑顔でそう言った。
笑顔のクレイトンに訊く。
「…何故、俺に話す?」
「あなたに、本店の店長をしていただきたいので。」
はぐらかされた。
”あの話”を俺が聞かされたのはクレイトンからだ。
グリアムとクレイトンは密接に協力していた。
俺はそう思っていた。
だから、”あの話”を俺から聞かされてショックを受けるグリアムを見て、俺は驚いた。
俺がクレイトンから聞かされた”あの話”を、グリアムが知らなかったことに驚いたのだ。
そして、今、『グリアムが辞めた。』と聞かされた。
目の前に座るクレイトンから。
偶然であるはずなど無い。
コイツは、俺をグリアム追放の共犯にしやがったのだ。
クソがッ。
俺は考える。
『俺はどうすればいい?』
グリアムの仕事を継ぎたいなんて思った事は無かった。
だから、そんな事を求められて困惑する。
コイツは、”俺”だから声を掛けた訳ではないだろう。
俺に首輪を掛けられると思ったから、そうしたのだ。
『俺はどうすればいい?』
『俺はどうしたい?』
答えなんか、何処に在ると言うんだ!
クソがッ!
俺は必死に考える。
コイツから逃れる方法を。
『カムデンの混乱は、川に関所を作る話をでっち上げたクレイトンが仕組んだことだ。』と、国に報らせるか?
いや、コイツが何の対策もしていないなんて事は無いだろう。
グリアムに罪を擦り付けるくらいの事はするだろう。
グリアムは、俺たち冒険者の恩人だ。
”ならず者”扱いだった冒険者たちの地位を上げて、世間に認めさせてくれた、
グリアムに罪を擦り付けられて、彼が大悪人として糾弾される様な事になれば、『やはり冒険者なんて信用できない! やはり奴らは”ならず者”だ!』と言われるだろう。
俺たちは、まとめて”ならず者”に逆戻りだ。
そんな事は出来ない。
グリアムのお陰で、ここまでになったのだ。
俺にそんな事が出来る訳がない。
俺は、クレイトンの要求を飲むことにした。
コイツにムカついたから。
コイツにクソムカついたから。
『俺に首輪を掛けたと思っているコイツに噛みついてやる!』
そう思って。
< 神さま視点 >
あれが次の犠牲者か。
可哀想に。
あの面白い男は何をする気なんだろうな。
興味深い。
うん。
興味深い。
こいつが何をするのか見てみよう。
面白そうだから。
< ??? >
神さまを見付けました。
多分、神さまだと思います。
見ることも触れることも出来ませんが、神さまだと思います。
声を掛けることも出来ませんが、神さまに気付いてほしいです。
この時の為に作った魔法を発動します。
この魔法を使って神さまと繋がることが出来れば、きっと神さまに気付いていただけると、そう信じて。
私の作った魔法は、神さまに弾かれました。
失敗です。
もう一度やります。
弾かれました。
もう一度だけ、やります。
やはり、弾かれてしまいました。
私は諦めます。今回は。
このまま繰り返しても、神力を失うだけだと感じましたので。
一度、”曖昧な場所”に引き上げて、魔法を改良しましょう。
そして、次の機会を確実にモノにしましょう。
これまで、長い時間待ったのです。
一度の失敗が何だと言うのでしょう。
次の機会を待ちましょう。
私はこの場を離れます。
神さまの気配を、私の心らしき場所に刻み込みながら。




