< 25 この世界に就任した神 十七柱目 02 冒険者ギルド誕生までのお話 01 >
クライス王国の王都、クライス。
『冒険者へ仕事を斡旋する組織』を立ち上げようとする冒険者が、ここを訪れた。
その冒険者の名はグリアム。
かつて、”冒険者の集まる街”で冒険者をしていた者の一人だ。
彼は、”冒険者の集まる街”での活動の経験から、『冒険者へ仕事を斡旋する仕組み』だけでは不十分で、他の街とも連携する大きな組織が必要だと思っていた。
冒険者の評価が、街単位でしか行われていなかったから。
『商隊の護衛などで移動した先でも同じ評価をしてくれれば、そこでも報酬の良い仕事が得られたはずなのに。』と、不満に思っていたから。
彼は、この国の王都クライスで、『冒険者へ仕事を斡旋する組織』を作ろうと考えていた。
ここを選んだのは、治安が良いと聞いていたから。
そして、人と物の交流が多く、護衛の仕事が多く有ると思ったから。
さらに、最近、近くの森に魔物が多く棲息する様になったという噂を聞いて、今後、冒険者の仕事が増えると思ったからである。
先ず彼は、商人に話を持って行くことにした。
支援してほしいのはもちろんだが、護衛の仕事の顧客でもあるので。
とある商人に会い、「『冒険者へ仕事を斡旋する組織』を作りたいと思っている。」と言って、話を聞いてもらった。
そして、かつて”冒険者の集まる街”で起こった、領主の失敗の話をした。
新たな仕事への協力を要請するのに、『成功例ではなく、過去の失敗の話をした方が信頼を得られかもしれない。』と考えたので。
安く快適な宿を無くしてしまった事が原因で冒険者が離れてしまって失敗した街の話を、商人は聞いた。
商人は考える。
『そもそも、この王都に冒険者の為の安く快適な宿は必要だろうか?』と。
この王都の治安が良い理由。
それはこの国に居る漁師たちの存在が大きい。
この国の漁師たち。
腕っ節が強いのはもちろんだが、魔法をとても上手に使う。
攻撃魔法だけでなく治癒魔法も使う者が多く、おバカが街中で暴れても、漁師にボコボコにされて心をへし折られた後で治癒魔法で治されたりする。
この王都で悪さをする”おバカ”が極端に少ないのは、そんな漁師たちのお陰だ。
この王都に冒険者が多く来ても、隔離をする為に安く快適な宿を用意する必要なんて無いだろう。
この王都でなら、他の街でするよりも初期投資が少なくて済むだろう。
『冒険者へ仕事を斡旋する組織』を作るのなら、きっと、この王都が最適だろう。
この王都でなら成功する。
商人はそう思った。
商人は、この冒険者から詳しく話を聞き、共に組織を立ち上げることにした。
こうして、クライス王国の王都クライスに、『冒険者へ仕事を斡旋する組織』が誕生することになった。
早速、作る組織について、詳しく話し合った。
仕事の柱は、『冒険者に仕事を斡旋する』、『冒険者を評価する』、『複数の支店で冒険者の情報を共有する』の三つだろう。
それぞれについて、内容と方法を検討した。
それなりの日数を要したが、成功する手応えを感じた。
次に、人を集めることにした。
作りたいのは、各地に斡旋所を持つ大きな組織なのだから、大勢の人が必要だ。
商人と冒険者を集めることにした。
商人だけでも冒険者だけでも、組織が上手くいくとは思えなかったから。
グリアムは、引退した冒険者の一人に声を掛けた。
そして、作ろうとしている組織の話をして、人を集めてもらった。
引退した冒険者にお願いしたのは、作ろうとしている組織が、引退した冒険者たちの雇用先にもなると思ったからだ。
集まった者たちに、組織について説明した。
だが、反応はよくなかった。
特に、冒険者を評価する事に対して反発が強かった。
集まった者たちに、過去に悪い評価を付けられて仕事を斡旋してもらえなくなった者が多く居たからだ。
「評価なんかせずに、すべての冒険者に平等に仕事を与えるべきだ。」なんて言う者が多かった。
結局、3人だけ残して、多くの者が帰ってしまった。
失敗だった。
今回集まった、引退した冒険者たちの多くは、ただの”ならず者”だった。
グリアムは、考え方を改めた。
既に引退している冒険者ではなく、現役の冒険者に声を掛けようと思った。
冒険者を評価することによって信用を上げる事が出来れば、冒険者たち全体の評価を上げる事にも繋がるだろう。
それによって利益を受けるのは、現役の冒険者たちだろうと思ったからだ。
現役の冒険者たちなら、きっと喜んで協力してくれるだろう。
さらに、作ろうとしている組織を引退後の雇用先としても期待してくれるだろう。
グリアムが、現役の冒険者たちに声を掛けてみたところ、反応はすごく良かった。
冒険者をただの”ならず者”としか見てくれない者が多くて、苦労している者が多かった様だ。
「ぜひとも、協力させてくれ。」とまで言う者も多かった。
グリアムは、多くの協力者を得る事が出来た。
さらに、「組織で働いてくれる人を集めたいと思っている。」と言ったら、人を集めてもくれた。
皆、この組織に、とても期待してくれている。
感謝すると共に、成功の確かな手応えを感じた。
しばらくの間、検討と教育と実験を繰り返た。
そして、とうとう営業を始める日がやって来た。
今はまだ、王都の本店と、周辺の二つの街に支店が在るだけだが、少しずつ支店を増やしていけばいいだろう。
組織の名は、商人の名から『クレイトン斡旋所』と名付けられた。
そして、本店の店長には、グリアムが就任した。
多くの冒険者たちに期待され、祝福されて、『クレイトン斡旋所』は営業を始めた。
< 神さま視点 >
おお、冒険者ギルドが出来たな。
名前は『冒険者ギルド』ではないが、これはもう『冒険者ギルド』と言っていいだろう。
さて、俺はどうするかな?
最初にこの世界に来た時は、何もしないと決めていたよな?
なんで俺は、冒険者ギルドに気を掛けていたんだったっけ?
…商人が冒険者を集めて、揉めて、仕事を斡旋する仕事を始めて、馬鹿な領主が潰したんだったな。
そうだった。
その時に『冒険者ギルドが出来ると思ったんだけどなぁ。』とか思ったんだったな。
最初は揉め事に頭を抱える商人を眺めて楽しんでいただけだったな。
そうそう。
それだけだった。
別に冒険者ギルドが出来てほしいと思っていた訳ではなかったな。
まぁ、いいや。
俺はのんびりしていよう。
変なことをして、評価が下がってしまったら困るんだからな。




