< 19 この世界に就任した神 十三柱目 04 応援として来た新神(しんじん) >
学校を卒業してしばらく経った。
”神”に空席が無かったので、自習と言う名目で放置されている。
大人しく自習していた時期も有ったが、それに飽きて、少々ダラけた生活をしていたかもしれない。
『誰か不祥事でも起こして、空きが出ないかなぁ。』とか、少々不謹慎なことを思いながら過ごした。
他の人の目には、少しだけダラダラしている様に見えたかもしれない。
母親の目に険しい物を感じる様な気がしたが、気の所為だと信じている。
そんな時に、その連絡を受けた。
「いよいよ、俺も神になれる日が来たのかぁ…。」
ニヤニヤしながら身だしなみを整える。
笑顔の母親に見送られて家を出た。
『俺が神として就任する世界は、どんな世界なんだろうな。』
俺は期待に胸を膨らませて、ウキウキしながら議事堂に行った。
担当者に丁寧に挨拶をして、勧められた椅子に座る。
両手はもちろん膝の上だ。
担当者の説明を聞く。
「実は、少し問題を起こした神が居て…。」
うんうん。
「その為に神が必要になって…。」
「私に任せて下さいっ。」
思わず、食い気味に言ってしまった。
「おお、そうか。やってくれるか。ありがとう。」
「当然です。その為に、今までやって来たのですからっ。」
「君の様なやる気に溢れた若者が来てくれて、私もうれしいよ。はっはっは。」
「いえいえ、はっはっは。」
担当者の笑顔に、俺も笑顔になった。
詳しい説明を聞いた。
どこかの世界の神への就任だと思い込んでいたのだが、そうではなかった。
ただの応援だった。
しかし、ここでガッカリした表情など出来ない。
『ここで心証を良くしておけば、次の機会に有利に働くだろう。』
そう自分に言い聞かせ、落胆しながらも、しっかりと説明を聞いた。
明日から、応援に行くことになった。
一応、”神”の肩書きを貰い、神力も付与されて、担当者に見送られて任地に向かった。
派遣先の世界の神さまに丁寧に挨拶をした。
ガッカリしている様子など見せたりはしない。
勧められた椅子に座る。
両手はもちろん膝の上だ。
仕事の説明を聞いた。
仕事は簡単だった。
廃棄されたダンジョンから外に出た魔物を間引くだけだ。
「あまり強くない魔物なので、一神でも十分なはずだ。」と言われた。
仕事内容に疑問を感じた。
神に出来ない理由が分からなかった。
訊いたら、神力を使い過ぎて、対応する事が出来ないとのことだった。
星の住人たちの活動や信仰心により、何もしなくても神力が溜まっていくと学校で教わっていたのだが、違うのだろうか?
どうやら、この星の文明レベルが低い為、神力の速やかな回復が望めないとのことだった。
『そういう世界もあるのだろう。』と、納得した。
私に任された仕事自体は、大して神力を使うものではない。
今の私に与えられている神力で、十分に足りるだろう。
迅速、確実に仕事を終わらせて、良い印象を与えておこう。
ダンジョンは放置しておいていいのだろうか?
『放置しておけば良い。』と思っていた結果が現在の状況を産み出してしまったのだ。
対策をした方が良いのではないだろうか?
訊いてみた。
「魔物が出て来ない様に出入り口を塞いで欲しい。」とお願いされた。
大した手間ではないだろう。
了承して、まず、ダンジョンの出入り口を塞ぐことにした。
ダンジョンに来た。
石が組み上げられて作られた出入り口が在った。
魔法で砕いて穴の中に放り込んだ。
しかし、穴は埋まってくれなかった。
あれ? 失敗したかな?
穴の周囲を砕いて穴の中に放り込んでいく。
なかなか穴が埋まらない。
穴の周囲を砕いては、穴の中に放り込んでいく作業を続けた。
穴が埋まった時には、大きな窪みになってしまっていた。
………。
砕かずに土砂を詰めた方が良かっただろうか?
いや、出入り口の前に石を積んでおけば良かったな。
そうしていたら、ずっと早く終わっていただろう。
失敗したが、塞ぐことは出来た。
これでいいだろう。
魔物の間引きの方を始めよう。
近くの森に移動し、村人たちの脅威になりそうな魔物を探す。
魔力を探知し、魔力の大きな魔物から魔法で始末していった。
つまらない作業だった。
魔物と戦う男たちを見付けた。
互角に戦っているな。
男が一人倒れた。
魔力切れの様な倒れ方だった。
その後、魔物の方が優勢になってきた。
犠牲者が出てしまいそうな雰囲気だ。
俺は介入することにした。
どの様に魔物を倒すか考える。
気付かれない様に倒す事も可能だが、せっかく神になったのだ。
神として崇められたい。
険しい目で俺を見ていた母親にも自慢できるだろう。
俺は、彼らから少し離れた場所に姿を現して、言った。
「私が助けてやろう。」
魔物に【ファイヤーアロー】を撃ち込んだ。
俺の【ファイヤーアロー】を受けた魔物がグラつく。
グラついた魔物を、男たちが一気に畳み掛けて仕留めた。
男たちは倒した魔物に火を着けて燃やす様だ。
倒した魔物の周りの枯れ草を掃いている。
男の一人が俺に近付き、礼を言う。
「助かりました。ありがとうございました。」
うんうん。
しっかりと神に感謝したまえ。
「漁師の方ですか?」
「ぶっ!」
何で漁師なんだ?
コイツは何を言ってるんだ?
俺は神だぞ。
しっかりと私が神であると伝えねばなるまい。
ちょっと、緊張する。
家でダラダラ過ごして、母親に険しい目で見られていた日々を思い出す。
その時に感じていた後ろめたさを振り払う為にも、キッチリと神であると言わねばなるまい。
「あー、んんっ。」
喉の調子を確認してから、俺は言う。
「私は神だ。(キリッ)」
「………………。」
「………………?」
何で、そんな”残念な人”を見る様な目で俺を見るんだ?
神を崇める場面だろう?
ひれ伏す場面だろう?
神に会えた事に感激する場面だろう?
俺は、男の反応に戸惑った。
他の男たちも戸惑っている様だ。
どうしよう?
こんな状況になるとは思わなかった。
どうしてこうなった?
なぜこうなった?
分からない。
俺は困惑した。
男たちは「ありがとうございました。」と礼を言って、立ち去って行った。
「………………。」
俺は一神、その場に取り残された。
その後も同じ様な事が有った。
なぜ、”残念な人”を見る様な目で見られるんだろう?
俺はちゃんと”神”だと言ったぞ。
分からない。
家でダラダラしているところを母親に見られるよりも、心にクルんだが…。
俺は早く家に帰りたくなった。
翌日。
今日も俺は魔物を倒している。
魔物を倒しながら、いつこの仕事が終わるのか考える。
俺が頼まれているのは、”魔物の間引き”だ。
間引きをする理由は、村人たちの安全の為だ。
しかし村人たちは、それほど強くない魔物にも苦戦している様に感じる。
どの程度の強さの魔物まで間引けば良いのだろうか?
どの程度の数を間引けば良いのだろうか?
いつまで掛かるのだろうか?
早く家に帰りたいのだが。
間引きだけでは、いつ終わるのか分からない気がした。
すべての魔物を倒した方が、早く帰れるのではないか?
俺は、すべての魔物を倒すことに決めた。
二日で、ドラゴンを除くすべての魔物を始末した。
強い魔物が居ないこの星でなら、簡単な事だった。
俺は神の力の一端を実感した。
これでこの星の住人たちの安全は確保できただろう。
俺は、仕事が終わったので上機嫌だった。
神さまに報告して、帰って良いか訊いた。
応援の仕事の完了を告げられ、礼を言われた。
議会に提出する書類を受け取って、天界に送ってもらった。
議会に応援の仕事が完了したことを報告して、家に向かう。
初めての神の仕事だったが、神の力を存分に振るって、きちんと終わらすことが出来た。
俺は満足だった。
しばらくはのんびりして、仕事の疲れを癒そう。
そう思って、お菓子やらジュースやらを買い込んでから、家に帰った。
思いの外、早い帰宅だったのか、母さんに”何かやらかして帰らされた”と思われた。
母さん、もう少し息子を信用してはいかがでしょうか?
きちんと与えられた仕事を終わらせてきましたよ。
ええ、本当です。
いえいえ、この前までの生活に逆戻りなんてことは無いですよ。
まじめに自習します。
ええ、ダラダラ過ごしたりなんてしませんとも。
あ、これ、母さんの為に、お菓子とジュースを買って来ました。
はっはっは。
その目は心にクルのでやめてください。お願いします。




