< 18 この世界に就任した神 十三柱目 03 >
私は今、ダンジョンに潜っている。
一昨日設置したばかりのこのダンジョンを廃棄する為に。
例え神であろうとも、ダンジョンは異界だ。
私程度のレベルでは、容易に【転移魔法】で最下層まで行けたりはしない。
入り口から入り、一階層ずつ通って行かなければならない。
同じ階層内でなら【転移魔法】が使えるとは言っても大変だ。
魔物に対処しながら下の階層に行く階段を探すのに、かなりの手間がかかるからだ。
このダンジョンを設置するのに、少なくない神力を使っている。
今の私にとって、100階層のダンジョンを攻略するのは難しい。
半分ほどまで来ただろうか。
今は、魔物が通り過ぎるのを物陰で待っている。
隣を見る。
急遽、このダンジョン攻略に駆り出された女神だ。
昨日、たまたま議事堂に居合わせた所為で、駆り出されることになってしまった。
巻き込んでしまって申し訳ない。
不機嫌そうな目で睨まれた。
前に向き直る。
魔物が通り過ぎたのを見て、下の階層へ続く階段へと走った。
最下層のボス部屋の前に、ようやくたどり着いた。
【転移魔法】を多用したので、かなりの神力を使ってしまった。
今の私では、このボス部屋に居るドラゴンを屈服させるだけの力を示す事など出来ないだろう。
ドラゴンを何とか説得できればいいのだが…。
ボス部屋に入った。
黒いドラゴンが現れた。
まだ作られたばかりのダンジョンの為、ダンジョンの規模の割にはあまり強くはなさそうだ。
ダンジョンコアを守るこのドラゴンを説得してダンジョンコアを回収し、このドラゴンにダンジョンの外に出てもらえば、ダンジョンに魔力が溜まらなくなり、徐々に廃墟になっていくはずだ。
ドラゴンを説得する。
外に住処を用意するのはもちろん、食料を得る為の狩場の整備などを約束する。
すると、こちらの窮状を察したのか、色々と要求を追加された。
ぐぬぬ。
説得を続けるが、なかなか終わりが見えてこない。
そうしていたら、一緒に来てくれていた女神が、突如キレた。
「いい加減にしろ!! さっさと表に出やがれ!!」
「フッ…。」
ドラゴンは鼻で笑った。
その様子にブチギレた女神。
魔法を唱えた。
「【強制分離】!!」
女神の隣に肉の塊が現れた。
そして、怖い事を言った。
「もう一つの玉を取るなんて面倒はしない! 次は心臓だっ!」
驚いて、自分の股間を見たドラゴン。
後退ってガクブルした。
「さっさと表に出やがれ!!」
ドラゴンはガクブルしながら「ハイッ!」と言った。
女神の”説得”を見て、私は思わず変な声が出た。
「………ひゃー……。(ブルブルブルブル)」
女神の唱えた【転移魔法】で外に出た。
ドラゴンも一緒だ。
ドラゴンは、すっかり大人しくなっている。
女神は「じゃあな。」とだけ言って、さっさと転移して帰って行った。
あの肉の塊と一緒に。
アレ、どうするのかな?
聞きたい様な、聞きたくない様な、何とも言えない気持ちになった。
その後、山奥に行き、ドラゴンの住処を作った。
住処の近くに、狩場としてちょっとした広さの野原を作った。
そこに、餌となる羊を作り出し、放つ。
さらに追加で要求されたことにも対応した。
傷心のこのドラゴンに優しく接するのは、男なら当然だろう。
こうして、私はなんとかダンジョンの廃棄を終えた。
その後、前任者の要望だった馬と、ついでに牛を作り出して放したら、神力をほぼ使い果たしてしまった。
ダンジョンの設置に失敗してしまったおかげで、就任早々に神力をほぼ使い果たすことになってしまった。
この先、大変そうだ。
出来る事が無いので、この星の住人たちを見守りながら過ごした。
廃棄したダンジョンから魔物が外に出ている事に気が付いた。
『作って日の浅いダンジョンだから下層の魔物は下層で力尽きるはずだ。ダンジョンの外に魔物が出たとしても、最上層の大して強くない魔物だろう。』
『この星の住人たちが倒してくれれば、戦闘技術や魔法を発達させる事になるので、そのままにしておいていいだろう。』
そう思って放置していた。
甘かった。
魔物に襲われた村が壊滅してしまった。
私が何とかしなければならない。
しかし、今の私が使える神力は、ごく僅かだ。
どうしよう。
ドラゴンに手伝いを頼もうか?
いや、まだ心の傷が癒えてないないだろう。やめておこう。
私は天界の議会に応援を要請した。




