< 17 この世界に就任した神 十三柱目 02 >
この世界の神に就任した。
私は、大喜びでダンジョンを設置しに行く。
予め、設置する場所も決めていた。
準備は万全だ。
昨晩、なかなか寝付けなくて睡眠不足なこと以外は。
ダンジョンを設置するのは楽しい。
神生最高の喜びだ。
しかも、今回は100階層の大物。
楽しくて仕方が無い。
ひゃっほーい。
ダンジョン設置予定地に来た。
この大陸の南西の森の近くだ。
ダンジョンコアを地面に置き、神力を注ぎ込む。
光を発するダンジョンコア。
ダンジョンコア自身が、周囲から魔力を集め始める。
魔力がダンジョンコアに集まっていくのが感じられる。
しばらく待つと、フッとダンジョンコアが消えた。
ダンジョンが形成され始めたようだ。
後は、放置しておくだけで100階層のダンジョンが形成され、最下層にドラゴンが生まれる。
そして、それを皮切りに順次魔物が生まれ続けて、次第にダンジョンらしくなっていくだろう。
よし。
私は無事にダンジョンの設置作業を終えた。
今夜も祝杯だ。
ひゃっほーい。
翌日。
二日酔いで痛む頭で、この星の住人たちを観察した。
この星には、まだ、国が無い様だった。
あれ?
そんな戦争も無さそうな星で、【ファイヤーボール】の様な大魔法を使う事って有るか?
魔物も弱いって聞いていたし…。
でも、街を囲う外壁は立派だよな。
これだけ立派な外壁が在るということは、やはり戦争はあるのだろう。
きっと、街を攻める時に【ファイヤーボール】を使うのだろうな。
でも、荒野が多いよな。
領土を奪い合う様な状況は、なかなか無さそうだ。
…何だか想像していたのとは、様子が違うな。
一つの宗教の元に、纏まっているのかな?
そういう訳でもなかった。
それどころか、宗教はまったくと言っていいほど、存在感が無かった。
神を崇める様子も無い。
どう言う事なんだ?
森に来た。
魔物と戦っている男たちを見てみようと思ったからだ。
私が派遣された目的は、『ダンジョンを設置してこの星の住人たちの戦闘技術や魔法を発達させる為。』だからな。
現状を確認することは大事だ。
うん、その通りだ。
『ダンジョンを設置するよりも先にやるべきことだろ。』と、思わないでもないがな。
ちょうど、魔物と戦っている男たちが居た。
魔物を囲み、余裕を持って仕留めた。
しかし、男たちのレベルはあまり高くない。
魔法を使う者も居るが、大した魔法は使っていなかった。
…おかしい。
海に来た。
海なら【火属性魔法】を使うところを見る事が出来ると思ったからだ。
魔物相手に【ファイヤーアロー】を放っている者が居た。
魔法の扱いは上手な様だ。
しかし、この者たちもレベルはそれほど高くはない。
まぁ、漁師なんだから、こんなものだろう。
その後も、あちらこちらで魔物や熊と戦っている者たちを見た。
皆、レベルが低かった。
見た者たちの中で一番レベルが高いのが漁師っていうのは、おかしいだろ。
どうなっているんだ? 本当に。
私が聞いた情報がおかしかったのだろうと思い、天界に行って担当者に会って確認した。
間違った世界に行ってしまった訳でも無かったし、前任者が”ファイヤーボールの女神”だったというのも間違いない。
同じ名前の別神と言う訳でもなかった。
どうなっているんだ?
分からない。
担当者に訊く。
「前任者が”ファイヤーボールの女神”だと言うのに、魔法を使う者のレベルが低過ぎるのだが、どうなっているんだ?」
担当者はそもそも、”ファイヤーボールの女神”を知らなかった様だ。
上司に訊きに行った。
担当者は上司を連れて戻って来た。
上司が、説明してくれた。
「確かに前任者は、あの”ファイヤーボールの女神”です。」
「ですが、彼女は神力をギリギリまで減らされた状態で、赴任させられました。」
「彼女は問題児でしたからね。問題を起こさせない為に、その様な措置が取られました。」
「そんな状態のまま三期勤め上げ、良い結果を残して異動になりました。」
「「更生した。」と、多くの神たちが喜んでいましたよ。」
………………。
………なんてこった。
失敗した。
マズイかな?
マズイよな。
あの星に設置したのは、制御できないタイプのダンジョンだ。
ダンジョンマスターの居ないタイプだ。100階層という上級者向けの。
下層まで定期的に”お掃除”しなければならない。
私の脳裏に、ダンジョンから魔物が溢れ出す様子が思い浮かぶ。
マズイ。
あの星に在るのはマズイ。
駄目だ。
失敗した。
私は正直に申し出た。
私の申し出に、その上司の表情が固まった。
その上司の上司と一緒に議会の偉い人のところに連れて行かれた。
私は議会から、ダンジョンの廃棄を命令された。




