< 16 この世界に就任した神 十三柱目 01 >
この星に、天界の議会から調査員が派遣された。
この星の将来の為に、どの様な支援が必要か見極める為である。
この星は、”永遠の保護”が決められている。
だからと言って、何もしない事が最善である訳では無い。
何もしない事で、この星の住人たちが絶滅してしまう可能性も有るのだ。
だから、『どの様な支援が必要なのか?』を確認する調査は不可欠なのである。
その調査報告書が天界の議会に提出された。
その報告書では、『ダンジョンの設置が望ましい。』と、結論付けられていた。
曰く。
「この星の魔物は弱くて少ない。熊の方が強いくらいだ。」
「この星の住人たちが安心して暮らしていく為には、戦闘技術や魔法がもっと発達していく必要があるだろう。」
「この先、この星の住人たちの戦闘技術や魔法が発達していくことは見込めず、停滞し、衰退していくだろう。」
「20階層程度のダンジョンを設置し、戦闘技術や魔法の発達を促すべき。」
「ダンジョンならば、この星の生活環境や生態系への影響も無いので、”永遠の保護”が決められているこの星に設置しても問題ない。」
「むしろ、ダンジョンの設置が、この星には最適だろう。」
とのことだった。
この報告書に基づき、この星にダンジョンの専門家の神が派遣されることとなった。
天界の議会に呼ばれた。
また異動になるんだそうだ。
『またか。』と言う気分にもなるが、求められての異動なので、気分はそれほど悪くはない。
それにダンジョンを設置をさせてもらえるのだから、嬉しいという気持ちも有る。
ダンジョンの専門家になって良かった。
割と異動が多い事にはうんざりしないでもないが、それでも神の地位に長く居続けられているので、ダンジョンの専門家になる選択をしたのは良かったのだろう。
私のことを”モグラ”とか言って馬鹿にしていた者たちより、長く神の地位に居続けられていたので、その事も私の気分を良くしていた。
新しい赴任先について、担当者から説明を受けた。
その星の住人たちの戦闘技術や魔法を発達させる為に、20階層程度のダンジョンを設置してほしいとのことだった。
そして、その星は”永遠の保護”が決められているとのことだった。
なるほど。
生活環境や生態系への影響を考慮しての、ダンジョンの設置なのだろう。
以前、私が論文に書いたダンジョンの有用性の一つとして、『生活環境や生態系へ影響を与えない。』と書いたのだが、そのメリットが必要とされる状況が起きている様だ。
『仕事が増えればいいな。』くらいの気持ちで書いた論文だったのだが、その通りの状況が起きていた事に、自分自身で驚いた。
私のところに仕事が来たのだから、まさに狙い通りな訳だが。
異動するにあたり、新しい赴任先の前任者について訊いた。
星の住人の性格が、前任者の神の影響を受けている事がよくあるからだ。
担当者が、前任者の名前を教えてくれた。
この担当者は、その者の”二つ名”を知らなかった様だ。
あまりにも、さらりとその名前を言った事に、私は内心驚いた。
前任者は、あの”ファイヤーボールの女神”だった。
天界の私室に帰って来た。
私は考える。
椅子に座る事もなく、一心に。
新しい赴任先のその星に設置すべきダンジョンを。
前任者は、”ファイヤーボールの女神”だった。
しかも、三期も勤めていたと言う。
あの【ファイヤーボール】ジャンキーが他の魔法を教えているところなど想像できない。
【ファイヤーボール】を使う魔術師が、大勢居るに違いない。
そんな星に相応しいダンジョンを考える。
手持ちのダンジョンに、一つ良さそうなモノが有った。
100階層で、ラスボスがドラゴンで、ダンジョンマスターが居ないタイプのダンジョン。
制御が効かないので、定期的に下層まで”お掃除”しないといけないヤツだ。
長く不良在庫に…、いやいや、設置するのに相応しい星が無かったシロモノだ。
100階層…。
上級者向けだ。
しかし、【ファイヤーボール】を使う魔術師が大勢居るのなら大丈夫だろう。
よし、これにしよう。
転勤祝いに、祝杯を挙げた。
決して、不良在庫がハケる事を喜んだ訳ではない。




