< 15 この世界に就任した神 十二柱目 09end >
私の任期が間もなく終わります。
しかし、娘が眠るこの星から離れたくはありません。
任期の延長を願い入れました。
任期の延長を認めてもらえました。
うーん。
自分で言うのもなんですが、なぜ認めてもらえたのでしょうか?
私は今まで素行に問題があり、それでここにトバされて来たのです。
ここで大人しくしていたのが良かったのでしょうか?
大人しくしていたと言うか、神力をギリギリまで減らされているから、何も出来なかっただけなんですが。
まぁ、気にしたところで、分かりませんね。
任期の延長を素直に喜びます。
やったね。
仕事は引き続き、魔法を教える事です。
既に、魔法を使える人は増えています。
今回は、魔法を教える人の能力向上に努めることにしましょう。
全ての村を回り、魔法を教える人の指導をしました。
もちろん、夢の中でです。
神力が少ないから、こうするしかないのです。
その後も、もう一度任期の延長を認めてもらい、かなり長くこの世界で魔法を教える仕事をしました。
ある日、議会から通達が届きました。
内容は、或る事が見直されたとのお知らせでした。
神が人の名を口すべきではないとされていた件について、良くない影響があると思われていたが、そんな事は無く、むしろ、良い影響が有るとのことでした。
しかし、その事でうっかり”加護”が付いてしまうと、人間がその加護に振り回されてしまう事が有るので、乱発は控える様に。とのことでした。
娘の事を思い出します。
名前を呼ぶ事の無かった、最愛の娘の事を。
だからと言って、もう呼んであげたい娘は居ないのです。
私にとっては、もう、どうでもいい内容です。
ポイッとして、仕事に戻りました。
「そろそろ任期の延長のお願いを出す時期だな。」と、思った頃。
議会から要請の手紙が届きました。
”要請”という言葉に驚きます。
私は”命令”されてこの世界に来たのです。
神力をギリギリまで減らされて、トバされて来たのです。
要請されるような神ではないのです。
手紙を読みます。
別の世界で魔法を教えてほしいとのことでした。
特に魅力を感じなかったので、断りの手紙を、任期の延長のお願いと一緒に送りました。
天界の議長から要請の手紙が届きました。
偉い人からの手紙に驚きました。
偉い人と言うと、懲罰委員会の委員長くらいしか面識がなかったので。
別に個人的に親しかったと言う訳ではありません。
仕事上の付き合いです。(苦笑)
手紙を読みます。
別の世界で魔法を教えてほしいとのことでした。
見返りとして、神力を戻すと書いてあります。
さらに何か要望があれば、出来るだけ叶えるとも書いてありました。
天界の議会の議長と言えば、天界のトップです。天上人オブ天上人です。
何でも出来るどころの騒ぎではありません。
不可能が無いお方なのです。
これは、何でも望みを叶えてもらえるかもしれないと、言うことです。
うーん。
でも、私にこの星で神を続ける以外に望む事など無いですしね。
でも、凄く偉い人からの要請ですからね。
断ったら何をされるか分かりませんね。
うーん。
良い状況なのか、悪い状況なのか、良く分からない状況に混乱します。
心を落ち着けて考えることにしましょう。
受ける場合は、議長に直接会ってみたいですね。
相手の本気度が分からないと、どの程度まで要望を出して良いのか分かりませんし。
アポを取って、その間に対応を考えましょう。
議長とは3日後に会えることになりました。
ベンチに座って考えています。
私には、この星で神を続けること以外に望む事など無いからなー。
でも、この星に何か危機が起きた場合、今の私には何も出来ませんよね。
危機の対策になる様な事をお願いしましょうか?
その方向で考えてみますかね。
凄い要求をして、相手が無理と言えば、この星で神を続けられますかね?
うん。その方向での検討もイイですね。
思いの外、色々な事を考えてしまいました。
この日は考えが纏まりませんでした。
今日もベンチに座っています。
こうしていると、元村長のあの一家を、このベンチで見守っていた時の事を思い出します。
無意識に女の子を眺めてしまいます。
そして、ここが似ている、あそこが似ていると、そんな事を考えてしまいます。
暗くなるまでベンチに座り、何をお願いするか決めました。
天界の議事堂に来ました。
議長と会う為です。
議長と会い、私の要望を伝えました。
議長はその場で書類を作り、サインをしてくれました。
こうして、私の異動が決まりました。
この星を離れる日が来ました。
今日もお墓参りをします。
「何の心配もなく、眠っていてね。」と、お墓に話し掛けました。
娘の名を呼んであげるべきか悩みましたが、お墓に呼びかけるのは何か違うと感じました。
それで、私の心の中のモヤモヤが消える訳ではないのです。
地上を離れ、離れた場所から娘の眠る星を眺めます。
そして、”星の名前”を口にして、「行ってきます。」と、挨拶をしました。
私は、異動先に向かう為に、天界に転移しました。
彼女が異動の条件として、天界の議長に要望したことは二つ。
一つは、彼女が愛した娘の眠る星の命名と、その名前の永遠の保護。
もう一つは、彼女が愛した娘の眠る星そのものの、永遠の保護。
星の名前は、神が自由に付ける事が出来るものだった。
これは神の当然の権利だった。
彼女もこの星に名前を付ける事が出来るが、次の神が就任すれば、その神が名前を変えてしまえるものだった。
しかし、その星の名は、天界の議長の承認の元、永遠に残されることになった。
彼女が愛した娘の名を冠して。
惑星、”サラ”と。
愛した娘の名前を呼ぶことが出来なかった一人の女神は、愛した娘の眠るこの星に、愛した娘のすべての思い出を、愛した娘の名前で、永遠に残すことにしたのだった。




