9.影ちゃんとリコス そして走るモブ兄
◆聖バルゴ学園 1-A教室 エステル(15歳)視点6
最近お兄様がよその令嬢と親密にされていて、わたくしはあまり構っていただけませんの。
ステファン殿下の婚約者のディアナ様も、留学に行かれて寂しい限りですわ。あんなに楽しみだったはずの学園生活ですのに…
「エステル様」
ムムム…元凶の令嬢ですわ。
「わたくし!名前呼びを許可した覚えはございませんわ」
ちょっと意地悪かしら…お兄様のお知り合いなのに…
「わわっ!ごめんなさい。リカ…ルド様が呼んで来てくれと仰って…」
まぁお兄様が!
「わかりましたわ」
静々と横を通り抜けます。呼びにきて下さったのね…悪いことしましたわ。あとで謝りましょう。
お兄様はわたくしの忘れ物を届けてくださいましたの。
学園に着いてから忘れたことに気づいて、焦っておりましたら『任せろ』と仰って。
やはりお兄様はステキですわ♪
教室に戻る途中、あれは…
「あなた子爵っていっても元平民でしょう?パルセノス家の方に馴れ馴れしすぎるんじゃない」
「おふたりとも迷惑されているわよ!」
「まったくこれだから平民は!礼儀ってものを教えてあげましょうか!」
柱の陰で三人の令嬢に詰め寄られているミリア・ペタルーダ子爵令嬢。
先ほどわたくしがキツく返してしまったから、他の子達が調子に乗ったんだわ!何てこと!
「きゃん!きゃん!」
「うるさい!デブ犬!」
「きゃいん!」
「リコスッ‼ひどいわ!」
一人の令嬢が従魔を蹴りました!か弱い動物に当たるとは、許せません!
「影ちゃん!」
「「「へっ?」」」
一瞬で令嬢達が消えました。あら影ちゃん、消し方がスピードアップしていますわね。
きょろきょろと消えた令嬢達を探すペタルーダ嬢に近づきます。
「エ!あ、パルセノス様!あの…今、令嬢方が…」
「うるさかったので、影ちゃんにお任せしましたわ。安心なさって。きっとどこかの個室ですわ」
「「「きゃ~~~~~~」」」「うわあぁ~~!なんだぁ⁉」
悲鳴…あら、あそこは…
「パルセノス様…あそこ男子のお手洗いでは?」
影ちゃんが影から半分出てきて、頭を掻いています。『しっぱいしっぱい』かしら?
「きゅんきゅん♪」
あら、従魔が影ちゃんに懐いておりますわ。…さわりたい…モフモフ じーーーー
「ふふ…パルセノス様。リコスの事、撫でてやってください。喜びますから」
「し、仕方ありませんね!」
なでなでなでなで…か、かわいいですわ~~♡
◆聖バルゴ学園 ミリア(15歳)視点3
影ちゃんとリコスが戯れてますね。ほほえましい。
「…エステルで良いですわ。パルセノスだとお兄様とややこしいから…それだけですわ!別に親しくしたいとか思っておりませんから!」
「ではわたしもミリアと呼んでください。わたしは仲良くなりたいですよ。エステル様」
エステル様のツンデレいただきました!今日の日記に絶対書きます!挿絵付きで!
「影ちゃんはいつからお友達なのですか?」
「お兄様が領地に行かれた時でわたくしは6歳でしたわ」
やっぱりそうだわ。【影ちゃん】は正規ルートには出てこない。
ファンの間でエステル様人気が爆発して、運営が追加で作った有料ダウンロードコンテンツ。
【悪役令嬢エステルルート】の特別キャラクターだもの。
…でも何かチョット違う?キャラ紹介では確か…エステル様の苛烈さに影響されて、物々しいイメージだったような…
『シャドウ!薙ぎ払え!』(ゲームで戦うエステルと無数の手を持つ巨大な黒い影…のスチル)
目の前では丸い子犬と一緒にポヨンポヨンと跳ねる黒い物体…
「影ちゃん。お友達が出来たの?よかったですわね♪」
悪役令嬢の最っ高の笑顔……尊い。
【悪役令嬢エステルルート】は有料で、当時金欠だったわたしはプレイ出来ていないのよね。
攻略サイトに集まる情報を纏めている最中だったの。う~ん、おいおい思い出せるかしら…
でもエステルルートなら主人公は彼女になるから、もしかしたらヒロインはいないのかも知れない。
リカにも伝えなきゃ!
◆聖バルゴ学園 リカルド(16歳)視点12
時は遡り、学園到着時
馬車を降りてしばらくしてから、
「大変ですわ!わたくし忘れ物をしてしまいましたわ!」
エステルが青い顔で言った。魔法の授業で使う杖を忘れたらしい。
魔法に不慣れな一年生はまだ杖が必要で、エステルも使っている。俺が選んでプレゼントしたのだ。
「お兄様がプレゼントして下さったから、嬉しくてお部屋に飾っていたのです」
エステル…杖は装飾品じゃないぞ~。けど困ったな、借り物じゃ上手く使えないだろうし…
「侯爵邸までは馬車で30分…往復1時間か。魔法の授業までには間に合わんのではないか。馬を借りるか?カイゼル。馬の使用許可を取ってきてくれ」
殿下がそう言ってくれたが、カイゼル殿は困惑しているぞ。護衛を離したらイカンでしょ。
「いえ、俺がとってきます。間に合わせますよ。レオン、カバン頼む」
「お兄様?」
「エステル、任せろ」
「……まぁお前なら大丈夫だろうな。さあエステル嬢、教室へ行きましょうか」
何か言いたげなレオンにカバンを渡して、俺は校門へ向かって歩き出す。
さてと、マラソン選手並みの走りで行って帰ってギリギリってとこか…じゃあ
「風魔法『常時追い風』ってね」
軽く踏み出すと、自分の後ろから強風が発生し一歩一歩が大きくなる。常にホップステップ状態だ。
このまま屋敷までいっくぞ~~!
[おまけ]~ハッとして!good(からのI’ll be back)~
エステル「お兄様にご迷惑をお掛けしてしまったわ。ご無事かしら…」
レオン 「今更だが、こっそり影ちゃんに頼めば良かったんじゃないのかな?」
ハッ‼とするエステル……の前に現れる影ちゃん。
エステル「あら影ちゃん…まあ、教科書ですの?ありがとうですわ」
親指?を立てて影ちゃんは、影に沈んでいきました…とさ。




