8.【セイテン】第一回ユーザーズ会議
◆聖バルゴ学園 エステル(15歳)視点5
レオン様にエスコートされて馬車を降ります。お兄様は後ろを歩いておいでですわ。あまり道に広がってはいけませんものね。でも一緒に歩きたかったですわ。
「待って!待って!止まって~~~~~~!」
後ろからの叫びに振り返ると、猛スピードの何かが突っ込んできますわ。
「リカルド‼あぶないっ‼」
「うわっ‼」
お兄様っ⁉ まさか暗殺者っ⁉
「イテテ…」
尻餅をついたお兄様。おケガは…おケガは無いですか!? お兄様を狙うとは、おのれ何ヤツ!
「きゃん!」
??お兄様のお胸で…白いモフモフが…??え……きゃわわ…
「あれ?エステル嬢?…驚きすぎて固まった?」
ほっぺをつんつんするレオン。
「きゃんきゃ~~ん!」
ハッ!お兄様がピンク頭女の飼い犬に、ベロベロと舐められてますわ!←一瞬で理解
「ちょ!ちょっとそこのあなた!そうピンクの頭の!わたくしのお兄様からその駄犬をお離しになって!無礼ですわよ!」
指差しはいけないので、慌てて扇子を取り出し《ビシッ‼》と言ってやりましたわ!
◆聖バルゴ学園 ミリア《元ミース》(15歳)視点2
「ちょ!ちょっとそこのあなた!そうピンクの頭の!わたくしのお兄様からその駄犬をお離しになって!無礼ですわよ!」
とても美しいご令嬢に《ビシッ‼》とばかりに扇子を突きつけられています。
リカと同じ、黒髪でブラウンの瞳…知ってる。ドヤ顔のこの方は…
「エステル様⁉ 悪役令嬢の⁉ え?お兄さ…え?じゃあリカってば…」
記憶の中の乙女ゲームのスチルブックをパラパラ…『没落した悪役令嬢の家』あ~はいはい。
「…影絵の引きこもり~~~‼」
「へっ⁉ミース!お前ゲームユーザーだったのか~⁉」
「はいは~い。一旦落ち着こう。授業が始まるからね。放課後に生徒会室へ集合。桃色のお嬢さんも『ちゃんと』来るように。その犬も…ね」
ステファン殿下だわ……ゲームと違って笑顔の圧がスゴイそして黒い。リコスと一緒にガタガタ震えた…
約10年前、リカと別れてから半年後、父と自分の家に帰った。
父は元子爵家の三男で、母と結婚して平民になっていたけど、兄の子爵様の仕事を手伝っていたの。
リカの森の隣街に居たのも子爵様からの依頼で、新種の作物の研究に派遣されていて…
母は私が小さい頃に亡くなったそうで覚えていません。
父が男手ひとつで育ててくれましたが、わたしが9歳の時に馬車の事故で亡くなってしまいました。
憐れに思った子爵様が養女にしてくださって、子爵家の次女となりました。その際に、長女のお名前がリース様で似ていたため『ミリア』に改名したのです。
乙女ゲームの記憶は10歳の時に突然…でした。
お父様の読んでいた新聞に、アエトース公爵令息レオンハルト様とパルセノス侯爵令嬢エステル様のご婚約記事が載っていたのです。
それを見た瞬間『あれ?婚約早くない?たしか~』って…それから怒涛の如く記憶が押し寄せて…膨大な情報量のあまり二日ほど寝込みました。(ミリアはヘビーユーザーだった)
リカ…リカルド様は侯爵家のご令息だったのですね。
アダンの森で聞いたのは、本来は王都に住んでいるという事と歳くらいで…すごく気さくだったから高位貴族だとは思わなくて、ずっと探していたけど見つからないわけですね。で、王都の学園に行けば会えるかなって…まさか、乙女ゲームの悪役令嬢のお兄様だったなんて…
「青天の霹靂というやつですね。【セイテン】だけに」ウフフ
「上手いこと言うな」
ペシン。リカに裏手でつっこまれる。
放課後、皆さんが集まった生徒会室で、わたしの生い立ちをお話しました。
「う…ご苦労なさったのですね」
なぜか涙目のエステル様。レオン様がそっとハンカチを渡しておられますね。かわいい…尊い…
「でもでも!お兄様はお譲りしません事よ!どうしてもと仰るならわたくしを倒!」
「はいエステル嬢。どうど~う」
こちらに差し向けた扇子をレオン様に外されています。悔しそうなお顔もかわいい…尊い…
「レオン様!わたくしお馬ではありませんわ!」
◆聖バルゴ学園 リカルド(16歳)視点11
「ミー…じゃないな。ミリア嬢」
「元日本人なので嬢呼びは苦手だから、呼び捨てでお願い」
ミリアが照れくさそうに笑う。あの時と同じ笑顔だ。
「気持ちわかる。おれもリカでいい。今更変えられても慣れそうにないし…」
「リコスは犬じゃないんだな。あんまり変わってない」
いやコロコロに太ってるけど…
「うん。魔犬の亜種じゃないかって魔獣研究所の人に言われたよ。従魔契約したから一緒に来てるの。リコスならリカを見つけられると思ったから。フフッ大正解だったね」
確かに。だいぶびっくりしたけどな。丸すぎて毛の生えたボールかと思ったぞ。
「今更だけどこの世界って【セイテン】だよな。俺はあんまり詳しくない。ミリアはヘビーユーザーだったのか?」
「うん。【聖女の祈り天まで届け】だよ。全部のルートやったし。攻略サイトも立ち上げてた」
攻略サイトか…心強いな。
「でも、ぜんぜん変わってるよね。だからどうなるか分からないかも…ヒロインも見当たらないし。流行病が流行らなかったせいかな?」
俺のせいか。いやヒロインいなくても良くない?
「ヒロインってミリアが見たらわかるのか?」
「まかせてよ!いっぱい網羅してサイト立ち上げたんだよ。わからない訳ないじゃん」
ふふ…『じゃん』て久々に聞いたな。
「さっき聞いたら皆婚約者と良好みたいだし。ヒロインはどうするのかな~。そういえば攻略対象の隣国の第二王子は留学してきて無いみたいだけど…」
「替わりにステファン殿下の婚約者が隣国に留学しに行ってる」
「わぁ…変わりまくりだねぇ。でもリカが引きこもりじゃなくて良かった。引きこもってたら会えないトコだったもんね」
そう言ってもらえると嬉しいもんだな。薬を準備した甲斐があった。
本来なら隣国でも流行病が蔓延して王太子に痣が残り、第二王子がヒロイン(後の聖女)に治療を頼みに留学して来る。そして自国に連れ去っていくのが隣国第二王子ルートだ。
薬は早い段階でお偉いさん方が取引していたから、王太子に痣も無ければ第二王子も遣ってこない。
逆にステファンが自分の婚約者を向こうに留学させている。まぁこの件に関しては色々とあるんだが。
「俺もまたミリアに会えて嬉しいよ。それに日本の話も出来るしな」
「えへへ」
「きゃん!きゃん!」
「リコスにも会えて嬉しいぞ~」なでなで
こんな平和がずっと続きますように…聖女じゃないが祈っておこう。
[おまけ]~ヒロイン多様化の時代~
リカルド「ところでミリアはゲームでは、どんなビジュアルのヒロインだったんだ?」
ミリア 「ヤマンバギャル」
リカルド(え?ホントにヒロインが誰かわかるのか?)不安しかない…




