5.モブ兄様と乙女ゲームのヒロイン
◆聖バルゴ学園 生徒会室 リカルド(16歳)視点6
「明日の入学式は早く来てくれよ。準備があるからな」
あらかた片付いて帰り支度を始めると、ステファン殿下に引きとめられた。
「わかってますよ。明日はレオンと一緒に来ます。エステルとは明後日から…」
おっと、忘れていた。
「レオン!明後日からエステルと俺を迎えに来てくれ。一緒に通学しよう!どうせ通り道だろ?」
「?…婚約者だから迎えに行くのはいいが…何か他にも理由があるのか?」
さすがにレオンは察しがいいな。レオンルートのフラグを折る為さ。
「レオンとヒロインの出会いは、履きなれない靴で歩いて足を痛めていたヒロインを『ひとり』で通学していたレオンが馬車に乗せる…という流れだ」
ひとりじゃなければ成立しないだろう。もし起こったとしても、俺が一緒なら対処もできる。
「なるほど。出会いに決まりがあるのか。一応見かけた時の為に聞いておくが、ヒロインとやらの氏名とビジュアルを教えてくれないか」
「…わからないんだ…」
「「え?」」
そうなんだ。このゲームは最初に自分で設定するタイプで、名前・体形・髪色・瞳色・ルックス・肌の色。自由自在なんだ。それも人気だったんだけど、まさかそれが落とし穴になるとはなぁ
ステファンが名簿を差し出す。
「今期入学生は200人。心当たりは?何でもいい、爵位とか属性とか」
「スマン。姓はデフォルトだろうが、俺が覚えてない。…爵位は子爵。属性は聖と光だ」
「聖?今年の入学生には居なかったぞ。というか居たら大騒ぎで教会が黙っていないはずだ」
「聖属性は女性なら【聖女】男性なら【聖人】として教会が神聖化しますからね」
教会には明確なシンボルが必要だ。聖属性は浄化が出来るから教会商売にはうってつけの人材なんだ。
ヒロインも聖属性に覚醒してから教会に付きまとわれていたが、攻略対象の誰かとの結婚で回避していたっけ。
「聖属性は在学中のイベントで覚醒する予定なんだ」
「では今は光属性のみ…か。子爵位で光属性。ざっとだが10人以上は居るな」
光属性はケガなどの治癒魔法が使える。
割とポピュラーな属性で、治療院の看護師さんや孤児院のシスターは、ほぼ光属性だったりするのだ。
「そうだ!聖獣を連れてる筈だ!」
聖属性持ちには必ず1体の聖獣が付く!
「覚醒前なら聖獣もいないのではないか?いたとして何の動物だ?」
姉貴のは鳥だったな。確か…フェニックスになっていたっけ。
「…それも最初の占いの選択肢で…」
「ポンコツリカルド」
殿下!酷っ!
「学園には召喚獣や使役獣連れた生徒も居ますからね。判別が難しいなら、警戒は最大限でいきましょう」
レオンの締めで本日は解散となった。
◆子爵邸 令嬢の部屋 ???視点1(?)
とうとう明日から学園だわ。乙女ゲーム【聖女の祈り天まで届け】の聖バルゴ学園。
沢山乙女ゲームはプレイしたけど、なぜかこの【セイテン】に転生していたの…
意味があるのかな?でもとにかく頑張るしかない。絶対あの人に会う為に!
「ね!リコス!エイエイオー!」
「きゃん!きゃん!きゃ~~ん」
◆パルセノス邸リビング リカルド(16歳)視点7
「くしゅん!」
「お兄様!お風邪ですか⁉大変、アリサお薬を!」
「いや、大丈夫だよ。落ち着いてエステル」
以前に病を患ってからエステルは俺の健康に対して過敏だ。ホントいい子。
明日は入学式。乙女ゲーム【セイテン】が始まる。武者震いってヤツなんだろう。
「俺とレオンは明日の朝早いから、父上母上と来るんだよ。会場で待ってるからね」
「はい!明後日から一緒に(お兄様と)通えるのを楽しみにしておりますわ」
「ああ。(レオンと)一緒は楽しみだな。明日に備えて早くおやすみ」
「おやすみなさいませ。お兄様」
エステルが静々と去っていくのを見送って。
よし!整理しよう。年月と共に忘れつつあるからな。
そもそも姉貴のゲームを手伝い程度にかじっただけで、そんなにガッツリやっていたわけじゃない。
【セイテン】も姉貴の略称呼びが耳に残っているだけで、正式なタイトルも覚えていないくらいだ。
レオンの出会いは対策済み。ステファンはどうするか…ヒロインが誰かはっきりさせる為に、あえて対策しないのも手だな。ステファンとカイゼルに怒られそうだが…。
ステファンとヒロインの出会いは、暴走した聖獣(予定)がステファンと接触。
この時ステファンがケガをすればステファンルート。
ステファンを庇った護衛のカイゼルがケガをすればカイゼルルートが始まる。
ユーザーは暴走する前にある選択肢でどちらか選ぶかたちだ。
別にヒロインがいい子なら俺は傍観者でいいんだけど。
転生前に読んだライトノベルでは転生ヒロインは大体やらかしていたからな。
ステファン達が巻き込まれて失脚でもしたら大変だ。それでなくても王の子はステファンしかいない。
王位継承権一位はステファン殿下。二位は王兄のサーヴラ・クロタリアス公爵。三位は王兄の子息オーフィス・クロタリアス公子。
クロタリアス公爵家はレオンのアエトース公爵家を敵視していて、俺はな~んか嫌いなんだよな~。
[おまけ]~軽犯罪~
エステル「影ちゃん!お兄様が病気ではないか、お部屋で見張ってきてちょうだい!寝言もしっかり聞いてくるのですよ」
影ちゃん(フルフル首を振る)
アリサ 「お嬢様。ストーカーですよ。ソレ」




