4.エステルと黒いお友達
◆パルセノス邸 リカルド(11歳)視点5
エステルが10歳になる誕生パーティーで、レオンとの婚約発表をするそうだ。
「お兄様ぁ。このドレス似合いますか?」
パーティーで着るドレスの試着をしたらしい。また走ってきたのか?後ろでアリサがぜ~ぜ~言ってるぞ。
「とっても似合ってる。妖精が現れたかと思ったよ。でもドレスで走っちゃ駄目だぞ。転んだら危ないだろ」
もっと叱れ!と語るアリサの視線が怖くて、目をアワセラレナイ…
うちの両親は、エステルに関する事は基本俺に一任している。今回のドレスも俺プロデュースだから似合わないわけない。エステルが好きなスミレ色のふんわりしたドレスは本当に妖精を連想させるし、レオンのシルバーの色は刺繍で取り入れた。レオンは恐らく黒とシルバーを纏ってくるだろう。
ゲームでは17と16で婚約したふたり…仲は良くなかった。けれど、現実の二人の仲はとても良好だ。本当に良かった!俺いい仕事したよな!
誕生パーティー&婚約発表 当日
両親は招待客の出迎えでホールへ行ったので、控室でレオン家族の到着を待っていると
「あれ?レオン達は?まだ?」
ステファン殿下が先にやってきた。相変わらずキラキラ王子だ。
「殿下!ご足労いただきありがとうございます」
「ありがとうございます」
エステルもペコリ。幼馴染なので、かたい挨拶は抜きの関係だ。
「馬子にも衣裳だな」
エステル。淑女はほっぺた膨らませちゃ駄目だぞ~
「悪い。遅くなった。奥さんの支度が思いのほか手間取ってな」
公爵夫妻とレオンが到着。公爵の脇腹を夫人が扇子でぐりぐりしている。仲良しだな。
「エステル嬢!」
「…レオン様」
ふたりが見つめあう…のを、殿下と観察。
「…えっと。すごく似合ってる。妖精みたいでかわいい(がっつりリカルドの趣味だな)」
「ありがとう。レオン様も…その…素敵です(お兄様の次に)」
あれ?何か副音声聞こえた??
「いや~楽しいふたりでお似合いだな。リカルド」
殿下。これを見たいが為に早く来たんですか?
「皆様。本日はお越しいただきありがとうございます。娘エステルも10歳という節目を迎え、これを機にアエトス公爵家のレオンハルト公子と婚約を結ぶ運びとなりました。ふたりともこちらへ…」
父上の挨拶で会場がどよめく。
エステルが俺を交えてレオンや殿下と交流している噂はあったろう。けれど具体的にどちらが対象かは測りかねていたと思う。
レオンを狙っていた令嬢たちが、エステルをにらみ倒しているな。うちの可愛い天使に君たちが適うわけなかろう。
俺も当初はレオンルートの件もあって、エステルをレオンの婚約者にしないで断罪を回避する手も考えたんだ。けれど…
「エステルちゃ~~ん♡もうウチで一緒に暮らさない?」
…レオンの母上の熱意に負けた。
うちの両親が俺のせいでエステルを甘やかさない分、夫人が甘やかし倒して、あげくレオンに怒られている。面白おかしい公爵家だ。きっとエステルは大事にされて幸せになるだろう。
問題は【俺】だ。いまのところ婚約者の候補すら現れていない。
…そんなモテない?一応未来の侯爵だよ?でも、今エステルを睨んでいるような恐ろしげな令嬢とかはご遠慮したい。はぁ、何処かに真正ヒロインみたいな優しい女の子落ちてないかな。
[おまけ]~侍女の圧~
アリサ 「さて、最近甘やかしが過ぎると思うのですが、いつから愚兄に成り下がられたのか…」にっこり(圧)
リカルド「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・・・・・」
◆パルセノス邸 エステル(10歳)視点4
お父様に促されてレオン様と壇上にあがると、沢山の人に祝福されました。
一部わたくしを睨んでいる令嬢もおりますけれど、無視無視ですわ。きっとこのあと何か言ってくるでしょうけど返り討ちですわよ!
「エステルちゃ~~ん♡もうウチで一緒に暮らさない?」
レオン母様は優しくて、いつもわたくしを可愛がってくださいます。けれど…
「お兄様も一緒ならいいですよ」
「あら、じゃあリカちゃんも呼びましょう。お部屋は…エステルちゃんはわたくしと一緒♡リカちゃんはレオンの部屋ね」
「母上…却下です」
「(小声)お兄様、お花を摘みに行ってまいります」
「(小声)ひとりで平気か?ついて行こうか?」
さすがにお兄様をお手洗いの前で待たせられませんわ。
「大丈夫です。行ってまいります」
お手洗いを済ませて戻ろうと歩いていると、三人の令嬢が立ちはだかりました。
「ごきげんようエステル様」
「名前で呼ばれるほど親しかった覚えはございませんが」
三人はお顔を真っ赤にして
(まぁ!なんて生意気な)(年下のくせに)(レオン様に相応しくないわ)
と、ブツブツ言っておりますが、無視して横をすり抜けますわ。
「ちょちょっとお待ちになって!私たちをリカルド様に紹介して頂きたくて…ひっ⁉」
「…お兄様に…なんですって?…オフザケが過ぎましてよ……影ちゃん!」
突然令嬢三人の周りに黒いモヤが立ち込め「とぷん」という音と共に消失する。その場に何事も無かったかのように立つエステル…
「まったく!レオン様が駄目なら次はお兄様とか!本当にふざけてますわ!」
…激おこぷんぷん丸である。
実際このブラコン娘のせいで、婚約者の候補すら現れないとは知る由もないリカルドである。
◆パルセノス邸 ステファン(11歳)視点2
「…お兄様に…なんですって?…オフザケが過ぎましてよ……影ちゃん」
突然令嬢三人の周りに黒いモヤが立ち込め「とぷん」という音と共に消失する。その場に何事も無かったかのように立つエステル嬢…いやぷんぷん怒っているな。
「まったく!レオン様が駄目なら次はお兄様とか!本当にふざけてますわ!」
「闇魔法?【影ちゃん】と言っていたな…令嬢たちを何処へやったのだ?」
ステファンは一部始終を見ていた。いや、お手洗いから出てからの話だぞ。ストーカーではないぞ(ここ大事)。
自身も闇属性を持っている為、エステル嬢が風属性だけじゃなく【闇】も持っているのでは?と薄っすらは感じていた。リカルドはこの事に気づいていないようだが…
「殿下!お兄様には内緒にして下さいませ!怒られちゃう。口きいて貰えなくなっちゃう~」
うるうる目でしがみ付いてくる。淑女の猫が剝がれているぞ。
「どうどう。で、三人は何処へやったのだ?」
「「「きゃ~~~~~~なんで~~!!」」」
通路の奥から三人分の悲鳴が聞こえた。
「お手洗いの床に転がしておきました!影ちゃんが!」
ドヤ顔で言う事じゃあ無いぞ。
「【影ちゃん】と言うのは?」
「影ちゃん!」
エステル嬢の影から黒いスライム状の何かが現れた。私の【影(王家の)】から緊張が伝わる。
「影ちゃんは幼少の頃からのお友達なのですわ!」
胸ほどの高さまで縦にのびたソレとエステル嬢が、キャッキャッと抱き合っていた…うん…カオス。
詳しく話を聞くと、リカルドが領地に顔見世に行って不在だった半年間、当時6歳で淋しさのあまり泣き暮らしていたら突然現れたらしい。イマジナリーフレンドが実体化したのか?
ある時は犬、ある時は猫と様々に変化できるそうだ。リカルドが戻るまで遊び相手にしていたのだな。
でもヤツが帰って来たので紹介しようとすると影に隠れてしまい。結局伝えられずじまいだとか…便利そうな魔法で教えてもらおうかと思ったが、本人がよくわかっていないなら無理だな。残念。
会場まで戻るエステル嬢にリカルドを呼んできてもらった。
「殿下。会場に戻らないんですか?」
「レオンが売約済みになったのだぞ。私が行ったらどうなると思う?」
私も早く婚約者決めないとだな。今後の生活が恐ろしい…ブルブル
「あぁ~目に浮かぶ…その悩みなら俺にも少しは分けて欲しいんですがね~」
お前の場合モテないんじゃなくて、お前の天使が暗躍しているだけだからな。…主に
「影ちゃんが…」
「?ん?今日の【影】は初恋の君ですか?」
その影じゃないし…
「彼女は退職した。結婚してもう二児の母だ。因みに職場結婚だそうだ」
「殿下の影でむつみ合うふたり…【影】だけに。クスクス…殿下ドンマイ!」
エステル嬢と影ちゃんの暗躍を、密かに応援する事に決めたステファンだった。




